72話 タッチ
・
・
・
「あわわわわわわわわ!」
あれれ? ここはですか?
あ! どうやら天才さんの私は眠ってしまったみたいですね! 少し覚えてますよ。魔王軍と戦ってるんですよね!
「何ボケッとしてんのよ。立てる?」
「ありぇ、ルーナ? ──あいたっ!」
体を動かそうとしたら全身が痛みました。筋肉痛みたいな感じです。結構無茶なことしたみたいですね。
「アンタ今アホな方でしょ。目がヘラヘラしてるもん」
「え……普通にショックですけど」
起きてすぐなのに馬鹿にされました。
愛嬌があって可愛いって言って欲しいです。
「あはは。ほら、立って」
ルーナは笑いながら立ち上がるのに手を貸してくれました。よく見るとルーナも結構疲れてるみたいです。呼吸が乱れて鼓動も早くなってます。
「ありがとです。ルーナもお疲れ様」
「うんお疲れ。でも私はほとんど何もしてないわよ。全部アンタのおかげ」
「そう……なんですか?」
素直に褒めてくれました。
ちょっぴり背中が痒いです。
「フェンリィがいてくれてよかったわ。ありがとね」
「え、変なものでも食べちゃいました?」
「違うわよ。寝ぼけてんの?」
「だって、ちょっぴり気持ち悪いですよ? も、もしかして私の事……!」
ルーナが私にデレてくれるなんて初めてです。
でもごめんなさい。私は心に決めた方がいるので……。
ルーナのことは親友とか可愛い妹としか思えないので……。
「そ、そんなわけないでしょ! 変な妄想しないでくれる!? ただちょっと感謝してあげただけだから! あーあ、損した気分。もう言ってあげないから」
怒らせちゃいました。
でもこれぐらいが私たちらしいです。
「ふふっ、私もルーナの事大好きですよ?」
「な──!」
「あれれ~? お顔が真っ赤っかですよ?」
「アンタがそんな恥ずかしい事言うからでしょ!」
「いたいれふよ~。ひっはららいれ~」
少しからかい過ぎちゃいましたね。
私もお顔があっちっちです。
「まあとにかく、さ」
「はい。そうです、ね」
パチン!
手と手を合わせてハイタッチ。
たまに喧嘩しちゃいますが私たちは仲良しこよしです。
でもやっぱり恥ずかしいですね。気まずいです。
「さ、さっさと先行くわよ」
「あぁぁ、そうですね! 急ぎましょう!」
まだまだ敵の声はたくさん聞こえてきます。
遊んでる場合ではなさそうです。
「リクトとメメどこにいるかわかる?」
「んー、ちょっと待ってくださいね」
強化された五感は便利です。
あまり遠くなければリクト様の心音ぐらい一発でわかってしまいます!
「え……」
「見つかった?」
「はい……ん?」
「どっちなのよ」
拾いづらいです。
周りにたくさん反応がありますね。
リクト様が負けるはずはありませんが……。
「出ないわね」
不信に思ったのかルーナが通信機で呼びかけました。
しかし反応がありません。戦ってて手が離せないのでしょうか。
「ちょっと急いで合流しましょう」
「わかった」
私の声を聞いてルーナは真剣な表情になりました。
手をぶらぶらさせたり首を回したりしています。
一度大きく深呼吸すると「よし」と言って気合十分です。
「行くわよ」
「はい!」
私が先頭でルーナを案内します。
走りながら周囲の様子を探っていると、
「んふ。二匹みーつけた」
またしても魔王軍の幹部が立ち塞がりました。
忙しいのに、邪魔ですね。
・
・
・
「ふぅ……、そこどいてください」
「ぶった切ってやるわ」
私もルーナも確認した瞬間潰しにかかりました。
しかし敵のレベルも上がっているようですね。
瞬殺とはいきませんでした。
「んふっ、物騒な子たちね。可愛がるならボーヤの方がよかったけどまあいいわ。楽しませてね、子猫ちゃんっ」
さっきの敵より明らかに強いです。
触手のように自在にうねる長い髪が棘のようにチクチクしています。
強度もなかなかです。これはまた時間がかかりそうですね。
「フェンリィ、先行って」
敵を考察しているとルーナが言いました。
「ルーナ? 二人の方が速く終わりますよ」
「一人先に行く方が速いでしょ? 何が待ってるかわかんないならアンタが行った方がいいわ。四天王が相手ならなおさらよ」
「ルーナ……」
ルーナは敵を向いたまま目を離しません。
その横顔を見れば十分伝わってきます。
「わかりました。頼みますね」
ほんの少し頷いたルーナを横目に、私は先へ進みます。すると、
「逃がすとでも思ったかしら? 他にくれてやるわけないでしょっ」
ツルのように髪を伸ばして私を捕えようとしてきました。
しかし、ルーナが防いで私を逃がしてくれます。
「聞こえなかった? 私が遊んでやるって言ってんの」
「そう? まあいいわ。後悔させてあげる」
そう言って、敵は注射器を取り出しました。
あとはルーナに任せましょう。バトンタッチです。
◇◆◇ ルーナ視点 ◆◇◆
私はフェンリィを先に行かせた。
敵は一人。緑の長い髪を生やした高身長の女。
髪は薔薇みたいにトゲトゲしてて私の攻撃でも斬れなかった。
それと、ごすろり? って言うのかな。
そういう黒くてヒラヒラした服着てる。
「聞こえなかった? 私が遊んでやるって言ってんの」
「そう? まあいいわ。後悔させてあげる」
後悔、ね。
連戦で疲れてるのが本音。
でもそれは言い訳にはならないし、しちゃいけない。
ここは何としても一人で倒す。私には倒さなきゃいけない理由があるから。
────────────
名称:ローザ
体力:SS
物攻:S
物防:SS
魔攻:S
魔防:SS
魔力:S
俊敏:S
ユニークスキル:?
────────────
結構強い。けどやるって決めた。
私も役に立たなきゃね。
「んふ、アナタお姫様みたいな顔ね。もっと綺麗な顔にしてあげるわ」
敵は人差し指に髪を巻き付けながら不敵に笑う。
きっと私を見て舐めてるんだ。
癪だけど、その油断は好都合!
「アンタもその髪邪魔なんじゃない? 刈ってあげる」
真正面。最短距離で接近。
このまま一撃で葬ってやる!
≪月紅穿≫
喉を穿ち、紅く染める技。
なんだけど……。
「……く。どんだけ剛毛なのよ」
「あら、結構やるみたいね。少し本気を出さなきゃダメかしら」
首を狙って走らせた鎌は髪の毛で防がれた。
斬れないし押し合いにも勝てない。
何よこれ。鉄でできてんの?
「あらやだサラサラよ。これで何人も男を落としてきたんだか、ら!」
「うあっ!?」
跳ね返された。私がパワーで負ける?
それだけじゃない。なんで私のスピードについてこれたの? フェンリィみたいに目がいいのかな? 多分スキルかなんかよね。よくわかんないや。どうしよう。
「不思議そうな顔してるわね。いいわ、フェアじゃないから教えてあげる。女にも優しくするなんて、あたしったら相変わらず素敵だわ」
言ってることは謎。
でも勝手に喋らせておこう。
「あたしのユニークスキルは≪閂≫って言うのよ。体中をダイヤモンド以上の硬度にできるの。まあ要は鉄壁ね。それと、近づく敵をフルオートで迎撃できるわ。どう? 美しいでしょう?」
つまり私の動きについてこれたのは考えるより先に反射で対応してたからってことね。後は防御力が高いだけ……。
なるほど。単純で分かりやすいじゃない。複雑な能力じゃなくて良かったわ。
「んふ、分かりやすい子猫ちゃん。これならいけるって思ったんじゃないかしら? 顔に出てるわよ」
「は? アンタこそ、負けるわけないって思ってるんじゃない?」
自力は絶対私の方が上。
だって、リクトがくれた力だもん。
フェンリィも任せてくれた。
私が負けたら二人を否定することになる。
「バカね。懇切丁寧に能力を開示するわけないでしょ。上手い話には絶対裏があるのよ……ま、若いしまだ分かんないか。今から覚えるといいわ。と言ってもすぐに死んじゃうかしら?」
そう言って、一本の注射器を首筋へ。
「アナタの事は褒めてるのよ? このままだとあたしも負ける可能性がゼロとは言い切れないわ。でもね、こうすれば……あたしの方、……がッッッ!!!」
針を刺し、液体を注入。
「ぐぅっぅううう! ……はぁ。んああああああ気持ちいい! 体が火照って熱い! なんだかおかしくなっちゃいそうだわ!!!」
────────────
名称:ローザ(狂)
体力:SS
物攻:SS
物防:SSS
魔攻:SS
魔防:SS
魔力:SS
俊敏:SS
ユニークスキル:≪閂≫
────────────
「え──」
何これ。そんなのアリなの?
意味わかんないんだけど。
だって、コイツただの幹部でしょ?
そんなの絶対おかしいじゃん。
ずるいよ。こんなの、どうやって……





