表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/125

味方

 先制攻撃は、真鳥からだった。


 まだ洞窟を出る前、闇の中からクナイを放つ。

 相手は松明を掲げて洞窟の出口を取り囲むように整列していてくれるのだから、狙ってくださいといっているようなものだ。


 声もたてずに三人が倒れる。

 周囲がざわめき、出口を囲む輪が数歩分、遠ざかる。


 全員が息を呑んで注視する中、ゆっくりと灯りの中に出てきた真鳥は、倒したばかりの死体から剣を奪うと「あと十七人ね」と笑ってみせる。


 そんな余裕は見せたものの、実はクナイが残り少なく、常に洞窟を背後に庇いながら戦わねばならないという難しい状況にあることを、真鳥は誰よりも理解していた。


 最初は飛び道具に怯えていた敵も、クナイが飛んでこないと気づくや、じりじりと押し寄せ、真鳥を囲む輪を小さくしていく。

 勢いよく飛び込んでくる敵から片付けていくが、拾った剣は手入れが悪く、数人切っただけでヌルヌルと滑り始める。


「あと十二人……」


 鈍な剣で余計な力を使うため、少しずつ上がり始める息が、白い水蒸気の固まりを作り出す。

 ここは突破口を作って逃げた方がいいだろう。しかし奏羽の状態を考えると、真鳥が抱えて跳躍するにしても、追っ手は少ない方がいい。あと五人くらいは減らしておきたい。


 手の中で滑る剣の握りを外套で拭う。



 そのとき、洞窟の入り口上部に、新たな気配を感じた。



 まだ増えるのかと、胸の内で毒づく真鳥は、その気配に既視感を覚える。


 どこかで……?


 真鳥の思考を遮るように、目の前に閃光が走る。

 矢杜衆が目くらましに使う閃光弾と煙幕弾であることに気づいた真鳥は、すぐに目を覆い視覚を守る。

 敵が閃光と煙幕に動揺を始める前に、洞窟の上の気配は真鳥のすぐ隣に立っていた。


「俺がなぜここにいるかは後にしろ。今は逃げるぞ」


 その声は確かに聞き覚えのある声だった。

 間違いでなければ、真鳥を助けようとしているその声の主は、あの夏の日、アカギ国で出会ったあの男のものだ。


 男はさらに煙幕弾を投げつける。

 そのわずかの閃光に男の横が見える。


 土師臨也。


 かつて、真鳥の父・華暖のバディだった男だ。矢杜衆の資料によると、各地で傭兵のような仕事をやっているという。


 アカギでは敵対していたが、直接、ほとんど剣を交わすことなく別れた。

 その時のことは良く覚えている。

 臨也の前では、指一本動かすことができないほどの圧力を感じていた。それが実力の差というものだった。

 戦いの場となった全権使の館には、不法侵入した真鳥たちのせいで役人が溢れており、臨也はその混乱に乗じて余裕で逃げた。

 あの事件の後の取り調べでも、アカギの役人から臨也の存在は問われなかった。痕跡をすべてを消し、彼は消えた。

 そして、真鳥も臨也の存在を隠した。

 矢杜衆は彼を追う立場にある。規律違反になることはわかっていたが、できなかったのだ。

 幼い頃の真鳥にとって、父親同様の存在だったからだ。


 その臨也がなぜここにいるのか。

 問いはいくらでもあったが、この突破口を逃せば次はないと瞬時に判断し、臨也の指示に従う。


「中に仲間がいる。怪我をしている」

「俺が運ぼう。シラル方面でいいな? 俺が先にいく。お前は後方を守れ」


 臨也は真鳥たちの行動を熟知しているようだ。

 複数の煙幕弾を敵の足元目掛けて投げつけると、臨也は洞窟の奥に入り、すぐに奏羽を抱いて戻ってきた。


「この人は?」


 奏羽は自分を抱えている男に訝しげな視線を送っている。


「大丈夫。通りすがりの味方だから。この隙に逃げるよ。あと少しだから我慢して」


 真鳥が安心させる様に言うと、奏羽がそっと頷く。かなり顔色が悪い。しんどいのだろう。見知らぬ男が現れて、通りすがりの見味方だと言われただけで納得している。状況を理解する思考能力が低下しているのだ。できるだけ早く戻りたい。


 奏羽を抱いた臨也が木の上に跳躍する。父親の世代といえ、その力はまるで衰えていない。

 真鳥もその後を追う。

 残された者たちは、煙幕の中で右往左往する騒ぎが遠ざかっていく。


 臨也が力強く跳ぶ。

 ちらりと後ろ見やり、真鳥の存在を確認する。


「味方ね……」


 臨也のつぶやきは風を切る音に掻き消され、奏羽にすら聞かれる事はなかった。


真鳥の装備が少ないのは、彼がいつも身軽で直ぐに動ける機動力を重視しているからです。

今回、奏羽の危機に間に合ったのも、それが効いています。


反面、多数対1になった時の脆弱性も併せ持っているので、今回の様なギリギリの脱出劇となりました。


本来の真鳥は、対軍人、対盗賊など、ある程度訓練を積み、使える武器を持つ相手と複数マンセルを組んだ仲間と共に戦っています。

この場合は、相手から武器を奪う事により、自身の装備不足を解消しているのですが、今回はフォローする仲間もおらず、相手の盗賊も『なんちゃって盗賊』なので、そこまで良い武器を携行していない為、真鳥も相手から奪っても上手く切り抜けるのが難しい状況でした。



真鳥の装備が現地調達の件は以前にも補足で書いておりますので、興味が有りましたら過去のお話も読んで頂けると嬉しいです。


宜しくお願い致します。



いつもお読みいただきありがとうございます。

更新する詐欺連発ですみません。

今日もお読みいただきありがとうございます。

次話は明日(12/21)更新予定です。(小声)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ