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二話『魔女の遣い』

 頭をトンカチでたたかれているのかような鈍痛と共にルークは目覚めた。

 頭上には見知らぬ白色の天井が広がっており、どこかから零れてくる微かな光がそれを照らしていた。


「まだ寝たりないのかね?……」


 低い男の声が寝起きのルークへ向けられる。

 横になっていたソファーからルークは瞬時に身を起こし、声のした方へと身体を捻る。

 

 「うん。まあ、よろしい」


 そこには、ドワーフのような男が黒塗りのレザーチェアにふんぞり返って、咎めるような目でルークを見ている姿があった。

 

 ――誰だ此奴は。いや、それよりも此処はどこだ……?

 

 ルークが周りを見渡しても、ブラウン色のシックな家具が置いてあるばかりで、居場所を知ることのできるような物はどこにも置かれていない。カーテンの引かれた窓から淡い光が零れているのを見る限り、まだ日中らしい。

 もし、竜のような女に襲撃され、此処まで連れ去られてきたのだとすれば……。


「何が目的だ?」

 

 ルークがドワーフのような男に問う。

 すると、男は肉で埋もれた細い目を更に細めて、訝しげにルークを見ると、面倒くさそうに答えた。


「はぁ……? 仕事だよ。仕事。選手達、勝手にミニゲーム始めてるんだけど」


「仕事。そしてゲームというキーワード。……貴様、魔女の遣いか」


 ドワーフのような男がズルッと椅子から滑り落ちる。

 それから宙を見上げて溜息をすると。「ああ、終わりだ……」と呟いて、頭を抱えた。

 

「その様子を見る限り、何か弱みを握られているのだろう。詳細を教えれば、従うかどうかは別として、他言はしない」

 

 ルークは俺もあいつには酷い目に遭わされてきたのだ。とばかりに先輩風を吹かし、組んだ足を目の前のテーブルに預けた。


「……はぁ、もうそういう事で良いからさ、一応現場には顔出してくれないと不味いんだよね。早く行ってくれやしないか」

 

 そう言うと男は机の上に山積みになった書類へと目を移し、ルークとの話を区切ろうとした。

 

「構わん。して、その現場というのは何処にある?」


 それを聞いたドワーフは口をぽかんと開けると、小さい声で唸り、やがて観念したかのように「現場」の位置をルークに教えた。

 

「この仕事とやらを続ければ魔女と対面することができるのだろう? 奴に聞くことはあまたある。次いでに今朝の事は許さんと伝えておけ!」

 

 そう言ってソファーから飛び退くと、ルークはこれから起こるであろう未知の脅威を想像し、楽しげな表情で扉へと歩を進めていった。

 

「ああ、貴様の名を聞いてゆこう」


「……くっ、楠木だよ。チームの会長を忘れないでね」


 楠木は引きつった笑顔でルークに名を教える。

 額には脂汗が溜まっており、ルークに早く出て行ってほしい様子である。

 ルークは何度かその名を復唱すると、魔女は俺が何とかしてやる。

 などと楠木にとっては意味不明な事を口走りつつ、部屋の扉を開けた。

 

 

 

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