ダメ人間の生き様
最初に約束しておく。
この物語は俺が異世界でどうダメ人間を卒業したかという記録だ。
誰も思いつかない、俺流での異世界の攻略法だ。
ダメ人間卒業生、一 賭也
俺は高校生でもなければ平凡でもない、所謂ダメ人間である。
まぁ軽く俺の人生を振り返っていこう。
中学生までまともに勉強をしなかった俺は、そこら辺にあったヤンキー高校に入学し、ひたすら遊びまくって卒業しようと思ったが、親父に殴られ心を改め
初めて死に物狂いで勉強した。
努力が実ったのかなんとか大学へ進学できた。
そして俺は大学で初めての彼女を作った。
その彼女の為に俺は必死で就職活動をし、大手ではないがそこそこ名の知れた会社に就職出来た。
ここが人生のピークだと今振り返れば思う。
俺は会社で毎日異常な労働時間働かされた。
心身共に限界だったが彼女と過ごす事だけを楽しみにして生きていた。
会社に勤めてから2年目、俺は唐突に別れを告げられた。
あと1年貯金してプロポーズしようと思っていた矢先だった。
それと同時に不景気の煽りを受けて俺は会社をクビになった。
人生がどうでも良くなった俺はクビになったその日に駅で騒いでいた人間を殴り飛ばして逃げた。
なんとか逃げ切った俺はありとあらゆる所から金を借り、競馬、パチンコ、ボートレース、競輪等、あらゆるギャンブルに手を染めて大負けした。
俺が死んだ後、誰かがこのメモ帳を読むんだろうか。
どうしても彼女の声だけでもいいから聞きたくなった。携帯電話は数日前に無くした。
俺の手元には小銭しか無い。公衆電話に走り、電話をかける。ピッ
「お、おい美さ」
「おかけになった電話番号は現在使われておりません。」
絶句した。
「どうすりゃいいんだよ……」
その時近くで爆発が起きた。
場所は大型ショッピングセンター。俺は走り出した。この時間帯は渋滞が多く、消防車の到着も遅いからだ。
火の中に飛び込み、瓦礫に埋まった人を3人ほど助けた。
まだ終われねぇ。もっと助けられる人はいる。その時、天井が崩れ俺は身動きが取れなくなった。足掻いて足掻いて、どうしようもなくなって、
「最後は結構頑張った人生だったな。」
眩しい。思わず目を瞑ってしまった。そして思い出した。たった今俺は死んだはずだと。
「ここ、マジでどこだ?」
「おはよう、哀れな人間。」
顔を上げるとそこには女神のような格好をした人間がいた。
「天国でも地獄でもどこでもいいから俺をさっさと送れ。」
「私の姿を見て驚きもしないの?」
「今どきコスプレなんて誰がやってても驚かねぇよ。」
「私の服はコスプレじゃない!私は本物の女神です!人間の汚らわしい文化に私を巻き込まないで下さい!」
「どうでもいいけど早くしてくれ。俺は人と話す気分じゃないんだ。」
「あなたはこれから沢山人と話すことになるわよ。」
「えっ?」
「あなたは春の女神祭り不幸な人を救うの企画に見事当選しました!」
「アホくさ、異世界にでも送ろうってか?」
「勘が鋭いわね……。あなたさっきから何故驚かないの?」
「もう驚くことにも疲れたんだよ。」
「私を見て好意的な感情を全く抱かないのはあなたが初めてだわ。うん、まぁいいわ、本人の希望だしさっさと異世界へ送ってやるわ。」
「ちょっと待て、説明とか無いのか?」
「あっちの担当の人が適当に説明してくれるわよ多分ね。」
俺の周りの床が魔法陣の模様になり、明るくなった。
どんどん明るくなっていく。体があらゆる方向に引っ張られたり、押されたりする感覚がした。
そしてそのぐにゃぐにゃした感覚が最大になった瞬間に女神が微笑みこう叫んだ
「行ってらっしゃーい!」
俺はこう叫び返した。
「世界観とやることぐらい説明しろよ!」
次に目を覚ますと、そこは全く見知らぬ世界だった。
痛みに耐えながら体を起こすと、
空には龍のようなもの、
両翼で5メートルもありそうな鳥、
猫耳と尻尾を生やした人間、
全身甲冑に包まれた時代錯誤な人。
「すげぇ……」
感動しながら街を眺めていると麦わら帽子を被った1人の少女が話しかけてきた。高校生ぐらいだろうか。とても華奢だ。少女は恥ずかしそうに、
「お、おじさん。大丈夫?」
と話しかけてきた。
「あ、俺?別に、ちょっと体が痛いぐらいで大丈夫だよ。」
「おじさん、誰?地面が光ったと思ったらおじさんが居たの。」
おじさん連打は20代前半に効く。そう思いながら名乗った。
「俺の名前は一 賭也。君は?」
「ル、ルナって言います。」
「教えてくれない?この世界のこと。」
「おじさんはなんで知らないの?」
「分かんないけど転送された時に名前以外の記憶が無くなっちゃったんだ!」
苦し紛れの言い訳だった。
「大変だねそれは。うーん、分かった。この世界の事を教える、ね。ルナ、話し相手が欲しかったんだ。」
その瞬間風が吹き、ルナと名乗る少女の麦わら帽子が飛んだ。
「あっ、」
少女の素顔が明らかになった。少女は美しい金髪を纏い、尖った耳を持ち、すぐにでも消えてしまいそうな儚さと美しさだった。
分かりやすく言うと、めっちゃ綺麗ってことだ。
「エルフって実在したんだ……。」
思わず俺は声を出した。
「あ、あぅ、そ、そうですよ。私はエルフです。おじさん、私を助けてくれませんか?」
このエルフ少女との出会いが全ての始まりだった。




