表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひと夏限りの怪奇劇 ~交差する彼等の物語~  作者: 月詠学園文芸部
プロローグ
2/49

1-2 七不思議の交流合宿

皆さんこんにちは。二番手の蒼峰峻哉です。


今回の企画の事は前回永久院さんが説明してくれたので、僕は軽く自己紹介だけしようかと思います。

今回のコラボリレー小説では執筆の他に、投稿・編集などの事を担当しています。

普段は『今日からあなたが七不思議』の他に、『英雄目録フラーブルィ』と言う作品や短編も書いています。

もし興味を持ってくださった方がいらっしゃれば、少し目を通して頂けると幸いです。


さて、あまり長々と書いても仕方がないので前書きはこの辺りで終わりたいと思います。

それでは本編の方をお楽しみください。


 季節は夏。蝉が猛々(たけだけ)しい鳴き声を響かせ、太陽は刺すような日差しを地面に降り注いでいた。僕が宵闇(よいやみ)高校に入学し、高校生になってから初めて迎える夏だ。

 ――僕、四ツ谷(よつや)戒都(かいと)は学校の怪奇『七不思議』を束ねる統括者である。

 僕の通う宵闇高校には代々伝わる宵闇高校七不思議が存在する。僕はその七不思議幻の八つ目『七不思議の統括者』を継承した高校一年生だ。

 継承したと言う言葉を疑問に思う人は多いだろう。僕もかつてはそうだった。深く考える必要はない。言葉の通りだ。


 怪奇は個々の能力差はあれど、知名度が高ければ高いほどその力も大きくなる。一部の限られた人間の間でしか話が伝わる事のなく知名度の低い七不思議は、怪奇の中でも下位に位置するため放っておけば自然と消滅してしまう存在。そこで七不思議はその力と己の意識を器となる素質ある人間に継承する事で、存在が消え去る事を防ごうと考えた。


 結果として彼等の策は成功し、今現在も七不思議達は存在している。彼等は己の存在を生徒達に刻みつけ、話が途切れることなく続いていくために生徒達を襲うのだが、稀に度が過ぎた行動をしたり話の通りに事が進まない場合がある。そうなってしまうと話の改変が始まり七不思議達は元の姿を保てなくなってしまう。それを防ぐために設けられたのが幻の八つ目 『七不思議の統括者』だ。


 統括者の仕事はその名の通り七不思議達の指揮・統括。話の改変などがある。後はオプションとして簡単な怪奇現象なら一通り起こせたりもする。こちらについても継承が行なわれており、僕が高校に入学してから一ヶ月経ったある日。先代の統括者から力を継承された僕が新たな統括者となった。

 ――かくして七不思議達の新たな物語が幕を開けたのだ。




「お前らー。忘れ物とかないよな?」

 宵闇高校前に止まるマイクロバス。それに乗り込む前に、僕は仲間達に声をかけた。

「オレの方は問題なしかな。……だよな?」

 問題ないと言っておきながら結局荷物を確認している少年。穏やかな目つきと赤みを帯びた髪のこの男は須木塚(すきづか)鴇矢(ときや)だ。

 宵闇高校七不思議の一つ目『調理室の首なし男』の器である少年。どんな事でもそつなくこなす万能人間だが、何故か自分の行動に自信を持てないためにどこか頼りないところがある。


「僕は問題ありませんね」

 眼鏡をかけオールバック気味に固められた髪型と、気難しそうで堅物な雰囲気の顔をした彼は(たか)()儀人(よしひと)

 宵闇高校七不思議の二つ目『忍び寄る影』の器となった少年。こんな容姿をしているが実際は好奇心(こうきしん)旺盛(おうせい)で非常に接しやすいタイプ。見かけだけで判断するのは良くないと言う事だ。


「えーっと……。わたしも大丈夫です」

 美しい黒髪の長髪を風になびかせる清楚な雰囲気の少女、杉原(すぎはら)夏織(かおり)が改めて荷物を確認してから言った。

 宵闇高校七不思議の三つ目『渡り廊下の黒猫』の器である少女は、真面目で成績も大変優秀だが何処か小悪魔な雰囲気のある少女だ。


「ほらほら早く行こーよ!」

 一際賑やかで明るい紫乃坂(しのさか)(あかね)は今にもマイクロバスに乗り込んでしまいそうだ。

 彼女は宵闇高校七不思議の四つ目『図書室のバラバラ死体』の器。小動物のように小柄な体型と、ブラウンのショートカットに爛々(らんらん)と輝くブライト・ゴールドの瞳が特徴的な活発な少女だ。


「人の心配をする前に自分の心配をした方がいいんじゃない」

 眠そうな顔で毒を吐くセミロングのアホ毛少女。長身でモデル体型な彼女は多々乃(たたの)愛沙(あいさ)

 宵闇高校七不思議の五つ目『封じられた隠し部屋』の器。何をやるにもルーズなため集合時間に遅れてやってくるかとも思ったが、規則や約束はしっかりと守る彼女は今回もしっかりと時間通りにやって来た。


「みんな朝から元気だね。楽しくなりそうだ」

 一足先に確認を済ませ荷物を積み終わったイケメンの少年、笹織(ささおり)悠一(ゆういち)がこちらに戻って来た。

 彼は宵闇高校七不思議の六つ目『不幸を告げる鏡』の器となった少年だ。容姿も性格も非の打ちどころがないイケメンであり、圧倒的なそのイケメン力に男子はひがむ事すら忘れ、女子も思わず遠慮をしてしまうために人生で一度も告白された事がないとか。そのせいで本人はモテないと勘違いしているのが腹立たしい。


「ばっちり」

 無表情でピースをしている、日本人離れした金髪の少女は柳鈴音(やなぎすずね)

 宵闇高校七不思議の七つ目『人気者のナツメさん』の器となった少女だ。物静かで感情をあまり表に出さないハーフの少女。サブカルチャーから歌舞伎や茶道など、日本文化を幅広く好みそれらについて語る時だけはとても感情的になる。

 さて、これが僕を含めた今期七不思議メンバーだ。だが忘れてはならない人物がもう一人いる。それが――。


「全員揃ってるねー! ようし全員乗り込めっ!!」


 マイクロバスの中から騒がしく降りてきた少女が親指を背後のバスの入口に向けて言った。彼女こそが先代『七不思議の統括者』黄泉零奈(よみれいな)だ。

 容姿端麗(ようしたんれい)才色兼備(さいしょくけんび)。そんな言葉が似合う宵闇高校の三年生。僕達の事をとても気にかけてくれる良い先輩だ。

 天真爛漫(てんしんらんまん)で飾らない性格のとても人気の高い彼女だが、僕はその型破りな性格とボケ気質なところに毎度振り回されている。このマイクロバスも零奈さんが運転手付きでどこからか持ってきた物だった。相変わらず謎の多い人だ。

 彼女の指示に従い、僕達八人はバスへと乗り込んだ。今より僕達が向かうのは、ここからバスで数時間の場所にあるとあるキャンプ場。僕達はそこで数日間交流合宿をする事となった。これから約三年間に渡り、共に頑張っていく仲間達とこの夏休みを利用し絆を深めようと言う訳だ。

 今回の合宿を提案したのは僕達に協力してくれている大妖怪、九尾の玉藻(たまも)。場所の確保も玉藻と零奈さんが知らぬ間に行っていた。

 ……正直怪しい。何か裏がある。僕の経験がそう語っていた。


 だけど今からそんな事を気にしていても疲れてしまうだけだ。少なくとも交流合宿自体に偽りはないのだ。僕達はそれを楽しむだけ。もしも何かあればその時はその時。

「うん、楽しみだ」

 僕等の期待を乗せたマイクロバスは、目的地へと真っ直ぐに向かって行った。




 数時間後。辺りを緑一色の山で囲まれた駐車場にマイクロバスは駐車した。零奈さんが一足先にバスを降りたので、僕もそれに続くように外へ出る。

「おぉ……。まさに大自然って感じだな」

 僕達の住む街の方ではまず見る事は叶わないであろう木々達の緑。大きく息を吸い込めば肺いっぱいに新鮮な空気が染み渡る。少し離れた位置には僕達が寝泊まりするロッジが見えた。周辺には河原のキャンプ場や大きな湖、バーベキュー場もある。

 僕がその光景に見とれていると、後ろから続々とメンバー達が降りてきた。それぞれが目の前に広がる光景に感じ入っているようだ。

 こんな自然豊かな場所、そう何度も来る事の出来る場所じゃない。先ほど同じように見入ってしまった僕には彼等の気持ちが良く分かった。


「戒都くん、見とれるのもいいけどまずはここの管理人さんに挨拶しに行かなきゃ。ほら、みんなも付いてきて」

 零奈さんの声で現実に戻って来た僕は急いで彼女の後を追う。

 見とれるより先に、まずはここの管理人さんへの挨拶をしなければ。大切な事を忘れるところだった。

 零奈さんの後に続いてロッジの近くを通り過ぎると、どこか趣のある古い建物が見えてきた。どうやらここが、管理人さんがいるキャンプ場の受付のようだ。

 零奈さんは迷わず中に入ると何やら慣れた様子で声を出した。


「こんにちはーおじいさん。黄泉ですよー」

「おぉ、零奈ちゃんか。待っていたよ」

 奥から出てきた老人が笑いながら語りかけてきた。どうやらこの二人、以前からの知り合いらしい。ここに着いてからの零奈さんの動きが妙に慣れていたのも、管理人さんを呼ぶ言葉が妙に馴れ馴れしかったのも、そういう理由があったからだろう。


「それでそちらの方々が例の……」

「あっ、はじめまして。四ツ谷戒都です。今日から少しの間お世話になります」

「はい、よろしくお願いします。使用するロッジの鍵はこちらですので、荷物はそこへ運んでおいてください」

 愛想のいい営業スマイルで管理人さんが差し出してきた二つの鍵を受け取り、僕達は荷物を取りだすために再びバスに戻る事にした。早速戻ろうと思うと、そんな僕達を管理人さんが呼び止める。

「そうそう、今は君達の他にも何人か人が来ていましてね。彼等はお客さんと言うよりボランティアなんですけどね」

「ボランティア、ですか?」

 そういえばロッジが並ぶ中に、いくつかテントがぽつんと建てられていたような……。あのテントの主達が、そのボランティア集団と言う事だろうか。


「君達と同じ高校生だそうですよ。彼等も暫く滞在して仕事を手伝ってくれるそうなので、その内顔を合わせる事になるでしょうね」

「そうですか……。後で挨拶しておくべきかな。あ、それでは僕達は荷物を取りに行くのでまた後で。少しの間ですけどよろしくお願いします」

 管理人さんに一礼をして、僕は零奈さん達と共に再びバスへと戻った。バスは一度街に戻り、僕達が帰る日に再び戻ってくる予定なのだ。あまり運転手さんを待たせて予定を狂わせてしまってはいけない。


 それにしても……。高校生のボランティア集団とは。一体どんな人達なのだろうか。

 通り過ぎ際にふとテントの方へ目を向けてみると、複数の人影が目に入った。あれがそのボランティア集団なのだろう。挨拶に行こうかとも思ったが、やはり荷物を取りに行くことが先決だ。彼等とはまたすぐにでも会える。 皆を引き連れ、僕は真っ直ぐバスへと向かった。




 遂に始まった交流合宿。玉藻や零奈さんが一枚噛んでいるこの合宿は、もちろん何事もなく合宿が進むなんて事にはならなかった。キャンプ場で出会った一風変わった人達をも巻き込んだ、僕等の奇妙な合宿が始まろうとしている。

 さぁ、ひと夏限りの怪奇劇の始まりだ。

1-2、いかがでしたでしょうか?

前書きに続いての登場、今回担当の蒼峰です。


先ほども言いました通り、今回の企画については割愛させて頂きます。

詳しく知りたい方は前回の永久院さんの後書きをご覧ください。


本編の内容の方ですが、まだそれぞれのキャラクターの接触はない様子ですね。

物語が本格的に動き出すのはもう少しだけ先の話と言う訳です。

登場人物と言えば、僕の方からはメインキャラ全員に登場してもらっています。

七不思議本編を読んだ事がない方にも分かるよう、改めてキャラの紹介もしています。

ですが一番不安なのは、冒頭であった七不思議と統括者関係の説明です。

本編の方でも上手く書けなかったものに改めて挑戦をした訳なのですが、ちゃんと伝える事が出来たのか不安です……。

言ってる事が全く分からねーよふざけんな!と言う方がいらっしゃれば、お手数ですがお声掛けください。

改めてしっかりと説明をさせて頂こうと思います。


そんな訳で後書きを終えようかと思います。

次の回を担当しているのは久露埜陽影さんです。

久露埜さんまで回ると一周回り切った事になりますね。

順番は変わる事がないので、再び永久院さん→僕→久露埜さんと回っていきます。

三人それぞれ、書き方も何もかも違っていると思いますのでそういったところも見ていくと、より今作が楽しめるのではないかと思います。


それでは久露埜さんにバトンタッチです。

また近い内お会いしましょう!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ