【閑話】クレオナとデージー
デージーとクレオナは、今、イベリス領にできた海に浮かぶ小さな島にいる。メルローズ公爵が、そこに家を建てた。
この島は、とても小さくクレオナたちの住む家とヤシの木が一本生えているだけ。そして、周りは海に囲まれていて、二〇〇m先に本土のイベリス領がある。
「今日は、アマリリスの結婚式ね。デージー、あなたがしっかり殿下を捕まえないからこうなったんでしょう」
「しょうがないじゃない。殿下とクラスが違って、お会いする機会がなかったんですから」
「はぁ、ちゃんと勉強しないからじゃない」
クレオナはため息をつき、デージーに呆れる。
「しょうがないじゃない。勉強苦手なんですから、お母さまに似たんです」
「はぁ、私は、勉強苦手じゃないわ」
「じゃ、お母さまは、学園時代のクラスは、何クラスだったんですか?」
デージーは苛立つ。クレオナは昔を思い出し、顔色が青白くなる。
「…………Cクラス」
「ほら、同じじゃないですか。ところで、お母さま、あっちの遠く離れた大陸とイベリス領には、橋が架かったのに、こんなに近いこの島とイベリス領との間は、なぜ橋を架けてくれないのかしら?」
「お兄様が、橋の費用は、自分達で払いなさいと言うのよ」
クレオナは、ため息を吐く。修道院にいたクレオナたちだが、地震の時、修道院長の言う事を聞かず、ケガをして、その上、クレオナは、自分の出身の領地メルローズ領の修道院だけに、わがままを言う。そのため、修道院長達が扱いづらく、ここに移ることになったのだ。
毎月、二人で生活できるだけの仕送りは、もらっているが、買い物にはここから、自分たちで小舟を漕いで、本土に行かなくてはならない。それが、クレオナたちには、面倒。それに、今の仕送りから橋を架けるための費用を捻出するには、数十年かかるだろう。
「それでは、まだ小舟を漕いで本土に行かないといけないの……」
「そういうことね」
クレオナたちは、釣りをしながら、ため息をつく。