2-2 キャンプ場での出会い
みなさんこんにちは。今回の担当、蒼峰です。
前回担当の永久院さんから編集長の称号を頂きましたが、これはリアルでも良く言われています。
まぁこんなどうでもいい話は置いておき、早速本編の方をどうぞ!
荷物をそれぞれのロッジに運び終えた僕達。
僕含む男勢は三番ロッジに。零奈さん達女勢は隣の四番ロッジに荷物を運び、再び全員で集合する事にした。特に目的がある訳ではないが、折角の交流合宿なのだから出来るだけ一緒に行動して絆を深めていくべきだろう。
さて、まずは何処に行こうか。僕がそんな事を考えていると、とある事を思い出した。例の高校生ボランティア集団。彼等への挨拶を済ませていなかった。なるべく早めに言ってしまった方が良いだろう。
そうと決まれば行動あるのみだ。僕は皆を連れてボランティア集団のテントがあった場所へと向かう。
「どんな人達なんだろう。あんまり高校生でボランティアに精を出す人っていないし気になるな」
「そんな事はないと思いますよ。僕は良くボランティアに参加しますし」
儀人がそう言うと、夏織と悠一も同じく頷いていた。単純にお前らの性格の問題だろうと言うツッコミは、何とか胸の内に留めておく。こう言っては何だが、大抵の高校生はわざわざ休日を削ってボランティアに参加したりはしないだろう。
「ねえねえ、あの人達がそうじゃない?」
「な、何かすっげぇ事やってるぞ?」
茜が指差す方向を見た鴇矢が、何やら面食らったような顔で苦笑した。一体どうしたのか。
そう思い同じく僕もそちらへ目を向けると、鴇矢の何に対して反応したのか良く分かった。
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
「まだまだあああああああ!!」
ナタを二刀流で持った高校生ぐらいの少年が、同じく高校生ぐらいの金髪の少年によって大量に放り投げられる木を凄まじい勢いと正確さで割っていたのだ。
「何だか馬鹿な事をやってるみたいね」
「豪快」
その光景に思わず絶句していた僕だったが、愛沙と鈴音の声で我に返る。
彼等が例のボランティア集団、なのだろうか……。そうだったとして、彼等の戦いは一体どんな仕事なのか皆目見当が付かないのだが。
話しかけようにも間に割って入る勇気もない。僕はとりあえず彼等の戦いを眺める事にした。両者一歩も譲らぬ激しい戦いだ。一体何が彼等をそこまで駆り立てるのか。
そのまま見守っていると、二刀流の少年が割った木を一人の少年が回収し、それを並べて乾かしている事に気付いた。そこまで見て、何となく彼等が今何をしているのかが掴めてきた。多分これは薪割りだったのだろう。
少年は小学生にしか見えない外見だが、うちにも茜と言う子供のような高校生がいるし、もっと言えば齢数千歳のロリ妖怪だって存在している。あの少年が高校生だったとしても驚きはしない。
更にメンバーはこの三人だけではないようだ。他にも四人の人間が居る。ショートカットの黒髪少女と、何処となく鈴音と雰囲気の似た――つまり言葉数の少なそうな少女の二人が丸太を適当なサイズにカットし、それを金髪の少年が放り投げている。
その現場の近く、テント付近ではまた二人の少女が立っていた。やや長めの黒髪を持つ少女に……。さっきの少年を越える幼さの少女だ。茜を遥かに上回る子供体型、ロリコンなら確実に反応するだろう。他にもメンバーが居る可能性はあるが、現状見て取れたのはこの七人。何の偶然か、七不思議と同じ数だった。
さて、あの中に割り込んで挨拶に行かなければならない訳だが……。正直住んでいる世界が違うような。いや、僕達だって一般人から見れば住んでいる世界が違うのだろうけど。僕がそんな物想いにふけっていると。
「戒都くん! 危ない!」
悠一のイケメンボイスが耳に届いた。意識を戻すと目の前には割られた薪が――。
気付いた時にはもう遅し。それなりの重さを持った薪は僕の顔面にクリーンヒット。これだけの重さの物質がそれなりのスピードで顔面に直撃すれば、身体能力のさほど高くない僕ならきっと意識が飛ぶだろう。案の定、僕の意識は闇に落ちたのであった。
「はっ!?」
目を覚ますと、僕の周りに七不思議メンバー達と先ほどの薪割り少年達が集まって来ていた。記憶も意識も鮮明だ。僕は先ほど飛んできた薪が直撃して気絶したんだ。左手に巻かれた腕時計を確認すると、気を失っていたのは僅か一分ほどの事だったと分かった。
七不思議メンバー達はそれぞれ安堵の色を浮かべてはいたが、皆何処か余裕があると言うか、あまり心配はしていなかったようだ。まぁ、もっととんでもない事に巻き込まれてきた僕だ。この程度の事なら問題ないと思われたのだろう。少し悲しい気もするが、ある種の信頼を得られていると思えば悪い気はしない。
さて、彼等の後ろに立っているボランティア集団と思われる方々はと言うと……。
「すみませんでしたあああああああ! ほらお前も謝れ!」
「痛てぇな! 分かってるよ! ……悪かったな」
ついさっきまでの気迫は何処へやら。二人共――主に薪を割っていた方の少年は、金髪の少年の頭を強引に下ろしそれはもう深々と頭を下げて謝ってきた。隣に立つ女子勢も謝ってきたが、当事者でない分我関せずなところはある様子だ。それにどこかこういったやりとりに慣れているような雰囲気も感じる。普段からこんな感じなのだろうか。
「い、いや。僕も慣れてるって言うか。まぁ、気にしてないから頭を上げてください」
「すみません! ありがとうございます!」
そう言って少年は再び頭を下げた。
ふと、ここまでのやりとりで本題を忘れていた事に僕は気が付いた。このままだとまた一騒動起きそうな気もするので、早いところ済ませた方が良いだろう。
「ところで、あなた達がキャンプ場のボランティアに来ているって言う高校生ですよね? 僕達今日からここを利用するので、挨拶に伺おうと思いまして」
「そうでしたか! 俺は赤木導です。仰る通り、俺達が今回このキャンプ場のボランティアをするためにやってきたボランティアチーム『SVT』です」
赤木と名乗った少年は、自分達がボランティアチーム『SVT』なる者だと語った。意味は良く分からないが、チームとして活動していると言う事は日頃からこうやってボランティアに参加している有志団体、と言う事だろうか。
「それでこいつらがメンバーです。こっちから五十嵐駿。冴崎美咲。葉城七美。鎌月舞。水爪祥。裏寡香奈。本当は三年生の先輩と一年生の後輩もメンバーに居るけど、今回は不参加でして」
紹介のあった各人はそれぞれ僕達に挨拶をした。どうやら彼等は高校二年生、つまり先輩のようだ。葉城さんと水爪さんの二人に関しては嘘だと信じたいが。
「僕は四ツ谷戒都です。こちらから須木塚鴇矢。鷹実儀人。杉原夏織。紫乃坂茜。多々乃愛沙。笹織悠一。柳鈴音です。もう一人先輩の三年生の一緒に来ているんですけど……」
何故か零奈さんの姿は何処にもなかった。皆で集合した時には確かに居た筈なんだが……。零奈さんの事だ。何処かその辺りをぶらぶらしているのだろう。
「まぁ僕達は普通に遊びに来ただけですね」
「そうでしょうね。楽しんでいってください。ここの仕事を手伝うのが俺達の仕事なんで、もし何かあれば言ってくれれば手伝いますよ」
赤木さんは人の良さそうな笑顔で言った。それなら折角だし……。
「薪割りやってたんですよね? 僕達も手伝いますよ」
「よいっ、しょ!」
僕の振り下ろしたナタは、カットされた木のど真ん中を的確に捉えていた。吸い込まれるように木へと向かっていくナタは見事、木を叩き割った。
「始めてやるにしては上手いもんだな」
「そうかな?」
僕が薪を割るのを見守っていた男、『SVT』と呼ばれるボランティア集団のメンバーの一人、赤木導が称賛の声を上げた。
僕達は今、彼等の行っていた薪割りのボランティアを手伝っている。お互い歳も近いので、暫く顔を合わせる事になるだろう彼等と仲良くなりたかったからだ。最初は断られたが、その旨を伝えたところ了承してくれた。
「こ、これちゃんと割れてるのか? 何だか上手く出来てない気がするんだよな……」
「どう見てもしっかり割れていると思うが……。いくらなんでも気にし過ぎだ」
良い音を響かせて薪を真っ二つに両断した鴇矢だが、どうやらまたいつもの悪い癖が出ているらしい。彼は自分のやる事全てに自信が持てない性格で、何かやるたびにああやって不安がる。
それを咎めているのは冴崎美咲。やや長めの黒髪が美しい美少女だ。その容姿と男のような口調とのギャップは激しい。SVTの中ではオペレーターを担っているらしい。ただボランティアをするためだけのチームに、何故オペレーターが存在しているのか。大きな疑問だったが、赤木さんはそれについて深く語る事はなかった。まぁ、二人共仲良くやっているようで安心した。
「とうりゃー!!」
僕の隣から大きな声が響いた。振り返ればそこには生き生きとした表情で薪を次々と割っていく茜の姿がある。ここまでなかなか、思い切り運動する事が出来なかったからだろうか。溜まったフラストレーションを一気に発散させるかの如く、ナタを振り下ろしている。正直怖い。
そんな茜のすぐ近くでは、黒髪ショートの少女鎌月舞と、幼女にしか見えない葉城七美がその様子を見守っていた。
「元気ですねぇ。ちょっとナナちゃんに似ているかも」
「そうかなー? わたしにはあんな事出来ないよ」
微笑みながら二人がそう呟いたのを、茜は聞いているのだろうか。
「仲良くやってるみたいだなー。うちの連中は癖が強いからどうなるかと思ったが」
「僕も安心したよ。この調子なら、今回の合宿も更に楽しくなりそうだ」
お互いのグループのリーダー同士、その辺りの事を心配していた分特に問題はないようで安心した。どうやら似ているところも多かったようだ。
「薪割りですか……。以前一度だけやった事がありますけど、なかなか難しいんですよね」
「わたしは始めてやりましたよ。女子にはちょっと辛いですね」
「僕は男ですけど、やっぱり肉体労働は得意じゃありませんね」
小学生のような外見の少年、水爪祥を交えた儀人と夏織の敬語トリオは既に薪を割終えたようで、三人で雑談をしていた。性格の似ている三人は、どうやらすぐに打ち解けたらしい。
「あなた見るからに頭の悪そうな外見してるね。どう見ても筋肉馬鹿だけど」
「あぁ!? ふざけんじゃねぇぞテメェ!」
「ほら二人共、あんまり熱くなるのは良くないよ」
愛沙の毒舌の餌食となっている金髪の少年、五十嵐駿は見かけ通りガラが悪いようで愛沙に食ってかかっている。愛沙に口で挑んでもまず勝つ事は不可能だと思うが、二人の会話は随分と長く続いている様子だ。
横では悠一が爽やかな笑顔のまま、彼等の口論がヒートアップしないように抑えて入るが、恐らく止める気は皆無なのだろう。……これはこれで上手くやっていると言って良いのだろうか。
「あなたはやらないんですか?」
「拒否」
こちらの口数少ない無口コンビ、鈴音と裏寡香奈も仲良くやっている様子だ。というか、多く会話をしている訳でもなければ、薪を割ったりと言った行動を取っている訳でなく、あの様に二人で目の前の光景を眺めているのがほとんどなので、正直良く分からないと言うのが本音なのだが。でもまぁ、この二人も同じようなタイプの人間なのだし、馬は合うだろう。
「じゃあ赤木さん。僕達も薪割り再開しようか。意外と楽しいし」
「あんたらは客なんだから、俺達がメインでやるべきだと思うんだけどな」
僕が再びナタを手に取ると、赤木さんが割る木を用意してくれた。僕がその木に思い切りナタを振り下ろすと、木は綺麗に真ん中で真っ二つに両断される。
それにしても、一体零奈さんは何処に行ってしまったのか。彼女の事もSVTの面々に紹介しておきたかったのだが……。零奈さんの事だからその辺りをふらふらしているのだろうし、あまり心配はしていないがまた厄介事を持ちこんで来ないかは心配だ。
僕は薪割りで流した汗を拭いながら、そんな事を考えていた。
さて、再びこんにちは。蒼峰です。
読了お疲れさまでした。
今回からいよいよ、作品同士のキャラが絡み始めました。
まずは僕の七不思議グループと永久院さんのSVTグループ。
久露埜さんのキャラ達ももうすぐ合流すると思います。
それにしてもあれですね。
戒都が残念なキャラになってますね。
実のところ、このコラボでは本編でまだ出していないキャラの設定とかが先取りされているんですよね。
前回のキャラ説明で分かった人も居ると思います。
それで、戒都はこのまま順調に本編が進めばこんな感じでしょっちゅう何かに巻き込まれるようなキャラになると言う訳です。
……本編の方、早く進めなくてはなりませんね。
それでは次の担当、久露埜さんにバトンタッチです。
さようなら!