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プラネット・ナイン

作者: 川奈そら

天気の良い夏の始め、急に仕事がなくなった私は午後の時間をもてあまして、

私は家の近くにある森林公園に文庫本を持ち込み、ニレの木で木陰になっているベンチに横になって読んでいた。

内容は、小説家なりたかった少女が小説家になることが叶わず、少女の頃書いた原稿が色々な人の手に渡っていくストーリーだ。

時より、そよぐ風が木々の間いを駆け抜け今年芽吹いた葉と葉をこすり合わせて抜け去っていく。

すると、公園内の木々がテレビの中の作り物のようにノイズをまとって一瞬のうちに消えていく。疲れているのかと、目を閉じてまぶたをこすって再び開くとそこには、いつもの森が広がっていた。

安心して、本に目を向けると、ほんの中の文字がゆっくりと砂粒が引力に従って手のひらから滑り落ちるように、紙の上をするすると落ちていった。

最後まで残った文字を集めると『警コ九、目をあ毛ろ』とあった。

その意味を理解した途端に、周りの森がテレビの向こうに追いやったような平面になり、辺りは真っ暗になっていた。平面な森は複数のブロックに割れて音もなく崩れていく。

一瞬の闇の後、目の前に私がいた。

見たこともない部屋で、パソコンに向かって作業に没頭している。

周囲は、読んだことのもない分厚い本が山積みになってちょっとした山脈を作ってる。

少しの衝撃で崩れてしまいそうだ。

パソコンの画面には、二つの、白地に黒い点が幾つもある同じ写真が並んでいる。

目の前に映る私は熱心にその写真を見比べていた。

2つの写真の同じ場所を拡大していく。すると、一か所だけ点が移動している箇所を見つけた。

私が興奮している。ブラウザを開いてデータベースサイトに興奮気味にアクセスする。

英語で表示されたその画面に、時刻と座標を入力する。

「not found」の文字が画面に現れると、私はひとり狂気乱舞した。本の山の一部が崩れ、私は正気に戻った様だ。パソコンの画面に向かいSlackを開いて興奮気味にキーボートを打ち始める。

「ついに、プラネット・ナインを見つけた」

プラネット・ナインの文字を見た瞬間、また暗闇となり、私は思い出していた。

すると、巨大な私が暗闇に現れ、小さな私に「目を覚ませ、早く」と迫ってきた。


光が見えた。目の焦点がぼやけて周囲がよくわからない。

手足の自由が利かない。手首になにか巻き付けてある感触があった。

何かの駆動音に紛れて、不定期なノイズが聞こえる。

そのノイズが大きくなってきた。みえないが何かが近づいてきている。

裸の男がみえた。見える範囲で全く体毛がなかった。無表情と言うより、作り物の顔のような顔が近づいてくる。

口を開かず、ノイズが聞こえた。子供の頃に聞いたFaxを送ったときの音に似ている。

その音でもう一人現れたが、最初に居たのがどちらかわからなくなった。

裸の男が、私の口に何か近づけてきた。

匂いで、麻酔と気づく。

「やめろ!」

叫んだが、男たちは無表情のまま作業を続ける。


「ねぇ、さとみがさおかしいの。接客したお客の言葉につられて、返事して、

 自分でツボってるの。ねぇ聴いてる? 」


白昼夢。


始めて経験したけど、ここまでリアルとは思ってもみなかった。

私は、助手席で楽しそうに話してる美香にきどられないように話を合わせた。

気分を変えたくて、自動運転モードを解除した。

リアルな記憶。あの中で現れた私は何を伝えたかったのか、「プラネット・ナイン」とは何なのか

その記憶ゆめから離れたい一心で、アクセルペダルを踏む右足に力をこめた。

高速道路の上に造られた歩道橋に、黒いスーツに身を包んだ二人組の男たちがいた。

二人には、まったく体毛がなく、どちらがどちらと全く見分けることもできなかった。

「こんどのきおくはうまくなじんだようだ」

「女性の設定がよかったのだろう。次にはこの経験が生きるだろう」

「そうだな」

「まだ、我々の星をこの星の者に発見されるわけにはいかない」

「はい」

高速道路の側道の木々が風で揺れる。

黒服の男たちはもうそこにはいなかった。

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