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ひと夏限りの怪奇劇 ~交差する彼等の物語~  作者: 月詠学園文芸部
出会い
6/49

2-3 紅ト灰ノ邂逅

というわけで二周目最後になります

相変わらず孤立していますが、そのうち絡むので大丈夫ですよ

では、お楽しみください

「空也さん」

「何かね」

「トランプ飽きました」

「だよね」


 どうも皆さんこんにちは、再び小泉空也だ。妹の黎とトランプで遊んで仕事の事から目を反らそうとしたのだが、それも限界の様子。

 だがこんなところで俺の完全犯罪が破綻するなど認めない。現在時刻は10時53分。何とか仕事から逃れなければ……!


 ――――ああ、失礼。仕事の内容を説明していなかったな。今回の仕事は、この近くの寺にある封印の解けかかった聖遺物【倶利伽羅の剣】の再封印だ。

 倶利伽羅の剣はかつて不動明王が振るったとされる剣で、その際に怪異をその中に封じたという。その封印が解けかかっているので、もう一度完全な封印を施してほしいとのことだ。こんな事俺たちがやる仕事じゃないのだが、黎が勝手に受けてしまった。


 封じられているのが魔物。そしてこの世界の住民にそういう事を認める体系がない。というだけで、別に魔物がそこまで強いわけでもない。馬鹿馬鹿しい、だから俺は働きたくないと言っているんだ。戦いの神をなめ腐っとんのか。


 ……かといって、俺は黎と一緒にいないと体調が悪くなるしな。黎と離れるってのはそもそも選択肢にない。

 だから俺は何とか、黎と一緒にいながらサボる手段を講じなければならない訳だ。


「あーそうだ黎! 腹減らないか? 何か買ってこようか?」

「え? あ、ありがとうございます。じゃあ、何でもいいので買ってきてください。お金は後で払いますから」

「了解した」


 フ……やはり甘いな黎! これが俺の逃走経路だ! コンビニを探してさ迷っているうちに、きっと一時間は経つ。すなわち帰ってくる時間は丁度昼時。

 買ってくるメニューは、仕事しながらは食べられないもの……蕎麦だ。全く日本は素晴らしい食べ物を発明してくれたよ。まさにこの瞬間のために発明されたような料理じゃないか!


 コンビニに向かうべく、ひとまずこのキャンプ場を離れることにする。賑やかな声が聞こえそちらを見ると、先程のグループが薪割りを続けていた。

 しかし、さっきより増えてるような。……まぁ、あの騒がしい薪割りをしていれば、人も集まってくるだろうな。

 いやはや、よくやるねぇ……考えられん。無償で働くなんて馬鹿らしいなあ、くわばらくわばら……。その精神を、十年後も持ち続けられれば立派なものだ。


 おっと、コンビニに行くんだった。踵を返し、森の中に入っていく。

 2分くらい経ったか。……誰かいるな。油断していたとはいえ、俺の半径100mに入るとはなかなかやる……。


「そこにいるのは誰だ?」


 声を掛ける。敵意は感じない、殺る必要はないだろう。だが一応、ポケットの中の短剣を握っておく。

 暫くして、木の後ろから少女が現れた。黒髪をポニーテールに纏めた、スタイルの良い感じの(おそらく)女子高生。


「いや~、ばれちゃったね」

「何か用かね?」

「別にこれといって用はないよ。ただ気になったから尾けてみただけ」


 嘘だな……。


「本当は?」

「……ちょっと頼みたいことがあるんだ。見たとこ、あなたかなり強そうだし」

「へぇ……俺にできることなら別に良いけどな」

「……――――――――」

「……!」


 そりゃいい。事がうまく運べば、このまま働くことなく任務を達成できる……! 偶然だが絶妙な利害の一致。この計画、利用できる。


「……わかった、協力しよう」

「ホント? ありがとー!」

「いやいや、こちらこそ。それにしても……クク、面白くなりそうだな」

「フフフフフ……」

「「ハッハッハッハッハ!」」


 表情も去ることながら、端から見たら完璧に悪役なんだよなぁ。





 場面は代わり、黎は森の中で歩いていた。常人から見れば、ただ少女がふらふらと歩いているだけなのだが……実際は違う。


「あった」


 黎が立ち止まる。だが、目の前には何でもないただの土しかない。――あくまで常人からの視点で見れば、だ。

 黎には、目の前の土の上で、血管のような赤い線が交わるのが見えていた。


『龍脈』

 この言葉を知る者も中には居るだろう。その大地の魔力・霊力といったものは、すべてこの龍脈を伝って循環、自然の中にエネルギーとして放出される。

 その龍脈の交差点。黎が天に手を翳すと、その手に蒼い光の粒が集まっていく。それが十分に集まると棒状に形を変え、光の粒が散っていく。

 その手には、青銅色の大きめの杭が握られていた。具現化魔法……数ある魔法の中でも、トップクラスに位置する高レベルの魔法だ。


「よいしょ……っと」


 その杭を、龍脈の交差点に突き刺した。非力ゆえに表面にしか刺さっておらず、龍脈にも変化は見られない。


「オンインリョウスクナカイガン

 オンインリョウスクナカイガン」


 両の手で印を結び、唱える。ワンピース姿の小学生くらいの少女が、杭の前で何らかの呪文を唱えるという状況は、日常ではまずお目にかかれないシチュエーションだろう。

 呪文を唱え終わると、杭はドリルのように回転しながら地面に吸い込まれていく。地面からその頭を半分ほど出し、その潜行は停止した。


 すると、循環を続けていた龍脈が一部を残して灰色に変色した。龍脈を強制的に塞き止めたのだ。

 辺りを見回すと、既に多くの杭が地面に突き刺されていた。それらの中央に位置するもの……龍脈の力を、その中に閉じ込めておくもの。

 ――それこそ、龍脈の起源点にして今回の二人の仕事現場。倶利伽羅の剣が安置された寺だ。


「陰陽道はめんどくさいなぁ……」


 そう呟き、黎は再び龍脈を伝って歩き始めた。

いかがだったでしょうか

2-3、二周目最後のお話

それはそれとして、私は金がめちゃくちゃ欲しいです


豆知識:蒼峰さんはボクシングをやっているらしいです。文武両道というヤツだね

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