3-3 異常事態宣言
こんにちは 永久院でございます
一気に転調してバチバチしてきました
SVT、ただの人間です
一体何故こうなったのでしょう
大音声が山から聞こえた。
「なんだ!?」
日も落ちて、俺たちはテントで夕飯の支度を始めようとしていたが、これを続ける訳にもいかない。
明らかに異常な音だ。
「出動だ!」
俺は声を上げつつ装備を身につける。
何かあった時に備えてナタを腰に携える。
「赤木!急ぐぞ!」
外で焚き火の準備をしていた五十嵐が催促する。
「おう!」
靴に足を突っ込んでテントを飛び出す。
「各隊員。暗視ゴーグルの準備をしてくれ。山の中では暗視ゴーグルを使って走る」
「「了解」」
ランタンなんか使ってたら走りにくいからな。
夜に活動を行う可能性も踏まえて持ってきておいたが。よかったな。
女子勢のテントからも女子メンバーが出てきて——―。
「水爪。いるな?」
「はい」
俺の背後から返事が聞こえた。
水爪には存在感を操作すると言う特殊な特技がある。
俺は気配に気付かなかったし、絶好調のようだから心配は要らないな。
「赤木。山の地形から異常音はここから北北東に1㎞行った先から聞こえてきたと思われる」
「さすが冴崎。オペレーターは音だけで状況把握か。そんじゃ、急ぐぞ!」
冷たい光を照らす月の下。俺たちは一気に駆け出す。
山の斜面に入ってからは各員暗視ゴーグルを装着して。ランニングしている。
「ハッ……ハッ……」
「水爪、大丈夫か?」
水爪は普段の任務でも実働部隊ではなく、隠密系の専門職についている。
隠密系は走り回ると言うよりは、陰で任務を動かして障害を取り除く仕事だ。
つまり、水爪は走り慣れておらず、息が上がるのも早い。
「だい、じょう、ぶ……です……」
途切れ途切れか。
仕方ないな。普段は車輌系の裏寡や、技術班の連中も疲れ出してる。
一日働いて夜になって斜面を全力坂やってんだからな。仕方ない。
だが、俺たちはSVTとして働かねばならない。
……って。
「ストップだ!」
俺は指示を出して走るのをやめる。
暗視ゴーグルによる緑色の視界の中に、整地された空間が見える。
これは……
「お寺みたいですね……」
鎌月が呟いた通り、これは寺だろう。
灯籠が並んでいて白く光っている。
建物があり、明かりもみえる。
「ん……?」
今、何かが動かなかったか?
何かの影が見えた気が……。
「全員伏せろ!」
五十嵐が声をあげて俺たちは咄嗟に伏せる。
……!
ゴウッ!
何かが吹っ飛んできて、目の前に現れた。
いや、現れたと言うよりも視野を埋め尽くした。
「何なんだこれは……!?」
巨大な体躯に、不気味なまでに長く太い足が6本、そして何よりも――。
「人間の顔……なのか!?」
その顔面と思われるところには人面が張り付いている。
こんな生物。理科の授業では習わない。
いや、これは生物ではない……。
何故なら、暗視スコープで見る事ができない。
今回支給している暗視スコープはパッシブ方式と言うシステムで、生体から出る赤外線や月光の反射光は白く写る。
そのため、俺がSVTメンバーを見ると、メンバーは白くスコープで見る事ができるのだ。
だが、こいつからは赤外線がでていない。
つまり、生き物じゃない。
ヤバい。
脳裏に甲高い警笛が響き渡り汗が溢れ出す。
「撤退! 逃げるぞ!」
正体は知らないが、ここにいるとどうなるかわからない。
逃げようとすると、巨大な何かはその丸太のような腕を降りあげて――。
「くそっ!」
「しーくん!?」
背後も警戒せずに前方を走る葉城を突き飛ばして、なたを引き抜く。
「お前らはさっさと逃げろ!!」
ダンッ!
痛い……腕がしびれる。
降り下ろされる腕をなたで逸らした。
火事場の馬鹿力ですれすれかわせたが、異形の腕は横の地面に突き刺さっている。
「っ……!」
だが、俺は油断していた。
相手はその巨体を六本の足、もとい腕で支えている。
つまり、攻撃に使える腕は一本じゃない。
大きく振り上げられたもう一本の腕を目の前に、俺は動くことができない。
腕がしびれていてもう一撃を逸らす事なんかできない。
もう――終わりだ。
俺は目を閉じて一瞬後の負荷を待つ。
情けないが、リーダーとして仲間は守れた。
あいつらなら逃げ切れる。
ビュン。
一瞬の風をきる音が聞こえて、目を開ける。
ダンッ。
見ると、巨大な異形はその場に倒れている。
「な、なんだ……!?」
異形が起き上がろうとする……が。
ビュン。
ダンッ。
再び〝何か〟に足をかけられたように転倒する。
一体何が起きている……!?
見ると、異形の向こう側、寺の方に漆黒の影があった。
暗視ゴーグルをつけていると灯籠の光が眩しいから。外して見てみる。
灯籠との逆光で見えにくいが、確かにそこには黒の人影がいる。
「何をして――!」
民間人は今すぐ逃げた方がいい。俺が避難の指示を出そうとすると。言葉は喉の奥へ引き込まれた。
影が腕を広げた瞬間に、そこら中から漆黒の、影の色をしたロープのようなものが伸びて異形の四肢に絡み付いた。
まさかとは思うが……!
そうだ。
俺は暗視ゴーグルをつけている状況で、あの影を「黒い影」だと認識した。
つまり……あれは、光を放っていない。
人間ではない。
影自体が、そこには居たのだ。
あいつも、人間ではない。
「一体何が起きてるんだが誰か説明しろよ!」
俺は急いでなたをしまって暗視ゴーグルをかける。
状況が飲み込めないが、とにかく、ここは逃げるに越したことはない。
一度振り返り、もう一度状況をみる。
巨大な異形が、人影の動きにあわせるように動く影に翻弄されている。
ん?
「四ツ谷君……?」
俺の視界だと真っ白に染まっている灯籠の奥に、さっきまではなかったいくつかの人影が見える。
そのなかに、どことなく四ツ谷君に見える人影がある。
いや、そんなわけがない。
何故こんなところに四ツ谷君がいるのか。
恐らく、民間人が音を聞いてよってきたのだろう。
いや、あるいは、あれらも人外なのか?
パニックだから思考が正常でない。
とにかく、逃げなければ――。
鍛えた足で、駆け抜ける。
もう、背後から追いかけられることはなかった。
「逃げ切れたか!」
チェレンは一人で確認するように声を出す。
同じキャンプ場に来ているボランティア集団が物音を聞いて駆けつけてきたのだが、妖怪、土蜘蛛に襲われたようだ。
おかしな格好をしていたが、よく見えなかった。
「っと、俺の力は影の操作だけじゃないんだぜ!」
チェレンによる転倒の誘発で、土蜘蛛が逃げようとするが、いくら走っても動いてない、ランニングマシンのような状態になる。
「無駄だね。俺は一定の区間をループさせることができるんだよ!」
忍び寄る黒い影は、影の操作だけでなく、定めた区間の空間をループさせることができる。
「さぁて……逃がしてやらねぇよ?」
なんとか下山した。
俺の脚はパンパンで、もはや走るのは限度に達している。
「しーくん!」
「赤木くん!」
聞き覚えのある二人の声が聞こえて、俺は安心する。
無事に逃げていたようだ。
「赤木、戻ってきたのか」
「てめぇ、心配かけやいられましたか」
「赤木さん。大丈夫でしたか!?」
全員の声が聞こえる。
よかった、山ではぐれれば無事ではいられないと思ったが、ちゃんと下山できていた。
全員が、駆けてくる。
俺も近づき、互いの生存を確認する。
「しーくん。あれはなんだったの?」
葉城が聞いてくるが、俺には簡潔な答えが出せない。
わかっていることは……。
「あれは恐らく、生き物じゃない。赤外線が体から出てなかったからな。だからこそいち早く暗視ゴーグルを外していた五十嵐が最初に気づけた」
あんなにも巨大な生き物見たことがないしな。
一体……なんだったのか。
「それから、人間じゃないのはあいつだけじゃなかった。もう一体、不思議な人影が現れた。そいつのお陰で俺は今ここにいる」
何者なのかはわからない。
だが、俺は確かに助けられた。
「民間人が近づくのも時間の問題だ。武装してない一般人ではあの化け物には勝てない。つまり、放っておくわけにはいかない」
「おい待てよ赤木!あいつをどうするってんだよ! 警察でも呼ぶのか!?」
「いや、警察なんかじゃ抑えきれない。死体が増えるだけだろう」
「てめぇまさか……!」
五十嵐も気づいてるな。
「もう一度さっきの寺に行くぞ!あの異形を倒す!」
「赤木君。正気なの?」
「SVTとして、あんなのを野放しにしておけるかよ。それに、俺はあの影に感謝の言葉を伝えてない」
全てのものに感謝して、自らも人のためになるように動くのがSVTだ。
ボランティアの一環として、あの異形をどうにかせねばならない。
よし。
「全員、準備をしろ。300秒後に、出発だ」
どうも、永久院です
奇妙な物体の登場でございます
赤木たちが出動しました
様子を見てみるとそこに居たのは巨大なナニカ
巨大な物だけでもなく影みたいな奴だったり、色々危険ですね
実はこの企画、始めた頃は倶利伽羅剣だの何だのは全く考えていませんでした
気付いたら出てきてました
そして、赤木が500キロパンチをナタで逸らしたりしていました
おかしいですね、ただの高校生のはずなんですけど……
次回、蒼峰さんの番ですね
次に僕がお会いするときは作中では300秒後です
そんじゃ、蒼峰さんにパス!




