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少年達  作者: 南波 晴夏
10/33

10. 見失う少年

それなりに、うまくやれていると思っていた。


ただ、俺には足りないものがひとつだけあった。

それは学力だ。

俺はいつも、両親の期待に応えられないでいた。


日に日に笑顔は消えて行き、高校生にもなれば、感情すら見失っていた。


少年には、超一流大学に通い、昨日晴れて成人となった青年である兄がいた。


青年は、少年にとっての憧れであり、妬ましい存在であった。

自分より優れていた青年を、少年は妬んでいた。


「今を変えられるのは、今だけだ」


青年は突然少年に言い放った。


「お前ならできるよ、健吾」


静かでか細く、それでいて力強い言葉であった。

少年は、無表情のままである。


「大事なことは、周りをよく見ることと、自分を見つめること。それを忘れたら、大変なことになるぞ」


青年は、遠い目をして小さく笑った。


「健吾」


弱々しく伸ばされた手が、少年の手に触れる。


「自由に生きようとしなくていい。自分にとって、最善の道を行け。何ににも縛られるな。自分を信じて、突っ走れ。真っ直ぐに、生きて行け。……俺の分まで」


今にも消え入りそうな顔で笑った青年は、ゆっくりと瞳を閉じる。



先日、病に倒れた青年は、病院内で二十歳の誕生日を迎えた。


青年の表情は、酷く穏やかであった。

少年の頬を、何年振りかも分からない涙が伝う。


少年は、見失っていた感情を取り戻し、甲高い機械の音を受け止めた。


青年にとっての最期は、少年にとっての始まりとなった。

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