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6話 洞窟デート(ではない)

「見てくださいリクト様! 私こんなに動けるんですよ!」


 フェンリィは呪いが解けるとその辺を飛んだり跳ねたりして大はしゃぎした。


「わかったよ。すごいすごい」


 俺はCランクでこの子はBランク。完全に格上だ。

 ちなみにこの世界はいくらモンスターを倒そうが勝手にステータスは上がらない。センスと鍛錬あるのみだ。この子は相当頑張ったんだろう。俺は頑張ってCランクだ。


 ところで、凄いのはわかったからそろそろ俺の周りをぐるぐる走り回るのはやめてもらおうか。さっきから一秒に一回ぐらいのペースで俺の前をフェンリィの横顔が通過している。


「リクト様って思った通りカッコイイですね!」


 ようやく止まってくれたかと思ったら顔を近づけてそんなことを言ってきた。少し照れる。


「ありがとう嬉しいよ。てか思った通りって?」


 ちょっと何言ってるかわからない。


「さっきまで視力低下のスキル──≪低視(デビジュ)≫もかかっていたのでボンヤリとしか見えてなかったんですよね。はっきりお顔が見れたのは今が初めてです」


 たまに目を擦ってたけど見えにくかったって事か。文字通り世界が輝いて見えるようになったんだな。よかったよかった。


「じゃあもういいでしょ。そろそろ離れよっか」

「もっと見せてくださいよ。それとも……やっぱり私は薄汚いボロ雑巾なので迷惑ですか?」


 それはずるい。目を潤ませて下から見てきたら誰だって了承するだろう。この子は意外と策士かもしれないな。


「わかった。でも俺だって恥ずかしいから程々にしてくれ」

「はいっ!」


 満面の笑みだ。どうも調子が狂う。

 これは気をつけなければ……。


「えっと、とりあえずここから出ようか。まずはミスウィンの町を目指そうと思ってる」

「ミスウィンですか……」


 あー、そういうことか。


「大丈夫。誰か嫌な人に会ったとしても俺が守ってあげるから」

「はい! お願いします!」


 暗い顔から一転し、魔石以上の明るさを放った。

 笑顔のよく似合う子だ。俺も元気を貰えるからずっと笑っていてほしい。




◇◆◇◆◇◆




 ここからは油断禁物。

 フェンリィのことも考えながら進む必要があるため、より一層気を引き締めて行こう。


 と思ったらさっそく、

 カサカサカサ。


「ひっ! な、なんですか!?」


 モンスターが動いた音に驚いてフェンリィが抱き着いてきた。俺は君の行動に驚きだよ。


「モンスターだよ。大丈夫、強くない」

「で、でもでも、こんなに大きいですよっ!」


 確かに大きいな。

 でもそれだけだ。さっさと倒そう。


≪反転≫


────────────

 名称:ダークスコルピ

 体力:B → D

 物攻:S → F

 物防:A → E

 魔攻:S → F

 魔防:A → E

 魔力:A → E

 俊敏:A → E

────────────


「ただ大きくてサソリの形をしてるだけだよ。フェンリィでも倒せる。やってみるか?」


 俺でも一撃で倒せるからな。フェンリィなら余裕だろう。

 だがフェンリィは俺の後ろに隠れた。恐怖が俺に伝わってくるほどカタカタ震えている。


「フェンリィ?」

「ご、ごめんなさい。私、ちょっと……おトイレ」

「え、ここで!? ちょっと待ってて、すぐ倒す」


 バシュッッッ! と一太刀で息の根を止めた。


「俺あっち向いてるから。でもそんな遠くには行かないでくれよ。はぐれたら大変だ」

「もう大丈夫です」


 向くと恐怖の色は無くなっていた。一応下半身を見てみるが濡れてはいない。大丈夫というのはもう遅かったという意味ではないらしい。


「モンスター怖い?」


 コクリと頷いた。


「今までは目が悪いおかげで少し怖さを抑えられてました。だけどこんなに怖かったんですね……」


 散々恐怖に晒されていたのだから無理もないか。


「目瞑っててもいいよ。ほら」


 俺はフェンリィに向けて手を差し出す。


「ぁ、ありがとうございます」

「お礼なんてしなくていいよ」


 小さくて冷たい手をしっかりと握る。

 するとフェンリィは、離れないように指を絡めてきた。




 その後も迫りくるモンスターたちを俺は≪反転≫で次々と撃破し、危なげなく出口まで到着した。時にはフェンリィをおんぶしながらだったりお姫様抱っこをしながらだったりで動きづらかったが何とかなった。


「着いたよフェンリィ。もう怖くないでしょ?」

「はい♡」


 おかしいな。今はもうモンスターなんていなのだが離れてくれない。あんまり怖がった様子もない。


「離れてくれないと置いてくよ?」


 今はこれでいいが、いずれは克服してもらおうと思っている。

 俺が常に助けられる状況とは限らないし、いつまでも甘やかしてはいけないのだ。


「ごめんなさい! 追放しないでください!!」


 本気で謝ってきた。マジトーンで直角になるまで頭を下げている。冗談で言ったつもりだったんだけどな。


「いや、そこまでは言ってないよ」


 すると安心したのかパッと表情を輝かせた。感情の起伏が激しくて見ていて飽きない。まあ安心してくれ。追放だなんて最低なこと俺は絶対しないから。


「あ、そういえば言ってなかったけど俺は魔王を倒そうと思ってるんだ」


 言うと、フェンリィはキョトン顔で見てきた。

 ならついていくの辞めますって言うか? それともバカにしてくるか?

 答えはどちらでもなかった。


「わかってますよ、そんなこと。リクト様以外に倒せる人なんていません! 私は捨てられるまでどこまでもついていきます!」


 何当然のこと言ってんだって顔だったか。まあ信頼してくれてるみたいで何よりだ。俺もその期待に応えられるように頑張ろう。



***



 洞窟の外に出ると村が広がっていた。この村を抜けて少し歩けばミスウィンの町に着く。今日の夕方までには間に合いそうだ。今後のことはまた明日考えるとしよう。


 ──と思ったがそうもいかないみたいだ。


「見てくださいリクト様! 村が騒がしいですよ」

「本当だな。何かあったのか?」


 小さな村だが全身武装した男たちが集結している。

 お祭りというわけではなさそうだ。

 緊急事態っぽい。全員慌ただしく動いているのがここからでもよくわかる。


「行ってみようか」

「はい!」


 村に入ると騒然としていた。

 軽いパニック状態だ。


「どうしたんです?」

「冒険者様ですか? よろしければお手を貸してはいただけないでしょうか。近くの森からモンスターが攻めてきたのです。報酬は可能な範囲で望むものを差し上げます。どうか、どうかこの村をお救いください!」


 村長らしき老人が縋るように懇願してきた。


「リクト様」

「ああ、わかってる。村長さん協力しますよ。状況を説明してください」

「本当ですか! ありがたやありがたや」


 今日はやけにトラブルが多いな。

 だが別に構わない。俺がその場に居合わせたおかげで助かる命がある。そう考えたら苦にならない。


 この村も救って見せる。

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