密室殺人事件
小説を書くのは初めてですが、がんばります!
速水陽介は悩んでいた。元来陽気であまり悩まないこの男にしては、珍しく本気で悩んでいた。
「ああ…どうしよう」
見ているこちらの気分が滅入ってしまいそうなほどの悩みっぷりである。
速水陽介は刑事である。茶髪にピアスの外見からはとても分からないが、正真正銘警視庁捜査一課の刑事なのである。
陽介の悩みの原因は、幼なじみの教師にする頼みごとである。
「いくら俺が能無しだからって、あいつに頼みに行かせるかよ…ったく、あの鬼警部!」
随分な言いようだが、とにかく陽介は目的地―聖蘭学園に向かった。聖蘭学園のドアを開けて、陽介は中の人物に声をかけた。
「雅人!起きろ!」 ソファで寝息をたてていた黒瀬雅人は機嫌悪げに陽介を睨んだ。
「…何しにきた…」 寝起きでかすれた声には、迷惑だという色がこめられていたが、陽介は気にせず続けた。
「頼みがある。とにかく起きて話を聞けよ。」
雅人はソファから起きて軽く欠伸を漏らした。そして藍色の瞳を陽介に向け、続きを促した。
「一週間前に推理作家が自殺したっていうのは知ってるか?」
「知ってる。ガキどもが騒いでいやがったからな。」
瞳と同じ藍色の髪を掻き回しながら、面倒くさげに答えた。 「…で?俺に頼みたいことってのは何だ?まさか世間話しにきた訳じゃねぇだろう。」
「ああ…警部がさ、またお前の力を借りたいんだってよ。」 雅人は訝しげに瞳を細めると、意味が分からないと言うように、疑問を言った。 「自殺なんだろ?俺の力なんていらねえんじゃねぇか?」
「いや、最初は自殺だったんだ。でも調査していくうちに他殺の線も出てきた。他殺にしても、部屋には鍵が掛かってる。窓にも内側から鍵が掛かってるしで、密室殺人だって言われてんだよ。」
「密室…ねぇ…」
雅人は愛用のセブンイレブンのタバコに火をつけると、煙を吐き出しニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「いいぜ。その依頼、受けてやるよ。」 「マジで!?さすが名探偵!これで警部に怒られずにすむ!」 読者諸君には、なぜ一般の教師である雅人に捜査協力がかかるのか理解できないだろうから、まずは雅人について述べようと思う。
黒瀬雅人は聖蘭学園の養護教諭である。だらけた服装と態度からはとても仕事ができると思えないが、事実そうなのである。雅人は教師であるが、しかし、その頭のキレの良さと深い知識で、いくつもの難事件を解決に導いた名探偵でもある。というわけで、警察はかなり頻繁に雅人に捜査協力を依頼しているのだ。
「とりあえず現場に行くぞ!密室を見てもらわないとな!」 「へいへい…」
陽介は雅人を連れ出し、二人で現場に向かうのだった。