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03 転生場所は他人の家の中でした

話を詰め過ぎた気がします。

次回からはこれを反省して書こうと思います。

 目が覚めると俺は、木の板で作られた壁の部屋の中にいた。その部屋はシーンとしていて、物音一つ聞こえない。ーーん? おかしいな。家とは言っても、こんな薄暗くて気味の悪い場所とは説明されなかったぞ。身体はあっちこっち痛いし、最悪だなこの状況。


 頭の方は、少し痛いが死ぬ前の痛さに比べれば大したことはない。閻魔大王が言っていたのような、廃人になる事はなかったようで安心だ。


 で、次に何をするか。

 周りを散策すると、木の板に毛布をかけた簡易ベッド、部屋の隅のクローゼットの中に女物の服が数着、何故かある可愛い熊のぬいぐるを見つける事ができた。どう考えても女の子の部屋なのだが、気にしない事にする。


 これを見る限り最低限の生活は送れそうだ、ぬいぐるみは除くとして。それと、散策している途中で気付いたのだか、前世と比べて俺の目線が低くなっていた。大まかに言うと二分の一位の身長ぐらいになっている。


 どうやら俺は転生すると同時に若返ったようだ。身長から考えるに、10歳くらいだろうか。よく転生ものの小説で、主人公が若返ったり赤ちゃんになっているが、実際になってみると不思議な感覚だ。自分の身体なのに、自分の身体じゃないみたいな。


 取り敢えず一通り散策を終えたので、部屋を出る事にする。何時までもここにいる訳にはいかないし、折角の異世界だ。目一杯楽しみたい。


 そう思い部屋のドアノブに手をかけ、勢いをつけて開けた。


「!?」

「え……?」


 目の前には俺と同じ位の身長で、長いロングストレートの黒髪を後ろで一つに纏めた少女がいた。その少女は一回俺の目を見た後、少しずつ目線を下げてゆく。


 今の俺は布一つ纏っていない、生まれたままの姿だ。そして、その少女は俺のアレを見た後、顔を真っ赤にし大きく息を吸った。


「いやん♥︎」

「きゃぁあああああああ!!」


 少女は耳が痛くなるほどの声で叫び、手に持っているランプを激しく揺らしながら何処かへと走りさる。当然と言えば、当然なのだが……。


 毎回叫ばれまても困るので、クローゼットの中の服を数着、クマさんTシャツと短パンを拝借する。妙にぴったりだったのが、不思議だが気にしない。


 そして、再びドアを開けると何か柔らかいクッションのような物に当たった。


「き〜さ〜ま〜」

「ヒィッ!」


 顔を上げるとそこには、般若のような顔をした丸々と太った女性がたっていた。めっちゃ怖い、怖すぎる。後ろにさっきの少女がしがみついているのを見るに、俺の事をこの女性に話したのだろう。


 部屋を開けたら、全裸の男の子が手足をクネらして「いやん♥︎」とか言ってきたと。それで怒った少女のお母さんが、確認しに来たら少女の服を来た男の子がいたと。


 どうしよう……言い訳が思いつかない。危機的状況に頭がフル回転してるはずだけど、全然思いつかない。


 その数秒の間の後、ついに俺はある結論に達した。日本で最も有名な謝罪方法で、よくサラリーマンなんかが使っているイメージの……。


「どうもすいませんしたぁあああ!」


 そう土下座だ。

 俺は頭を冷たい床に擦り付けて、こいつプライドあるのかよと思われるほどに、深々と頭を下げた。


 そして、頭を下げながら何故俺がこんな所にいるのかの経緯を誤魔化しながら伝えた。流石に転生して、目を開けたらここにいたとは言えず、ある事故に巻き込まれそれまでの記憶がなく、気づいたらここにいたと伝えた。


 すると、般若のような女性は少しずつ顔を緩めていき、ついには泣き始めてしまった。何処からそんな量の涙が出てくるのかと言いたくなるほどだ。


「よしよし……。大変だったねぇ」


 女性は優しく俺の頭を撫で、涙で赤くなった目を合わせながら言う。


 ここまで泣かれるとは思わなかったし、少し罪悪感が湧いてしまう。しかし、バカ正直に話して、変に思われるよりはマシなので結果オーライだ。約1名はそんなのがなくても、変な人認定していると思うが。


 案の定、少女の方に目を向けるとプイッとそっぽを向かれてしまう。やはり俺の事は裸を見た時点で、軽蔑されていたようだ。


 そんな事を思い落ち込んでいると、次に目の前の女性がとんでもない事を言い出した。


「そうだ! あんたうちの子にならないかい?」

「は?」

「うちにはこの子しかいなくて、少し寂しい気がしてたんだ。それにあんた、この様子じゃ身内もいないんだろう?」

「そうだけど……」


 何言ってんだこのおばさんと思ったが、その理由は閻魔大王がくれた脳内知識が教えてくれた。


 この世界、特に俺が転生したクーラシア大陸では身分を持たない子供や両親に捨てられた子供を引き取り家族にする日本で言えば養子縁組のようなものがある。


 さらに日本のような面倒くさい手続きは不要であり、自分の家の苗字を名乗らせそして、家族に認められば正式な子供になるという。


 さらに、この次の知識を知って目の前の女性が天使に見えた。


 運悪く養子にもなれず、道を彷徨うだけの子供は強制的に奴隷に落とされ、酷い扱いを受けるというものだ。


 そう考えるとこの女性は凄く優しい人だということが分かる。

 自分の家に勝手に入ってきたのみならず、愛する娘に裸を見せた男の子を受け入れようというのだ。


 こんなチャンス滅多にないし、逃したらバチがあたる。

 ここは素直に従うべきだろう。


「だったらいいじゃないか。父ちゃんも遠くへ仕事に行ってるし、男手がいると助かるんだ」

「……分かった。よろしく頼む」

「よし! 決まりだ。で、あんた記憶がないって言ってたけど、名前は覚えているかい? もし覚えてないんだったらこっちで付けるけど」

「八神蓮だ」

「おぉ、いい名前じゃないか。これからはレン・ヤガミ・プリエールになっちゃうけど」

「なんかプリティな名前だな」

「ありがとうよ」


 そういう経緯で俺こと八神蓮は、ここプリエール家の息子として生きることになった。


 @


「それにしても、あんた黒眼と黒髪とは珍しいねぇ」

「そうか?」


 場所をリビングへと移し、パンの中にポテトサラダを挟んだ、通称ポテパンをかっ喰らいながら俺は母となったルアンと雑談をしている。


 その会話の中でこのプリエール家について簡単な説明を受けることが出来た。


 プリエール家の家族は俺を含めて四人。

 母ルアンに父アモン、そして娘のアリア。

 仕事はこの家を拠点に商人と趣味で始めたパン屋らしい。パン屋の人気はそこそこだが、商人として大成功しているようで、ここら一体の店の取りまとめをしている。


 父となったアモンも商人の仕事の関係で、近くの卸売り業者? に交渉しに行っている。


「そうさ。アリアは父ちゃんの血が多く入って黒髪だけど、目は私に似ているからね、完全に東の国の特徴を受け継いでるわけじゃないから」

「へぇ〜」


 確かにルアンの横に座っている少女アリアの目は、母親似で綺麗な薄茶色だ。

 それを確認する為に、アリアに顔を向けたのだが、やはりプイッとされ俺のガラスのハートが傷ついてしまった。

 そんなに裸を見せたのがいけなかったか?


 ちなみにアモンの故郷である東の国とは、前世で言う所の日本の位置にある国で、外部との接触は極力避ける閉鎖的な国だ。

 そこに住んでいる国民も同様で、どこかよそよそしく国から出るのを嫌がるらしいのだがアモンは逆にそれを嫌い、ここクーラシア大陸に来たのだという。


「その様子だとレンの両親は東の国の人だったんだろうねぇ」

「そうかもな」

「本当に覚えてないのかい?」

「あぁ」


 一応、俺は事件に巻き込まれ記憶喪失になったという設定なので、曖昧な返事をしておく。


 この後も、ルアンに出身地は覚えてる? など色々聞かれたがどれも「へぇー」とか「そうかも」で受け流した。

 恐らく彼女なりに心配しているのだろう。

 もし、生きているのならば俺を両親に合わせたいとか。

 本当に優しいこんな人を騙していると思うと、心が痛い。


「ところで、レンには明日から学校に行ってもらう」


 一通り俺について質問をし終え、ルアンが話を変えた。


「なんで?」

「3年前くらいから、子供の学校教育が義務化されてねぇ。10歳から行かないといけないんだよ」


 これは俺の脳内知識にもあった。

 3年前、クーラシア全国民を対象として行われた学力調査で過去最低を叩き出し、それに危機感を覚えた国王が学校教育を学費免除で義務化した。


 そのかいあって、最近ではクラークシア国の大半が教育をうける事ができ、読み書きをできる人が増えたという。


「義務なら仕方ないな」

「将来商人になるんだったら最低でも、読み書きはできてほしいからね。アリアも一緒だから、分からないところがあれば聞けばいい」


 どうやらルアンは俺に商人になってほしいらしい。

 パン屋はアリアが継ぎたいと言っているので無理らしく、商人しか選択肢がないからだろう。

 個人的にはなりたくないが、衣食住と身分を与えてくれた恩があるので断りにくいな。


「試験とかはあるのか?」

「あるけど、あんなのお飾りさ」


 政策で読み書きができるものが増えたと言ってもまだ少数なので、テストは簡単なものだそうだ。

 教科は国、数、に魔法使い適性検査。

 魔法使い検査は、国が押している政策のこれまた一つで、学校の授業に織り込まれているという。


「分かった」

「いやだったら言ってくれても」

「大丈夫だ」


 これでも俺は前世では、バリバリの大学生だったから10歳程度のそれも簡単なテストからスラスラ解ける自身がある。

 なにせボッチだったからな、勉強とゲームと妄想しかやって来なかったし。

 魔法はどうかわからないが。


「だったらいいけどねぇ」


 どこか心配そうな顔をしていたルアンだったが、俺が自信満々に言うので可笑しいのか少し笑みを浮かべていた。


「さて、夜も遅くなってきたし寝るかねぇ。レンはどうする? 一緒に寝るかい?」


 ルアンが言うように、窓の外を見るといつの間にか暗くなっており、他の家も寝る時間なのか次第に部屋の明かりが減っていた。


「いや、遠慮する」

「なんでだい?」

「それは……」


 見た目は10歳とはいえ、中身は20歳の成人男子だ。

 いい年して親と寝るのは、さすがに恥ずかしい。

 しかし、ルアンはそんなのお構い無しだという風に言った。


「いいじゃないか。私たちはもう家族なんだ遠慮することないよ」

「しかし……」

「それにこの家では、みんな一つの布団で寝るのが決まりなんだ。レンも家族なんだから、従ってもらうよ」

「……分かったよ」


 そう言われては、しっかりと断ることはできず、素直にルアンに手を引っ張られ寝室に入った。


 勿論、アリアも一緒なのだかルアンには逆らえないのか黙っている。

 俺といるだけでもいやだろうに、一つの布団で寝るなんて苦痛でしかないだろう。

 なので、川の字と言っても真ん中にはルアンに寝て貰った。

 それを不思議に思ったか、理由をルアンが聞いてきたが俺は10歳らしく、


「女の子の隣で寝るのが恥ずかしい」


 としておいた。

 すると、ルアンは納得したようで数秒後には寝息を立てていた。


 ふかふかのベッドというわけではなかったが、何故か暖かく気持ちよく俺は意識を手放す事が出来た。

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