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女狐

 ヤツは狐だった。


 ふさふさした狐耳。

 ふさふさした筆のような綺麗な尻尾。

 先っぽの部分は白く、根元のほうは焼き芋を割ったような艶のあるいい色していた。


 だが、ただの狐でもない。

 人間の女の姿をした狐だった。

 耳と尻尾がなければ国の王族の側室でも余裕で狙えそうな美人だ。

 服装は黒い巫女服で胸元は大きくはだけていて腰の所で赤紫の蝶の柄が入った帯で縛っている。

 袴はなくその代り裾を長くしているようだ。

 いまだに服は乱れさせ声を上げながら身悶えさせてる奇妙なヤツだが。


 返事もないし、どうしたものか。そもそもヤツは何をしてるんだ?


 もう少し近づいてみると、女狐は熱気を帯びていてた。

 どうやらこの熱気が周囲の雪を溶かしたようだ。


「はぁ、はぁ・・・。あなたは誰?」


 女狐は少し落ち着いたのか、やっとこっちに気が付いたようだ。


「・・・猟師」

「猟師・・・?あなたが私を撃ったのね?」

「・・・」


 どう答えるか迷った。

 もし、撃ったと言えばどんな逆襲を受けるか分かった物ではない。

 なにせ相手は人間ではないのだ。

 いや人間でも激おこだろうか?殺し合いになってもおかしくない。


「お願い!もう一度私を撃って!!」

「・・・・・・・・・?」


 コイツ何を言っている?撃ってほしい?自殺志願者なのか?


 女狐は体を起こし、下からこっちを見上げながらに迫ってきた。


「さぁ、私のこの辺を一発ズドォオンと!」


 と言いながら胸元差し強調するように迫ってきた。


 近い近いちかい!

 俺は人見知りなんだ迫ってくるな!


 パァァァァン!


 俺はとっさに撃ってしまった。

 胸元でなく頭を。

 へんな体勢で打ったせいで反動でしりもちをついた。


 いきなり迫ってきて驚いたとはいえ、この近距離で頭に打ち込んでしまうとは・・・。


 罪悪感がした。

 妖怪の類とはいえ人の姿をしたものを初めて撃ってしまった。

 敵意はなかった、別の意味でちょっと怖かったが。


 墓を・・・。作るべきだろうな・・・。


 墓を作ることを考え、立ち上がった時ありえないものを見た。


「・・・いい」


 女狐は無傷だった。

 考えてみれば最初に打った弾に当たったのならどこか怪我をしていたはずだ。

 無傷なのも当然なのかもしれない。


「きもちぃぃ~~!」


 女狐は喜んでいた。


 パァァァァン!


 俺は無言でさらに撃ち込んだ。

 前言撤回、無傷じゃない。

 頭の中に致命的な傷を負ってるようだ。


「あぁ!いぃ~!いけるわ!」


 どこに行くつもりだ?よく分からん。


 とりあえず、復讐とか損害賠償とか殺し合いとかいう事になりそうにない。

 ちょっとホッとした。

 また、ヒートアップして身悶える女狐を放置して帰ろうかと思案してた時だった。


「魔王さまぁ~!どこですか~~~!」

「魔王様ー!大人しく出てくれれば今日のお説教は短くいたしますー!」


 どこからか、誰かを探す声が聞こえてきた。


 魔王?この辺にいるのか・・・?


 魔王はこの世界で一番の恐怖する対象だ。

 指一本で竜の首すら切り落とし。

 出会った人間は即血祭り。

 子供のころからそんな話を聞かされていた。


 まずい!早く逃げるべきだ!


 俺は身悶えし続けている女狐にも逃げたほうがいいと言おうとして立ち止まる。


「あれ~?魔王さまぁじゃないですけど人間がいますね~」

「ふむ。魔王様を見かけたかもしれません。捕まえて聞き出しましょう」

「・・・」


 遅かった。

 魔王の手先に見つかってしまった。

 残忍な魔王の手先だ何されるか分かったものではない。

 短い付き合いとはいえ、この女狐を置いてく訳にはいかない。

 銃弾が効かないとはいえ、相手は魔王の手下。

 捕まればどうなるか分からないからだ。

 わずかに雪の上に浮いてる・・・。

 相手は飛べるようだ、雪が積もっている中逃げ切れるわけがない。


「・・・」


 俺は無言で魔王の手下に銃を向け戦う覚悟を決める。


「あれ?やる気ですか?」

「知らないのですか人間?悪魔である我々にただの銃弾など効きはしない」

「・・・見逃してはくれないのか?」

「無理無理~。私敵意向けてきた人間を逃がすほど優しくないですしぃ」

「落ち着きなさい。魔王様を探すことが優先です。有益な情報をいただければ逃がしても構いません」


 状況はすこぶる悪い。

 どうやら銃は通用しないらしい。

 そして身悶えてた女狐は・・・。

 いつの間にかスヤスヤ寝てるし!!

 寝言で小さい声で「もう食べられない~。らめぇ~」とか言ってた気がするが無視する。


 逃げれない上に銃が通用しないか。ならせめて最後まで足掻こう・・・。


 俺は銃を構えながら女狐を隠すように前に出た。


「あれれ~?誰か後ろにいるんですか?」

「仲間を庇うとは、なかなかの心構えです。が、少しばかりわざとらしすぎですな」


 相手が宙に浮かび上から俺と女狐を目にした。

 この瞬間俺の運命は決まったのかもしれない。

 死ぬことすら覚悟してたというのに。


 考えもしなかった方向に。


 ありえないベクトルでななめ上から。


 俺の運命はバンジーのゴムではるか彼方に吹っ飛ばされた。


「ま、まおうしゃま!?」

「ま、まおうさま!!!」


 そうこの女狐が魔王でいやがりました・・・。

話が長くなりすぎてる気がする・・・。どっか短くすべきかもしれない。さてどうするか・・・。

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