第18話 やべー奴がいた
サボり魔の俺は基本的に人に押し付けて生きている。
まぁ、それが元来の性質なのかはたまた因果として逆なのか知らないが、その結果として俺は仲間だけを育成できる能力を持っている。
故にサボる理由は山ほどある。俺が何かする必要はないわけだからな。
でも今回は違う。
「なんでみんな火力、暗殺とかそう言った系統ばかりで指揮系統1人もいないんだよ」
俺はうんざりしたように呟く。
だが、たとえ指揮系統がいたとしても今回ばかりは手を出さないといけない。
赤く反射するその硬い外皮になる鱗は炎を照らす。
巨体を支える4本の足は意外に細く、そして、引き締まっていた。
背中から生えるその翼は禍々しくも圧巻の一言で済ませるような帷となる。
そしてその顔つきはすらっとしていて、その眼光に射殺されるかのような迫力がある。
「ドラゴン…なんてファンタジー」
俺の呟きにツッコミを入れるものはいない。
全員が集中してる。
俺だってそうだ、でも軽口を吐かないと今でも尻餅ついて動けなくなりそうだ。
それだけの絶対的な差がある。
これをいずれ一般公開?
人類が滅ぶね。
だが、人類が勝てることを証明しないといけない。
「総員!聞け!一瞬たりとも目を離すな、全てが即死級の攻撃だと思え!」
息を呑む。
動き出した。
速すぎる…が、
「私の前でその速さを活かさせると思おいですか?」
渚が顎を蹴る。
そして、最大火力となるもの…
「貫きます」
能力者用に作られたアンチマテリアルライフルが火を吹く。
バァァォォッン!!!
轟音が巨大な部屋を震わせる。
「外れだ!全員、足止め!」
即座に判断する。
ドラゴンは身を捻り、渚の渾身の弾丸を避けていた。
それはドラゴンの目を見ればわかる。
だが、
地面が沈む。
「土遁!」
ミーシャが大地を泥に変える。
それを見たドラゴンがミーシャに狙いを定めてブレスを放つ。
だが、その間に入ったのがカツジだった。
「おらっよっと!軽い軽い!」
明らかに顔を引き攣らせながらもカツジがブレスを受けながら弾いていく。
「紅蓮!遅れは許されないよ!」
「それはこっちのセリフだ小冬!」
2人が走り出す。
小冬が刀。
紅蓮が大剣。
を持ち飛び上がる。
小冬は地面を踏み締めるたびに加速していき。
紅蓮は炎を身に纏い加速していく。
「秘伝の秘…『閃』」
「ぶっ飛べ!!!」
小冬の超加速による見えない一閃。
紅蓮の膨大なエネルギー質量による破壊はそれぞれ片翼ずつを攻撃して落とす。
「再生確認!だが、機動力は奪った!やっちまえ!渚」
俺は鎖を魔力で生み出してドラゴンの首と口を縛る。
保つのは一瞬。
でも、その一瞬があれば渚の今の機動力なら…
気がつけば渚はドラゴンの顔の前にいた。
それは空中であり、自然な様子で立っている。
天馬の天翔。
突風が吹き荒れる。
「パイルバンカー射出!」
その破壊は想像以上だった。
限界まで魔力で強化され、天馬の嵐によって反動を軽減した今のパイルバンカーは一切の無駄がなくドラゴンの頭蓋を砕く。
衝撃がここにまで伝わってくる。
渚の最大破壊力、より巨大な杭がドラゴンを貫き、戦いが終わった。
「戦力がギリギリ足りたな」
俺も含めて魔力の底がついてるけどな。
ーー
報告書
やべー奴がいた
ーー
なんか頭抱えたエベネットがいたけどやっぱりやばいよなドラゴン。
あれ、なんか余計悲痛そうにしてる。
なんでだろ。
うーむ、中々に今回の敵はヤバい奴だったな。
完封し切らなければ全滅だってあり得た。
それで部長が最近やけに真剣に病院を調べてるけど重い病気かな?
まぁ、そんなことより今回の功労者を労わらないと。
なんやかんやとロマンスが始まってしまう?
次回『第19話 終戦して』
記憶と技術の中に、我々は…ふわぁ、最近寝れてないなぁ。