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無事に帰りたい・・・

 魔王軍は実力主義だった。

 力こそがすべてであり、力=権力でもあった。



 すなわち



 魔王は最つよである。


「魔王様が人間ごときに遅れを取るはずが・・・」

「ま、まずぃですよ~~。魔王さまぁを倒せる人間に私達が勝てるはず無いですってぇ~~!」

「魔王様を倒した、となればあの銃はただの銃ではないのだろう・・・」


 コイツが魔王?冗談だよな?いや、これは助かる好機か?どうすれば・・・。


「だが、魔王様の生死すら確認せずに戻れば私達の立場もどうなるか分からない」

「えぇ~!もしかして戦うんですかぁ~~!」

「雪が一部溶けてます。強力な火属性の力を持ってるのかも知れません。それとあの銃も注意を・・・」

「うげぇ・・・。ホントにやるんですねぇ・・・」


 まずい、戦いになったらまず勝てない。なんとか回避しないと!


 構えていた銃をおろし、戦闘の意思が無い事を示しつつ下手に刺激しないように・・・。

 刺激しないように!


「・・・コイツはまだ生きてる」


 この女狐を引き渡す!

 魔王かどうかは疑問だが、引き渡しても悪い事にはならないだろう。


「そういう事いってぇ、私たちを騙してやっつけるんでしょッ!騙されないんだからぁ!」


(ダメか!コイツ話が通じそうにないぞ!)


 攻撃態勢を崩そうとしない。


「・・・まちなさい!」


 冷静で尚且つ力強い声が今にも突撃しそうなやつを制した。


「うぅ~~!もう!どうするのよ!この状況!」

「お静かに。そうしてれば分かります」

「う~~。がるㇽゥゥゥ!」


 敵意を犬の唸り声で表現する相方に、やれやれと肩を竦めつつ話かけてきた。


「取引・・・。という事ですな?」

「・・・そうだ。コイツは要らない連れ帰っていい。俺は帰る」

「ふむ、それだけではないのでしょう?」

「・・・え?」


 それ以外何があるの?え?これ無事には返さないって意味?

 それとも、無事に帰る為には何か差し出さないとダメか?

 何も考えてなかった。

 マズイ・・・。


「どういう事?」

「簡単な事です。魔王様を引き渡す代わりに何か我々に要求するつもりなのですよ」

「でもでもぉ、あいつが何か騙そうとしてるかもしれませんよー」

「かも、でしょう?魔王様を倒すような人間と戦ったとしてただでは済まないでしょう。なら要求次第ですが話に乗った方が遥かに賢い」

「でも、もしその要求がぁ。私の体とかだったらどうするんですかぁ!私いやですよぅあんなパッとしない髪もぼさぼさのキモ人間の相手なんてぇ~!」

「はぁ、その可能性はないでしょう。が、仮にそうだったら差し出します。魔王様第一です」


 うげぇ、と嫌悪しつつ汚物でも見る目でこちらを見るロリ巨乳。

 心が傷つく。

 パッとしないとキモは余計だ!


「要らない。コイツ連れ帰っていい」

「あ~~!私がぁ要らないですってぇ!このナイスばでぃな私をゆーるーせーなーいーーー!」

「はぁ。話が進みませんな!」

「キャッ!」


 ロリ巨乳に拳骨を落とす執事風な男。

 白髪で見た目人間の40~50歳くらい。

 無駄な肉はなくなかなか威厳を感じる。


「静かに、話が進みません。続きをどうぞ」

「要らない連れ帰っていい」

「また、要らないって・・・!」


 自分のことだと勘違いし、怒りを露わにしようとするロリ巨乳。

 それを、執事風な男が「次は怒りますよ」という眼光で黙らせる。

 見ていたこっちまで、ビビるほどだ。

 戦ったらマズイと全身が警告するように震える。

 表情には出さないが。

 いや表情に出ない、だ。


「俺は帰らせてもらっ・・・」


 言葉を続けようとすると足に何かがしがみ付いてきた。

 女狐こと魔王(仮)だった。

 なんとかなりそうだったのにその場が凍り付く。


「私を捨てないでーーー!私にはあなたが要るのーーーー!」


 何を言ってる。コイツは!!俺は無事に帰りたいだけなのに!


「ま、魔王さまぁ!!え、いっ一体どういう事ですかぁ!?」

「私にもサッパリです。ですが、ご無事だったそれが分かっただけでも良かった」

「もう、どうなってるんですかぁ~~~!」


 いったい何がどうなって・・・!とりあえず離れろッ!


 足にしがみ付く魔王を振り解こうとすると、腰にまで手を回し、しがみついてきた。

 柔らかな感触と少し高めの体温が寒いなかでは心地よく感じる。

 だが、今の状況と相手が変人では迷惑でしかない。


「わーたーしーを捨てないでぇ!」

「・・・はっ、離せっ!」

「いーやー!」


 ポカーン


 何が起こってるか分からず。

 傍観し始めた魔王の部下。

 片や訳が分からず知恵熱を出し始めてる。

 もう一人は微笑ましい物を見るように見ている。


 その状況をぶち壊したのはロリ巨乳だった。


「あーー!もう!魔王さまぁ!!そんなキモ人間放っておいて帰りましょう!!みんな待ってるんですよぉ!!」


 そうだ、さっさと帰ってくれ!頼むから!


 その時女狐が怒気を放った。

 人間も悪魔ですら、全身を震え上がらせ汗が噴き出した。


「ちょっとっ黙ってて!それと次この人をキモ人間扱いしたら・・・。あなた殺しちゃうから」



 ゾクリ・・・。



 怖い。確かにコイツは魔王だった。

 その気になれば誰も逆らう事が出来ない。

 ロリ巨乳は腰が抜けたのか地面に落ちた、体をガクガク震わせて。

 人間の俺は恐怖で動けなくなっていた、もはや振り解こうという事も出来そうになかった。


「魔王様」

「なに?黙っててと言ったはずだけど?」

「ですが、状況が不明すぎでして確認させていただきたい」


 魔王の怒気を受けて尚、冷静に動ける執事風の男はさすがとしか言えない。



 願った。



 執事風の男がこの魔王を説き伏せて連れ帰ってくれることを。



 とても!切実に!一刻も早く!高速で!

 この状況が早く終わりますように・・・そう願った。


「魔王様はその男に倒されたのですか?」

「ええ、そうよ!熱烈にズドォンと2発も。私は耐え切れずイッてしまったの」

「気を失ったと言うことですか。それで魔王様は自分を負かした相手であるその・・・。その方に惚れたと?」

「ええ。その通り!私はもうこの人がいないと生きていけないのっっ!!」


 え?あれ?俺倒してないよ?全然ダメージ負ってなかっただろ?というか惚れただと?


「なるほど。ですが魔王様」

「なに?」

「魔王軍は実力主義です。魔王様が負けを認められ、その方が魔王様の伴侶?となるのであればあなたはもう魔王ではなくなる事を意味します。よろしいので?」



 え?そしたら誰が魔王になるの?



 俺関係ないよな?



 もう帰っていい?



 いい加減離して魔王様、抱き付いてるその手の締め付けが痛くなって来てるんです。

 足先への血の巡りが悪くなって冷えてきた感じがするんです。

 何よりあなたが怖いんです、お願い。


「この人に魔王を譲っても構わないわ!」

「了解しました。この方に魔王が務まるかは甚だ不明ですが、魔王軍は力こそすべて。認めましょう」




ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!


「私を捨てないよね?」


 子犬が甘えるような上目づかいでこちらを見上げてくる魔王。




 断っていいですか?え?ダメ・・・?俺どうなるの?



 バンジーのゴムで飛ばされた俺の運命は帰ってくることなくちぎれて消えた。

いくら美人でも中身がダメだと、すべてを無にする事ってあるよね?

ギャルゲー等で見た目は良くても中身があぁぁぁぁ!!現象です。パッケージの絵はいいのに・・・。

ゴホっゴホっ。なんでもないです、はい。

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