君が居るなら地上も……
こぽこぽ…
僕は水底へと沈んでゆく…
苦しい
けど
もがこうと思わない
もう
どうでもいい…
こぽこぽ…
僕は水底へと沈んでゆく…
目を瞑り
沈みゆくままに
底へ
底へと……
ふいに
塞がる唇
柔らかな花のような香りが
口内を
体内を満たす
空気が
僕のなかに吹き込まれる
目を
開く
そこには
白く豊かな双丘揺れる女性の上半身
魚の尾のような下半身
人魚だ
その美しい人魚は
僕に息を送り込むと
にこっ
優しく微笑み
僕の手を握ると
上へ
上へと
泳いでゆく
ぱたぱたと彼女は尾を揺らしながら
上へ
上へと
彼女が
君が僕の手を引いてくれるなら
僕はまた地上に戻ってもいいかも知れない
そう思いながら
君に手を引かれながら
上へ
上へと……