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5.サイクル─3

 力を振り絞ってよろよろと立ち上がり、彼女は剣まで無理やり歩を進めた。剣に手をかけ、引き抜こうとしたが、腕の力が抜けてしまった。

「おやおや。俺が何か間違えたかと思ったが、おまえは十分強くないようだね、おチビちゃん?次の奴を待った方がよさそうだ。」

 挑発には応じず、少女は剣を引き抜こうとし続けた。その時、悪魔が卑劣にも背後から攻撃し、彼女を剣から遠く突き放した。

「おまえには無理だ、諦めな。おまえは俺が始末しなきゃならない、価値のないおチビちゃんに過ぎん。ゆっくりと、おまえを始末してやる。」

「黙れぇクソ野郎!!」

 彼女は叫んだ。

 侮辱の言葉が彼女の口から出たのは初めてだった。

 これまでの人生で、彼女は誰に対しても声を荒げたことはなかった。誰にも逆らったことはなかった。自分の気持ちを誰かに話したこともなかった。

 だが、獲物をもてあそぶ悪魔を前にして、血痕(ラッドステイン)に選ばれし者は叫ぶ力を見出した。

「黙れ!私ができないなんて言うな!私が何者であるかを決めるのはあんたじゃない!」

 悪魔は混乱した。彼女は錯乱しているのか?だが、その瞳は以前とは違っていた。

 以前の少女は、恐怖とためらいに覆われていた。勇気はあったものの、自分自身への自信が欠けていた。たとえ肉体的に強く、洗練された技術を持っていたとしても、彼女の感情は揺れ動いていた。しかし今、彼女の瞳は決意と怒りに燃えていた。

「この汚れた小娘が、そんな目で俺を見るな!弱い!役立ず!まず最初にその両目をえぐり出して、次におまえのはらわたで首を絞めてやる!」

 悪魔は激怒し、全力で彼女に襲いかかった。しかし、以前とは違い、彼女は攻撃されることを恐れなかった。十八は目を大きく見開いたまま、その素早い攻撃をかわした。

 無傷で逃れるには速すぎる一撃だった。それでも、片目を貫かれるだけで、なんとかかわすことができた。

 突き刺さった剣に向かって転がり、再び引き抜こうと試みた。今度は、決意を固め、石から剣を引き抜く力が出た。

「なぜだ?あり得ない!」

 剣を手にすると、彼女は何か異変を感じた。いつもより軽く感じたのだ。ひどく錆びついていた。

 十八は、何かがおかしいと感じていた。いつもの彼女の長剣とは違っていた。

 悪魔は時間を無駄にせず、強力な突進で彼女を攻撃した。

 考える間もなく、少女は剣を構え、両手で支えて攻撃を受け止めようとした。そして、予期せぬことが起こった──

 その一撃は少女に命中しただけでなく、剣を貫通し、真っ二つに折ってしまった。

 彼女は今感じているような、これほど鋭い痛みを経験したことがなかった。

 意識が遠のき始め、まるで失神しそうだった。

 致命傷を負い、唯一の希望であったはずの聖剣が真っ二つに折れ、少女の決意もまた、その瞬間に打ち砕かれた。

 伝説によれば、最後の持ち主の霊が彼女を導くはずだった。剣は、握られると、先人たちの記憶と力であふれ、彼女が悪魔を打ち負かすことを可能にするはずだった。

 しかし、導きもなければ、力もなかった。彼女の手に残されたのは、暗い洞窟に隠されていた、古く、錆びつき、そして今や折れてしまった剣だけだった。

「ヒャアアハハハハハ!このクソッタレのおチビちゃんが!見たか!おまえは無だァァァァァァァァ!」

 悪魔は高らかに笑った。

 彼は彼女を乱暴に蹴り飛ばした。何度も何度も殴りつけ、多くの傷を負わせた。その暴力はあまりにひどく、彼女の左足と右手の指二本がちぎれ飛ぶほどだった。

 打ち負かした相手を殴るのに飽きると、彼は攻撃をやめて近づいた。

 彼女の首を掴み、目の高さまで持ち上げた。彼女の傷、特に腹に開いた穴からは、ひどく出血していた。

「おまえの目をえぐり出すと言っただろう?さあ、残るはこの片目だ。その後、おまえを真っ二つにしてやる……いたぁぁぁぁぁ!」

 悪魔が少女のもう片方の目を突き刺そうと脅したその瞬間、彼女は、自分を掴んでいた手を切り落とそうと、まだ手放していなかった折れた剣と共に、悪魔に突き刺さったままの自分の剣を握った。

 刃は何度も同じ箇所に当たっていたため、その腕を切断し、悪魔の一撃から逃れるのに十分だった。それは彼をさらに苛立たせただけだった。

 怒りに叫びながら、悪魔は彼女に襲いかかり、すでに衰弱していた少女を祭壇の上にある壁に再び叩きつけた。

 今度は、衝撃で自分の骨が砕ける音を聞くことができ、彼女は自分の終わりが近いことを悟った。


(汝の名を叫べ)

 まるで夢のように、一つの考えが彼女の心に浮かんだ。死の淵にいることによる幻覚だろうか?

 だが、名もなき少女はまだ諦めたくなかった。ここで、今、諦めるわけにはいかなかった。

 血痕(ラッドステイン)を手に入れることは、少女にとってすべてを意味していた。

 それはその持ち主であるという「名誉」だけの問題ではなく、彼女の自由をも意味していた。それが唯一のチャンスだった。この場所で、今すぐに。

 だから、ためらっている余裕も、ましてや弱気になる余裕もなかった。彼女はすでに、もはや退くことも、来たるべきものを恐れることもしないと決めていた。

 たとえそれが無駄なことであっても、彼女は自分自身の力を信じたかった。自分が経験してきたことすべてが無駄ではなかったと信じたかった。

 修道院を出たとき、まるで生まれ変わったかのように感じたことを思い出した。であるならば、単なる番号で呼ばれるのはやめるべきだ。だから、彼女は自分のために名前を選んだ。

 今この瞬間から、聖剣に選ばれし者は、いかなる敵も試練も恐れはしない。

「私の名前はおチビでも、小娘でも、『十八』でもない! 私の名前は、セレナだ!!!」

 それらの言葉は悪魔に向けられたものではなかった。世界に向けられたものだった。洞窟のこだまに。顔のない女司祭たちに。自らが選んだのではない運命に。

『何者かである。ここに存在する』と告げる叫びだった。

 折れた剣を掲げると、彼女の新しい名前が響き渡った。その瞬間、剣がまばゆく輝いた。剣にはめ込まれていた小さな石が、その光を放っていた。

 洞窟に入ってから、剣を手にしてからずっと、何かがおかしいと感じていた。彼女の決意は高まり続けていた。

 それまで自信に満ちていた敵は、今や慎重な態度を見せていた。彼は、少女が選ばれし者でなければこの場所にはたどり着けないと知っていながらも、彼女が部屋に着く前に簡単に殺せると信じていたのだ。

「どうして剣が突然彼女の手に現れたんだ?おまえ…いや!俺がさせない!」

 猛烈に走りながら、その下級悪魔はセレナに向かって高速で杭を放った。しかし、その投射物は光と煙の中に消えていった。

 その光と煙が晴れると、セレナは無傷でそこに立っていた。かつての致命傷も消え去っていた。

 折れた剣の代わりに彼女の手にあったのは、銀色の装飾が施された黒い(セプター)と、強力な魔力(オーラ)を放つ赤い水晶だった。

 彼女は剣術の習得に力を注ぎ、魔術の研究にはほとんど時間を割いてこなかったが、悪魔は一目見ただけで、自分がほとんど理解不能な存在を前にしていることを悟った。

「おまえは一体何の怪物だ?訳が分からない」

 彼は混乱して不平を言った。

 樹木悪魔の攻撃から身を守った赤い炎に覆われた自分の手を見つめても、彼女は何の痛みも感じなかった。彼女の心は、これまでに経験したことのないほど穏やかだった。

 悪魔は再び攻撃し、前回のように背後から彼女を狙った。セレナは片手を上げ、詠唱することなく炎の障壁を立ち上らせた。まるで彼女の体が、何をすべきかを正確に知っているかのようだった。

 悪魔は信じられなかった。そのようなことが可能なはずがなかった。人間であれ、他のいかなる生き物であれ、事前の詠唱なしに呪文を唱えることなどできはしない。これはまったくもって常軌を逸している。

「ごめんなさい… でも、あなたに構っている時間はないの」

「クソガキ、よくも俺を侮辱しやがって。俺は…」

 悪魔がわめき散らす中、セレナは静かに話した。

 彼女は杖を、攻撃しようとする悪魔に向けた。彼が言葉を終えるよりも早く、一筋の光が部屋全体を貫いた。

「ば… 馬鹿な…」

 一瞬のうちに、樹木悪魔は床に倒れていた。彼を襲った、まばゆく、そして恐ろしく速い魔法によって、その胸部は完全に切り裂かれていた。

 それが起こるとすぐに、セレナは膝から崩れ落ちた。あの強力なオーラはすべて消え去り、少女は元に戻っていた。

 悪魔の体の残骸は煙のように消え、杖に吸収されていった。

(今のは何?これがブラッドステイン?剣じゃなかったの?)

 彼女は混乱しながら自問した。

 血痕(ラッドステイン)はその宿主に反応するが、それは常に剣であったはずだ。その刃が、持ち主をあるべき姿へと導くはずだった。

「あの声。あれは記憶だったの?」

 彼女には分からなかったが、それが彼女を救った。今や彼女は、伝説の武器、聖なる杖血痕(ラッドステイン)を携えるにふさわしいと証明したのだ──

「よりによって、どうして杖なの?私、魔法は好きじゃないのに~」

 セレナは悲しそうにつぶやいた。

 結局はすべてうまくいったものの、まだ何かがしっくりこない。彼女の記憶は混乱していた。

 しかし、彼女に考え込んでいる時間などなかった。なぜなら、これが世界の運命を巡る彼女の旅の始まりだったのだから。

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