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永劫回帰の世界から――

 知将ルーク・バルザッリは追われていた。

 自分が過ごしていた世界が虚構であり、本物の世界は別に存在すると、とあるたちの悪い魔女に教えられ。魔術によって現実に召喚された矢先のことである。


「青木監督ッ! 一言! 一言お願いします!!」


「ええい、貴様らッ、なぜついてくるッ」


 ルークはゴブリンのように迫ってくる集団を引き離そうと、必死に身体を走らせる。しかし、全く引き離すことが出来ない。身体が錆びた車輪のように、きしみ、スムーズに動かないのだ。

 

「いくら俺が戦闘向きで無いとはいえッ! ありえんっ!! 魔女め、俺の身体に何をしたあああぁぁぁ!!」



 結局、ルークは一言とばかり連呼する集団に囲まれ、凄惨な質問攻めを受け、精神的にボロボロになりながらも、訳の分からない現状を理解するため、体制を立て直そうと、召喚された場所に帰ることが出来た。

 

 木で建てられ、所々にほころびが見られるボロ屋敷である。

 庭に生えている草木は素晴らしいが、それを差し引いてもルークが腰を落ちつけるには品位にかける。

 

 しかし、先の見通しが立っていない上に、先程、奇妙な棒を顔に近づけてくる集団から追いかけられたばかりだ。

 しばらくはここを中心として情報収集に当たるしかないだろう。

 とりあえず、この屋敷を調べてみるか。

 



「なんだ、このひのきの棒よりも貧弱な姿形をした男は……」


 ルークが屋敷を探索していた所、立て掛けてあった縦長の鏡を見つけ、ふと覗きこんだ。そこには自分の美貌の残滓すら残っていない間抜け面の男が、野暮ったい服で貧弱な身体を覆っている姿が映っていた。

 

 ルークが何度も自分の頬を叩いたり、身体を摩ったりしてみる。

 鏡に映った男も同じ行動をする。

 それを見たルークが「真似をするな!」と叫ぶ。鏡に映った男も同じように口を動かす。しかし、響く音は自分の声音のみ。

 心なしかそれさえも、本来の自分とはかけ離れたものに感じられてきた。

 狼狽し、右手の掌で顔を覆う。


「ど、どういうことなんだ……」

 

 魔女の魔術で俺は確かにこの世界にやってきた。

 幻術の効かない俺が現状で分かっている事は、これくらいだ。

 姿形を変えられたのだろうか? それとも、この肉体を媒体にして、俺をこの世界に顕現させているのだろうか?

 何れにしても、あの肉体は失われ、この貧弱な身体が今の俺の姿だということは理解した。

 この身体では小国を攻め落とすことすら不可能だろう。

 その上、外に出れば謎の集団に追いかけられる。かと言って王族のように囃し立てられる訳でもなく、罪人のように殴り殺される訳でもない。

 ただ延々と先端が黒い短めの棒を鼻元に近づけ、「一言!」や「プレッシャーは感じていますか!?」などの質問ないし尋問をされるだけだ。

 異様すぎる。細かい問題も多々あるが、それは明日、考えることにしよう。

 


 ルークは屋敷を回って見つけた和室に場違いのベッドに身体を預けると、まるで睡眠魔法をかけられたように眠った。

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