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溺愛中

 

 アマリリスは、楽しみしていた王立貴族学園に今日から通う。

(この制服、着たかったのよね。うふふ、嬉しいわ)

 紺のワンピースにシルバーグレーのボレロを合わせた制服だ。鏡の前でくるっとまわり、全体を見る。

「お嬢様、よくお似合いですよ」

 ラベンダーが微笑む。


 アマリリスは、馬車に乗り、学園にむかう。学園に着き、馬車のドアを開けると、馬車に一緒に乗っていたクゥーが降りる。

「どうして、クゥーが?」

 レオナードの声が外から聞こえた。

「殿下」

「おはよう。リリー」

 レオナードが手を出してきた。アマリリスは、手をとって降りる。


「どうして、クゥーがいる?」

「クゥーには、お留守番するように言ったんですけど、私が馬車に乗るとき、一緒に乗ってきてしまって。降ろそうとしたのですけど、まったく動かなくて。しょうがなく、連れてきました。クゥー、犬は、学園には入れないのよ。ごめんね、帰ってね」


 クゥーの頭を撫でながらアマリリスが言うと、クゥーは、寂しそうに頭を下げ、とぼとぼと馬車に乗り込んだ。アマリリスは、ドアを閉め、クゥーの乗る馬車を見送った。多分、迎えの馬車の中にもクゥーが乗っている気がするわとアマリリスは思う。


「リリー、制服よく似合ってる。綺麗だ」

「ありがとうございます。あの、殿下、ここは学園ですよ。呼び方、気を付けてください。私たちは、まだ婚約していることは、公表してないのですからね。私を他の令嬢方と同じように扱ってくださいね」

 小さい声でレオナードに言う。レオナードは、前を向いたまま涼しそうな顔をして、

「うん、善処しよう」


 大丈夫かしら。とアマリリスは思う。アマリリスは、レオナードの一歩後ろから、レオナードの後を付いていく。初めての学園で、アマリリスは、勝手がわからない。周りをきょろきょろ見ていると、令嬢達の冷たい視線が突き刺さる。レオナードと一緒に居るからだろう。


 アマリリスは、レオナードとアレルと同じクラスになる。成績順でクラス分けがされている。

(レオと同じってAクラスよね。トップクラスだわ)

 アマリリスは、入学時に受ける試験を受けてない。なんでも、アマリリスは、万能薬が作れ、癒しのホープが演奏できるからいいのだとレオナードは、言う。

 (本当かしら。私、二か月も遅れて入学してるのよ。大丈夫かしら)


 教室に案内される。教室に入ると、教室にいる生徒達がざわつく。ひそひそとアマリリスを見て話している者たちもいる。アマリリスは、緊張する。


 (あっ、孤児院を訪問してた令嬢達がいるわ。やっぱり、レオの側に私がいるから、睨んでるわ。きっと、レオの婚約者になりたくて孤児院を訪問してたのよね。公表していないだけに、申し訳ないわ。今になればわかる。レオは、優しく、聡明で、見目麗しい人だわ。婚約者になりたいのは、わかるわ。平民の時は、関係ないと思っていたのに、ごめんなさい。私がレオの婚約者なの)

 アマリリスは、心の中で謝る。


 アマリリスとレオナードが婚約しているのを知っているのは、王族とメルローズ公爵家、この学園の学園長、アレル、リサだけなのだ。


 ***


 レオナードは、名前だけの生徒会長。生徒会長の仕事は、副会長が担ってる。学園に入学した早々、王が倒れ、その上、自称平民メルのアマリリスに会いに行くための時間を取るため、執務が忙しくなった。そのため、生徒会長の仕事まで手が回らなかった。


 (副会長さんのおかげで、今の私とレオがあるのね。ありがとう、副会長さん。そして、レオの分までお仕事させてごめんなさい)

 アマリリスは、心の中で謝る。


 レオナードは、名前だけの生徒会長なのに、その立場を利用して、常にアマリリスの側にいる。

「生徒会長だから、病み上がりのアマリリス嬢の面倒をみなくてはならない」


 アマリリスは、別教室で行われる令嬢だけの刺繍の授業は、一人で行きたいのだが、レオナードが、教室の入り口まで送り、授業が終わるとアマリリスが出てくるのを教室の入り口の横で待っている。アマリリスの授業の迎えに行くために、レオナードは、自分の授業は、早めに切り上げてる。

「病み上がりのアマリリス嬢の面倒をみなくてはならない」とレオナードは、言って。


「殿下、いつもお気遣いありがとうございます。あの、刺繍の授業の教室は、ひとりで行来できます。殿下が教室の入り口の横にいらっしゃると他のご令嬢も気を遣いますので」

 アマリリスが送迎を断ると、

「気にしなくていい。病み上がりのアマリリス嬢に何かあったら大変だ。生徒会長として、面倒を見る必要がある」

 と言ってついてくる。


 (心配してくれてるのはありがたいが、私は、友達を作りたい。常にレオが側にいて、誰も私に話しかけてこない。 当然、私も誰かに話しかけることができない。 レオ、私に友達を作る機会をちょうだい)


 ***


 アレルは、大きくため息をついた。

 今は、授業中。アレルは、レオナードの後ろの席に座っている。レオナードの体は、教師のいる教壇には向いておらず、完全に隣に座っているアマリリスに向いている。机に肘をつき、アマリリスを愛おしそうに見ている。


 アマリリスは、窓際の席に座っている。窓を少し開け、窓際に立つぴーちゃんとぴーちゃんのお友達の小鳥の頭を撫でている。ぴーちゃんは、自由だ。アマリリスのところに遊びに来てしまった。


 教師は、困っているようだが、見て見ぬふりだ。王子のレオナードに注意などできないのであろう。アマリリスとレオナードは、まったく授業を聞いていない。この二人が将来の王と王妃になる。


 アレルは、側近として、ここは注意しないといけない。と思う。


「レオナード様、授業中ですよ。前を向いてください」

 と小さな声で声をかけるが、

「あぁ、そうだな」

 と言うだけで、変化なし。しょうがない。とアレルは思う。

「アマリリス嬢、今授業中ですよ。ぴーちゃんと戯れるのは休み時間にしてください」

 と小さな声で、アマリリスに言うと、アマリリスは、はっとした様子で、

「ごめんね。ぴーちゃん。今、授業中なの。また後でね」

 と言うと、小鳥たちは飛び立っていった。

「うっかりしてしまったわ。教えてくださり、ありがとうございます。アレル様」

 アマリリスがアレルの方を向き、小さな声で言い、アレルに微笑む。そして、隣に座るレオナード様を見て、ぎょっとしている。

「殿下、私は、教師ではありませんよ。体を教壇に向けてください。そして、教師の方を向いて、教師の話を聞いてください」


 あなたもですよ、リリー様。とアレルは、心の中で言う。

「あぁ、すまない。つい、リリーに見とれてしまったようだ」

 レオナードは、やっと体を教壇に向け前をむいた。


 レオナードは、アマリリスと思いが通じ合ってから、毎日が幸せそうに見える。執務にも力が入っている。しっかりこなしている。


 アマリリスと一緒に居る時のアマリリスへの溺愛っぷりにアレルは、感心する。アマリリスは、優しく、綺麗だ。その上、公爵家の一人娘。婿入りしたいご子息がいてもおかしくない。お近づきになりたそうにしているご子息が沢山いる。レオナードは、しっかりアマリリスをガードしている。常に側にいる。 レオナード様がリリー様との婚約を早く公表したいのがわかる。とアレルは、思う。


 (リリー様を心配して、今度は、レオナード様がリリー様を閉じ込めないか心配だ。 側近として、しっかり見守らないといけない)

 アレルは誓った。



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