時を待つ
俺は、待っていた。
ただひたすらに、来ることのない時を。
「待つよりほかはない」
そう自分に言い聞かせて。
今日はいいことがあった。
この薄暗い部屋に鳥が舞い込んできた。
その鳥は入ってきた場所を忘れ、部屋の中をさまよっていた。
その鳥に、出口の窓を教えてやると、ありがとう、と言って、窓から飛び去った。
ただそれだけでも、十分にうれしい。
この何もない場所で、何かが起こったのだから。
今日は外に出てみよう。
もしかしたら、来ない何かが来るかもしれない。
期待はするが、希望は持たない。
どうせまた、来ないのだから。
外は、空気が冷たかった。
白い息が、出るほどに。
来ることのない時も、きっとこんな感じなのだろうと、目を瞑る。
決して、その時は来ないと分かっている。
それでもいい。
待つ。
それだけが俺の存在理由だから。
たかが知れた、人の力。
来ない時は、それが好きだ。
「どうしてわかる」
「さあね」
俺と、仲間の、ちょっとした時間。
「久しぶりの外だ。たっぷりと満喫しておけ。じゃないとまた鳥の幻覚を見るぞ」
「それはやだなぁ。ちゃんと深呼吸しとこ」
空気は、冷たい。
この鉄の船の外側は、こんなに寒かったのか。 これだけ寒かったら、来ない時は凍り付くかな。
それを仲間に聞いたら、笑った。
実際に600ぴったりです。