07 父アモンの帰宅
初の戦闘シーンです。
あと、文章が少し変になりました。
許してください。
アルファードの弟子になって一ヶ月後が過ぎようとしていた。
俺とアリアが通う学園はまだ決まらず、不思議パンと修行の日々が続いている。
この一ヶ月。
アリアの不思議パンには、チョットした進歩があった。
なんと、あの不味さがなくなり普通に食べられるパンになったのだ。
「美味しい……」
「本当!?」
いつも美味しいと言って食べていたが、それは表情で分かっていたらしい。
しかし、今回は素直に美味しい顔をしていたので嬉しかったようだ。
あの時はとびっきりの笑顔を見せてくれた。
まぁ……その後、物凄い量のパンを食べさせられたが。
修行に関しては、魔法陣をほぼマスターし新たな事実が判明していた。
魔法陣は自身の魔力を必要としない代わりに、自然のものから魔力を分けてもらい使用するものだ。
最初は感覚が掴めず、陣を作るのさえも苦労していたが、アルファードの教えで身体くらいの大きさの陣を作れるようになった。
そして、これが新たな事実なのだが……。
「ガキンチョ……おめぇ、それマジか?」
「マジだ」
俺の作った陣は白く透明に輝いている。
そう、俺は氷属性の魔法陣しか使えなかったのだ。
普通魔法陣とはあらゆる属性の魔法が使える便利なもので、一つの属性しか使えないという事はない。
しかし、俺は貧乏くじを引いたらしい。
師匠であるアルファードもこの事にはおどろいていた。
本で調べた内容にもこんな事は書かれていなかったらしい。
それを引き当てる俺って……。
どんだけツイていないのだろうか。
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霧のかかった広い森に俺はいる。
大きさが不揃いの木々が生え、少し湿った草や花が咲いている。
その中を俺は全力疾走で走っている。
なぜなら。
「逃げんじゃねぇ! 吸収しろって言ってんだろうが!」
「無理だーーーー!」
アルファードに攻撃魔法陣で構築された火のボールや水の矢などで攻撃されているからだ。
どうにか転生チートだと思われる足の速さで避けてはいるが、当たればただでは済まないだろう。
事の発端は、俺の言った些細な独り言だった。
回復魔法陣、攻撃魔法陣、防御魔法陣を全てマスターし次は実践という時、呟いてしまったのだ。
「現実味のある実践したい……」
と。
前世ヲタクの俺としては漫画みたいに、チョット派手にやりたいと思っただけなのだが、この独り言がアルファードの耳に入ってしまい、妙に張り切らせてしまったようだ。
魔法陣の戦い方は基本的に攻撃魔法陣と防御魔法陣を使う。
しかし、アルファードの教えは戦うのではなく吸収しろという事だった。
なんでも、魔法陣の特性である魔力吸収が一番効率がよく、使いやすいというのが理由らしい。
俺は自然のものから魔力を吸収するのは得意としたが、他人の魔力を吸収するのは苦手だ。
何度もアルファードにその部分を教えて貰ったのだが、遂に習得はできなかった。
そんな事を考えている間にも、アルファードはどんどん攻撃してくる。
「隙が多いぞ!」
「分かってる!」
木々の間から、光の矢がまるで俺を追尾するように迫ってくる。
本当に容赦がない。
弟子が可愛くはないのだろうか。
俺はチート走りを使いながら、後方に防御魔法陣で氷の壁を作り、逃げ続ける。
しかし、アルファードはそれが気に入らないようで更に威力を上げた魔法を使ってくる。
「今度は防げねぇぜ」
アルファードが作り出した魔法陣は、今までと比べ物にならないくらい大きく、そこに現れたものも途轍もないくらいに巨大だった。
こんなの見た事がない。
100メートルは超えているであろう身長に、銀色の鎧と剣。
恐らく、アルファードが魔法陣を使って召喚したものだろう。
習った覚えがないので分からないが。
「こんなの聞いてないぞ」
「そりゃそうさ。教えてねぇからな」
「卑怯だ」
「想定外の事が起きる、戦いってのはそんなもんだ。行け、鬼兵パプルス!」
日本というヌクヌク温室の中で育った奴に、そんな悟った事を言わないでほしい。
アルファードの言葉に従い、パプルスと呼ばれた巨人が俺に一歩一歩近づいてくる。
身体がデカイだけあって素早い動きは出来ないらしく、人間が歩くぐらいのスピードだ。
しかし、あのでかい足に踏み潰されたら俺なんて、ひとたまりもないだろう。
考えただけでも、鳥肌が立ってきた。
俺は時間稼ぎをする為、チート走りを使い十分な距離を取る。
もうそろそろ、チート走りの時間切れがやってくるのだ。
前回の修行中分かった事だが、このチートは15分が限界らしい。
もし、限界を突破して利用した場合、次の日に動けない位のダメージを負う。
今は、回復魔法陣があるから安心だが無かった場合は大変な事になってしまう。
今回はそれを考慮して戦っている。
折角の機会なのだし、利用しない手はないだろう。
しかし、このままでは確実に追いつかれ痛い思いをする。
氷で滑らしてしまえと、ちょっと試してみるが、巨人の足の裏はスパイクの様になっていて、効かない。
「チッ」
その後も巨大な氷の壁を作ったり、足元に向けて氷の槍を投げたりしたが、全く効果が無かった。
なんだ? あの巨大、チートすぎだろ。
俺は最後の力で再び巨人との間に十分な距離をとる。
今は少しでも考える時間が欲しい。
まずは作戦を考えねば。
もっと大きな槍を投げる。
ボツ。
巨人を氷で包み込む。
ボツ。
土下座で、負けて下さいとお願いする。
うーん……ボツ。
どんなに考えても碌な作戦が思いつかない。
ファンタジー物では、戦闘時に脳が活性化し良い作戦が思いつくのが鉄板だが、そんな事はないらしい。
脳内知識?
あれは使えない事が前回で証明されている。
使うとすれば、町の詳細や魔法の名前や効果を知りたい時だけだ。
そんな事を考えている間にも、巨人は一歩一歩、しっかりとした足取りで向かってくる。
身体が大きい為か、歩くたびに地面がかすかに揺れる。
よし……こうなったらやけくそでやるしかない。
別に修行だし負けてもいいのだろが、最後まで粘ってやろう。
そう思い足元に小さな魔法陣を展開させる。
これは強化魔法で、瞬間的に能力を向上させるものだ。
チート走りで、身体にはガタがきているがここで『あれ』をやらなければ絶対に勝てない。
確実に仕留めるため距離を詰める。
巨人との距離、500。
300。
100。
50。
いまだ!
俺は巨人の正面に向かって飛び、同時に巨人の手足の関節を魔法陣を使って凍らせる。
さっきは簡単に壊されてしまったが、今回は氷に少し魔力を込めたので、直ぐにはは溶けないはずだ。
その様子を少し離れた所にいたアルファードは驚いた顔をしている。
「ガキンチョ……」
開いた口が塞がらないとは、この事だろう。
何故アルファードが驚いてるかと言うと、俺が魔法陣を複数、それも同時に展開してるからだ。
アルファードの説明では、魔法陣は一回につき一つしか展開されないと言われた。
しかし、ある時の修行の休憩時間。
暇だったので、試してみたらできちゃったのだ。
不可能とされた同時複数展開が。
関節を凍らせた後は、巨人の背後に回りピタリと背中に張り付き、背中全体に魔法陣を展開する。
「魔力吸収!」
そう叫ぶと体内に大量の魔力が流れ混んできた。
良かった成功だ。
巨人は魔法と判断されなかったらしい。
その後、すべての魔力を吸収された巨人は綺麗さっぱり無くなった。
「おめぇ……さっきの……」
地面に降り、アルファードの所に行くと薄ら笑いを浮かべたまま立っていた。
案の定というべきか、話さなかったのは悪いと思うが、ここまであからさまな反応をされると困ってしまう。
「いや、実はですね……」
見せてしまった以上話さない訳にもいかないので、俺は魔法陣を複数展開することが出来るようになったまでの経緯を説明した。
試してみたら、出来た事。
練習したら、展開速度が上がった事。
自分でも何故出来たのかわからない事。
そして、全てを話し終えると。
「そりゃすげぇな! ガハハ! 俺は優秀な弟子を持って嬉しぜ!」
「お、おう」
「それと、初めての戦闘だったが上出来だったぜ」
「ありがとう」
その後、何回も俺の頭をグリグリされた。
恐らく、本心からの言葉だろう。
俺はその本当に嬉しそうな顔を見て、一緒に笑った。
@
廊下をドタバタと走る音や、食器を洗う音で俺は目を覚ます。
何時もなら俺が一番に起き、次にルアン、アリアという順番なのだが、今日は違うようだ。
何と言っても今日は、父アモンが帰ってくる日。
このプリエール家では、アモンが仕事から帰ってくるのは珍しく、帰宅する日はご馳走を用意するのが定番となっているらしい。
アモンはクラーシア国だけでなく、他の国にも仕事に行っているため、アリアも年に数回ほどしか会った事がないのだという。
ちょっと寂しい気がするが、それが商人という仕事なのだろう。
アリアもこの事は理解していた。
「レン! いつまで寝てるの!」
「え? あ、すまん……」
そんな事を考えていると、布団を干しに来たアリアに怒られてしまった。
回復魔法陣で疲れは取れているとはいえ、精神的なものは回復できないようだ。
今日は布団から出たくない気分。
とわいえ流石、ルアンの遺伝子を受け継いであるだけあってアリアの怒っている姿はそっくりだ。
「お・て・つ・だ・い! レンもするの!」
「はい……」
うぅ〜、こわ。
これ以上怒られない為、俺にも仕事がないかとウロチョロしていると、台所にいたルアンに呼び止められた。
「これを茹でてほしいんだけど、いいかい?」
渡されたのは大量の枝豆が入ったボウル。
アモンは枝豆が大好きらしく、帰ってくる日には必ず出しているらしい。
パン屋のメニューにも枝豆パンなるものが存在するのを見ると、それは相当なものだろう。
「あぁ」
「塩はもう鍋に入れてあるからね」
「分かった」
俺は言われるがまま鍋に火をかけ、枝豆を茹でる。
量が量なので、何処かの料理屋で使うような大きな鍋を使う。
テレビで見たことぐらいはあるが、実際に使用するのは初めてだ。
そして、俺が枝豆を茹でている間、ルアンとアリアはせっせと動いていた。
ルアンは料理。
アリアは食料調達や掃除。
ここまで見ると、俺もやらなくてはと思うが慣れてない事はすべきではない。
邪魔になるだけだ。
俺は素直に枝豆とにらめっこしていた。
「あ、昼だ!」
「父ちゃんが帰ってくる時間だねぇ」
「うん!」
やっと大量の枝豆が煮上がっり、一息つこうと思っていたらアモンが帰ってくる時間がやってきたようだ。
準備は完璧でテーブルには、丸々と太った鳥の丸焼きやサラダ、俺の茹でた枝豆とアリアのパンなどが並べられている。
アリアのパンは俺が推薦した。
最近、美味しくなったので (不思議パンが) アモンにも食べて貰おうと思ったのだ。
苦労した甲斐があったというものだろう。
あの日々を思い出すと、涙が出てくるよ。
そんな事を考えていると、アモンが帰ってきたようで、アリアが一目散に玄関の方に走っていった。
ああ見えてアリアはお父さん子だ。
早く会いたいのだろう。
「お帰り! パパ!」
「ただいまアリア」
おー。
微笑ましい光景だ。
親と子が抱きあっている。
これほど愛おしい状況があるだろうか。
それから10分ほど、親子は抱きあっていた。
「ん? 君は確かレンくんだね?」
アリアとの抱擁が終わると、アモンは俺の方に視線を向けた。
俺の事はルアンが手紙を出し、アモンも大体の事は把握している。
しかし、改めて顔を見るとアリアに似て顔が整っている。
前世ならハリウッドスター間違いなしのイケメンだ。
「はい」
「僕はアモンだ。君のお父さんになるのかな? よろしくね」
「はい」
「そんなに緊張しなくていいからね」
「はい」
「あはは……」
俺のコミュ力の無さにアモンが苦笑いする。
すみません、お父さん。
俺はヲタクの根暗なんです。
許してください。
その後は、かんたんな自己紹介の後にパーティーが開かれた。
家族だけの小さなものだが、とても楽しいものだ。
あと、俺が茹でた枝豆をアモンが美味しいと言って食べてくれた。
嬉しい。
しかし、本当にこの家族は優しい。
身内無し子を暖かく引き入れ、家族同然のように扱ってくれる。
いつかこの恩は返さなければな。
今回の会話文の少なさや文章のおかしさを反省にして、次回を書きまする。
安定してかける様になったら、今回の話も訂正しまする。
いつになるか分かりませぬが。
次の投稿は2月21日でござる。