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魔王をせずにすむ方法

「う・・・」


 ベッドから起き上がって周囲を見渡すと、ぬいぐるみ、ぬいぐるみ、ヌイグルミ、ヌイグルミ、ヌイ・・・。

 クシュルーの部屋のようだが、当のクシュルーの姿がない。


 一体何がどうなって・・・。


「クシュルー?」

「ひっ!」


 わずかに聞こえた声の方を見るとぬいぐるみ保管庫と化している部屋への扉が開いていた。


 気絶する前より妙にぬいぐるみの数が多いと思ったら、部屋一杯に詰め込まれたぬいぐるみがこっちの部屋に流れ込んでたのか。


「クシュルー出てこい」

「・・・怒ってない?」


 俺よりはるかに強いクセに俺を怖がってるのか?

 死ぬかと思ったのはこっちだというのに・・・。


 はぁ、どうもコイツは中身が完全に子供だな。


 力の制御もうまくできないのだろう。

 こういう時は、さっさと許した上で後で反省してもらうのがいいだろう。

 自分がガキンチョだった頃を思い出しながらどう対応するか決めていく。


「怒ってない。出てこい」

「・・・」


 顔を合わせにくいのか、なかなか出てこないな。


 こういう時は顔を合わせないようにしつつ近寄り話をするのがいい。

 無理に出てこさせようとする事も出来なくないだろうが時間がかかるし正直面倒だ。

 俺はぬいぐるみの部屋の前に背中を向けながらあぐらをかく。


「聞きたいことがある」

「・・・」


 返事がないがそこにいることは確かなのでそのまま話を続ける。


「なぜ、俺を魔王にしようとした?」

「えっ?」


 どうやら、まったく予想してなかった質問だったらしい。

 恐らく俺を気絶させた事をまだ怒ってると思っていたのだろう。


 俺としてはむしろこっちの方が不思議でならなかったんだがなぁ。

 その辺の話をするつもりでクシュルーの部屋まで来たわけだしな。


「分かってるだろ?俺はただの人間だ」

「・・・うん」

「他のやつらは強い奴だと勘違いしてる。だが、お前は違うだろ?」


 なかなか、答えが返ってこない。

 元々意味など無かったのか、はたまた複雑な事情があって答えれずにいるのか・・・。


「言いたくない、か?」

「・・・私その・・・・・・」


 お、やっと話す気になったか。

 これで俺を魔王にしようとしている理由が分かるし、その理由を言い負かしてしまえば俺は晴れて村に帰れる。


 完璧だ!

 ふっふっふ。

 さぁ、キリキリ話せ!


「発情期で・・・その初めての事でうまく発散でき・・・」

「ストーーーーーーーーーーーーップ!!」


 そうきたか・・・。

 いやまぁ、銃弾撃ち込んだ時の反応はいま思えば確かにソレだが・・・。

 これ、論破とか無理だぞ?

 いや、その・・・、女子のアレコレにはどう反応すればいいかすらわからないし。

 女子というかこの場合は動物の雌というべきか?


 くっ!どうすれば・・・。いや、ココは最後まで話をさせて矛盾がないか探し突き崩す!

 異議なし!


「えと、・・・」

「すまん。大声出して、続けて」

「うまく発散できなくて・・・こっそり誰もいない所で、・・・その気分が落ち着くまでじっとしてたら・・・・・・」

「俺に撃たれた?」

「そう、です・・・・・・」


 う・・・、なんかスゲーいけない事を聞いてる気がして逃げ出したくなるんだが・・・。

 クシュルーもスゲー恥ずかしそうに話してるし、つらい。


「撃たれたら体に溜まった物がはじけるような感じがして・・・」


 まだ続けるんかい!

 いや、まぁ。

 まだ俺を魔王にする話に繋がらないしそこまでは聞かないと・・・。


「・・・」


 そこでだまるんかーーーーーーーーーーーい。

 くそっ!こうなればこっちで多少誘導してでも話を進めて早めに終わらそう!


「確か、きもちいぃーとか言ってたな」

「うん。それまで辛かったけど初めてスッキリできて、この人がいないとって思ったの」

「・・・そうか」


 あれ?論破っつーか出来るとこあったか?

 いや!何かあるはずだ!

 こういう時は逆転の発想を・・・!


 そうだ論破の前にまだ肝心なとこが聞けてない!

 これが勝利の鍵だな。


「この人がいないとっ。か」

「うん」

「だが、どうして魔王をさせる事になる。連れ去るだけでいいはずだ」

「そう、だよね・・・」


 ふむ、どうやら大した理由はなさそうだな。

 俺の勝ちだ、魔王の件は無かった事にして村に帰れる!


「魔王はクシュルーがやればいい。撃って欲しければいつでも撃ってやる。だから俺は帰らせても・・・」

「ダメェェーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


 突然、クシュルーが叫びたくさんのぬいぐるみが部屋から飛び出してきた。


 えええええええええええええええええええ・・・・・・。

 何がダメなの?え?

 これで終わらないのか?


「お願い。私を嫁とかにはしなくていいから!魔王にはなって・・・。必要な事ならでも何でもしてあげるから!!」


 背中から抱き着かれた。

 ただ今回は前と違って力は入ってなく体重を俺に預けるようにもたれかかるように軽く抱き付いてきた。

 体重は軽いようだ重く感じない、初めてただの女の子のように思えた。


「何かある訳か。聞かせてくれ」


 はぁ、なんか段々あとには引けない状況になっていってないか・・・?

今回ちっと、長くなってすまない。

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