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前世は不遇な人生でしたが、転生した今世もどうやら不遇のようです。  作者: 八神 凪
波乱の学校生活

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58.思い違い

「おお、煌びやかだ!」

「山から採れる『フェアリナイト』という石が建物の装飾や工芸に向いているの。ウチの特産品でもあるわ」

「へえ、凄いな」


 襲撃からさらに数時間をかけて俺はついにシェリシンダ国へと到着した。

 煌びやかと評したのはイークベルン王国ともライクベルンとも違う建物の装飾や一部、使っている材質が違うのだ。

 エリベールがそれについて説明してくれた。薄い緑が輝き、魅惑的な色は中々に美しい。

 城に向けて馬車はゆっくりと進み、町中では出窓から顔を出してエリベールが手を振っていた。

 讃える声が聞こえる中、馬車の破損等で心配してざわついていることもあった。

 まあ、襲撃されたのが丸わかりなので、国王不在かつ王妃は病床、残る娘が狙われているなら国の未来は明るくないのでそんなものだろう。

 やがて入城し、俺とエリベールが馬車から降りると城の大臣やらに出迎えと歓迎を受ける。


「おお、姫様! お戻りになられましたか!」

「出迎えご苦労様、テオルド。なんとか無事に帰って来ることができました」

「……ふむ、馬車が損傷……むう……」

「こちらのアルが守ってくれました、丁重におもてなしをするように」


 何故かエリベールが得意気に俺を前に出し、後ろで騎士達が苦笑する声が聞こえてきた。

 あの戦い以降、妙に気にかけてくれるようになったのはいいことだと思うこととしよう。


「初めまして、イークベルン王国はゼルガイド・フォーゲンバーグが一子、アルと申します。今回は諸事情により、同伴させていただきました」

「おお、ゼルガイド騎士団長の! これは遠いところからようこそいらっしゃられた。歓迎いたしますぞ」

「テオルド、わたくしは着替えてきます。アルに部屋をお願い」

「承知致しました」

「アル、また後でね」

「ああ」


 ウインクしながら侍女たちに連れられて去っていくエリベールを見送ると、テオルドが頭を下げて微笑む。


「ふむ、あのように楽しそうな姫様は久しぶりに見ましたな」

「そうなんですか」

「おお、坊主……いや、アルと話している時はとても楽しそうだぞ」

「おっと……」


 御者をしていた騎士がにこやかに笑いながら俺の頭に手を置いてそんなことを言う。

 年の近い子供が居ないみたいだし、政治に関することをしていると考えればそうなるのもわからなくはないけどな。


「それじゃあな。姫様を頼むぞ」

「わかってるよ、ありがとう」


 俺が礼を言うと彼は一瞬びっくりした顔をした後、肩を竦めて他の騎士達と一緒にこの場から去っていく。


「ではこちらへ」

「あ、はい」


 柔和な笑顔のテオルドさんに連れられ、城の中を歩いていく。

 イークベルン王国と違い、どちらかと言えば宮殿のような内装が興味深い。

 国が違えばとは言うけど面白いものだ。


「それにしてもアル殿だけなのですか?」

「ええ、私だけ来るように手配してもらいました。少しエリベール……様の母君に試したいことがありまして」

「ほう、ディアンネス様に? ……姫様のご友人が来られたとなれば王妃様もお喜びになられますな」


 良きかな良きかなと頷きながら部屋へ。


「では、ごゆっくりお過ごしください。用があるときはこの魔法石に手を触れていただければメイドが来ます」

「ありがとうございます」

「はは、流石は騎士団長の息子。礼儀正しいですな。うんうん」

 

 そう言ってテオルドさんは扉を閉め、俺はスゥィーートルームみたいな部屋を散策する。


<豪華な部屋ですね。ベッドも二つありますし>

「……うん、でもこの部屋を使っていいのかねえ? 双子が居ればこれくらいのベッドは欲しいけどさ」


 部屋にトイレ、洗面台があり、本当に宿のスィートルームのような感じだ。

 客室とはいえ上位の貴族などが使うのではと思う。

 トイレもきちんと水が流れるタイプなので、先進的でもある。トイレは大事だ。


 さて、それはともかく襲撃者について考えよう。

 このタイミングで襲ってくる可能性がある勢力として――


 一つ、ツィアル国

 二つ、ヴィクソン家

 三つ、ただの通りすがりの野盗

 四つ、イークベルン王国に裏切者が居る


 などなど。

 しかし、ツィアル国でよく作られている火薬を持っていたと考えれば三と四は排除すべきだろう。

 なら一と二が残るけどエリベールが狙われる理由が不明だ。


 前にも同じことを考えたが『ブック・オブ・アカシック』で知り得た情報を、エリベールが持っていることを知る人物は俺しかいない。

 彼女が他の者に話すのも考えにくいからだ。

 となると、単純に混乱に乗じてヴィクソン家が狙ってきたと考えるべきか。

 俺は『ブック・オブ・アカシック』を取り出しながら情報について精査するため読んでみることに。


「……襲撃者の黒幕は一体何者だ?」

<ダイレクトに出ますかね? だとしたら優れもの過ぎるんですけど>


 軽いよリグレット。

 俺もそう思うけど。

 さて、しばらく待っていると文字が浮かび上がってきた。どれどれ?


 ‟襲撃者の黒幕はツィアル国。ヴィクソン家と共謀で早めにエリベールを始末しようと企んだ結果。エリベールはここでは生き延びるから些末なことではない。パーティを思い出せ”


 あ?

 随分乱暴な情報が出てきたな……

 『ここでは』生き延びる? どういうことだ? この先死ぬことがあるということか? パーティを思い出せというのも分からない。


 すると――


 ‟全ての情報が分かるとは限らない。その瞬間瞬間で変化している可能性もある。聞きたいことは浮かび上がる。だが、それが確実だとは思わずに自分で考える必要が、ある”


 ――そう、追記された。


 絶対じゃない、ってことか?

 未来予測だと思っていたけど、不確かな情報もあると示唆されているようだ。


 パーティー……あれについて考えろ? どういうことだ?


 ‟パーティー会場で狙われたのは、誰だ?”


「……!?」


 そう表示された瞬間、俺の頭にかかっていた靄が晴れた。


「アル、どう? 入ってもいいかしら?」

「あ、うん! いいよ」


 なるほど、そういうことか……

 ならツィアル国の狙いは――


 俺はそんなことを考えながらエリベールを招き入れた。

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