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春から始まる季節に、君がいた。小さな心の成長の物語。  作者: リトル
第二章:日傘のようなひと
6/10

06.中学校生活、三日目 ― 頑張れよ、って書いてあった ―

いらっしゃいませ、全力で歓迎します!

拙い物語ですが、ぜひ楽しんでいってください。


湊は盛大に戸惑っていた。理由は目の前にいる颯太にあった。

というのも、何かにつけくっついてくるのだ。今まで一人でいることが当たり前だった湊からすると、それはとても不思議で奇妙なことに思えた。

え? なんで僕? と言いたそうな目で颯太をじっと見ていると――

「また不思議そうな顔して」

と颯太は笑う。


(だって、意味わかんないよ? 僕なんて面白くもないだろうし。なんで一緒にいるんだろ? 不思議だ……)

となるのが湊で、そんな湊をそうと分かっていても面白がることもせずに、にこにこと一緒にいるのが颯太。

昨日の部活紹介からの流れで、颯太は湊とセット、みたいな空気ができていて(颯太が湊を探して、大声で叫んだせいらしい)湊としては恥ずかしい限りである。

ただ、むやみやたらと触れてこない絶妙な距離感が、湊には心地いい。


そういえば――あの部活紹介はなんだかんだと楽しかったな、またああいうのやらないかな、と湊が他愛もないことを考えているうちに、颯太は完全に湊の前に椅子を移動して座り込み、何やら始める様子。

「あのさ、何してんの?」

と聞く湊に、え、今それ聞く? とやれやれ感を出しながら颯太が答える。

「作文の宿題、というか何か書いて来いって先生が言ってたやつ。あれさ、途中までしか書いてないから今書き上げちゃおうと思って。澄野もまだ書き終えてないって言ってたじゃん? 一緒にやろうぜ?」


「あ」

「どうした、澄野?」

と颯太。

「えっと。家にあるかもしれない……。入部届の署名もらえてうれしくてそっち忘れてた」

と落ち込む湊に対して――

「すげーじゃん! 母親には絶対許してもらえないって言ってなかった? どうやったんだ」

とノリノリで聞いてくる颯太。

それには湊も苦笑して、

「お父さんが深夜に帰ってくるの待って、お父さんに話したら署名してくれたんだ。そしたら、署名の端っこに、鉛筆で『頑張れよ』って書いてあって、なんかね、ちょっと嬉しくって。そうしたら、色々忘れ物しちゃったみたいで……」

と挙動不審な動きをしだす湊に、爆笑する颯太。


「よかったじゃん! お父さんが味方してくれて」

と湊を励ます。

一連の流れを見ていた周囲の友人らは、思わずほっこりした。

「というわけで」

と言い出す颯太に、

「???」

となる湊だが――

ほら、と差し出された白紙の作文用紙に、湊は礼を言う。 そして二人そろって、「中学生になってやりたいこと」というありきたりなお題の作文を、午前中の休み時間と昼休みいっぱい使って書き上げるのだった。



作文


「中学生になってやりたいこと」 1-A 澄野 湊


僕は、中学生になって、まず友達をたくさん作りたいです。僕は人見知りなので、少し大変かもしれません。でも少しずつ友達を増やしたいです。

それから、勉強も頑張りたいです。英語を特に頑張れたらいいなと思ってます。「言葉」は大好きです。昔から「言葉の遅い子」て言われてました。大人がよくそう言ってたのを知ってます。でも、頭の中で考えてから話すようにしていただけなのに、大人の人は時間がかかるってことだけでそうやって判断するのが嫌いです。

でも、一番頑張りたいのは部活です。自分で選んで何かやるのは、今回が初めてです。人前に出るのは嫌なので、それでもいいかって聞いたら「大会とかでなくてもいいよ」って言ってくれたので、ダンス部に入りました。あと、パルクール同好会にも入りました。


パルクールって、ユーチューブでよく見てて、こんなことできたらいいな、ってずっと思ってたので、ぜひやってみたいと思ってました。それで、お母さんに話したらどっちも絶対ダメ、て言われたんですが、お父さんに話したら、どちらもやっていいって言ってくれました。でもお母さんに怒られるのは嫌なので、どっちも怪我だけはしないように気を付けてやりたいと思います。


それから、パルクールの部長? さん、僕も兼部でごめんなさい。



書き終えて、湊は読み返して、ふと思った。

これ、先生に提出できないやつだ……。書き直そうかな。


「杜山君、原稿用紙もう一枚ある?」






楽しんでいただけましたでしょうか。

次回をお楽しみに。


~ 気に入っていただけたら、ぜひブクマ登録よろしくお願いします☆

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