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53話【追放サイド】追放

 街に戻った俺たちは捕獲したゴブリンを研究施設に引き渡した。

 結果が出るのは明日と聞いたため今日は飲んで寝ることにする。


 しかし、金が無い。

 俺たちが挑んだデュアル・オーガはリクトが討伐したため俺たちには一銭も入らないのだ。どういう原理かわからないが、支給されている指輪にはそういったデータが残るらしい。


 だから今日も適当に新人冒険者をカツアゲして宴をした。明日になれば新種発見の功績でがっぽり金が手に入り、汚名も返上できるだろう。

 そんな淡い希望を夢見ていた俺らはバカみたいに食って飲んで騒いだ。

 そのまま気持ちよく寝てしまった俺たちを叩き起こしたのは次の一声だった。


『見つけたぞ! 連行しろ!』


 眠い目を擦ると朝になっていた。

 酔っぱらって酒を被ったのか体中が酒臭い。

 いや、そんなことは今どうだっていい。

 俺たちを20人ほどの鎧を着た兵士が取り囲んでいた。


『大人しく王都まで来い。王がお呼びだ』


 王?

 ああそうか。昨日の結果が出て俺たちを称える式典でも開くってわけか。

 こんな大勢に出迎えられるなんてさすがは俺様だ。


『とっとと立て、クズ共が!』


 あ?

 今なんつった? 聞き間違いか?

 この俺に向かってクズとかほざきやがったか?


「痛いじゃない! 触んなヘンタイ!」


 声の方を向くとルキシアが縄で縛られていた。

 待て。何かがおかしい。


『アーノルド。お前たちには第一級犯罪の容疑が欠けられている。大人しくついてこい』

「は!? 待てよ。俺たちに容疑!? わけわかんねえこと言ってんじゃねえ!」


 俺は拘束してこようとした兵士の腹に蹴りを入れた。

 しかし相手は全身武装しているため効果は薄い。


『貴様やりやがったな! これ以上罪を重ねるつもりか!』


 兵士が三人がかりで襲い掛かってきた。

 俺も咄嗟に剣を持ち、構える。


「よくわからねえが返り討ちにしてやる。俺様が誰か忘れたか?」


 Sランクパーティまで導いた英雄アーノルド。

 この国でこの名を知らない奴はいないだろう。


『黙れ雑魚が! ひっ捕らえろ!』


 怯む様子は一切ない。

 ならばと思い、腰を落として剣の柄を握る。

 その時──


「ぐ……ッ!」


 二日酔いのせいかほんの一瞬、立ち眩みと吐き気に襲われた。

 その一瞬が戦場では命取り。


『よし! 暴れんなよ。もっと厳重に縛っておけ!』


 俺は簡単に捕らえられて体と手首を縛られて口もテープで塞がれた。


「「んんんんんん!」」


 ハウザーとルキシアも同じように捕まっている。

 一体何が起きたんだ。どうしてこうなった……。




◇◆◇◆◇◆




 手荒に馬車の荷台に乗せられ、景色も見えないまま揺られること三十分。

 連れて行かれたのは王都。この国、『センテガンド』を治める国王が住む場所だ。

 国王は武力と権力を持たなければなることができない。

 童話なんかに出てくるただの小太り爺さんではないのだ。


『王! 連れてまいりました!』

『ご苦労』


 俺たちは王の前に縛られたまま投げられた。

 長い長いレッドカーペットが敷いてあって、その両脇には数えきれないほどの兵士が寸分の狂いもなく整列している。


 俺が目線を上げると王が玉座に腰を据えて頬杖をついていた。

 凶悪なモンスターにも引けを取らないプレッシャー。

 こんな化け物みたいなやつでも魔王軍の四天王には歯が立たないと聞く。


 俺の野望の一つに、コイツを暗殺して俺が国王になるというものがあった。しかし、いざ目の前にするとバカなことを言っていたと過去の自分を哀れに思う。

 こんな状況になれば嫌でも自分の愚かさが身に染みる。


『なぜここに呼ばれたかわかるか?』


 王が聞くと俺たちの横に控えていた兵士が口を塞いでいたテープを剥がす。


「見当もつきません。俺たちが何をしたというのですか!」


 俺が敬語を使う相手なんて国王ぐらいだ。

 機嫌を損ねれば首を飛ばされかねん。

 不服だが形だけは敬っておく。


『そうか。ならまずはこれを見ろ』


 王は魔力で一枚の紙を操り、俺たちの顔面に貼り付けた。

 風魔法を使って飛ばしたのだろう。

 紙が地面に落ちてその内容が目に飛び込む。



【“元”Sランクパーティ『勝者の集い(ルーザーズ)(笑)』の現在】



 今朝の新聞だ。

 一面にでかでかと書かれた見出しを見て、俺たちが置かれた状況を理解した。


『貴様らはただのゴブリンを新種と言い張っていたそうだな。恥ずかしくないのか?』

「ち、違います! そんなはずはありません!」

『お前にはそう見えるのか? ただのゴブリン如きを捕獲するのに1時間もかかったそうじゃないか』


 どっと笑いが起こる。

 なんだ? この俺が今、笑われているのか?


『連れて来い』


 王が命じると兵士が檻に入れたゴブリンを持ってきた。

 昨日俺たちが捕まえたやつだ。


 檻から出されたゴブリンは間抜けなツラをしてのそのそと歩く。

 その脳天を王が貫いた。

 王の剣が速かったんじゃない。ゴブリンの動きが遅すぎたのだ。


『このノロマはお前たちにとって速かったのか?』


 再び爆笑が起こる。

 やめろ。俺は笑う側の人間だ。


『まあこの件は笑わせて貰ったから別にいい。これぐらいじゃ第一級犯罪になんてかけないさ』


 第一級犯罪と言えばこの国で二番目に重い罪だ。

 その上の特級になると死刑。一級は…………追放。


『ムヴィ、前に出ろ』


 王が言うとムヴィという男が俺たちの前に出た。


「お、お前は……」

『どうも。一昨日ぶりですね』


 そいつは俺たちが最初にカツアゲした奴だ。

 ルキシアが誘惑し、俺とハウザーがボコった奴。


「てめえチクったのか!!!」

『ボクは人に言ってませんよ。約束したじゃないですか』

「あ? じゃあなんで俺たちは捕まってんだよ!」

『うるさい人ですねぇ。まあ、バカには見てもらった方が速いですか』


 立場が逆転した。コイツ、こんなに堂々としてる奴だったか?


『映し出せ、≪映像(ピクチャ)≫』


 ムヴィが唱えると空間に映像が映し出された。

 その内容は俺たちがカツアゲをしている様子。

 三人で一方的にリンチにしている場面がこのムヴィという男の目線で撮影されている。


『ボクのユニークスキルは空間魔法の応用で、見たものを映像化するものです。ボクに戦闘能力はありませんが自分より強い者にもこうすれば勝てます』

「くそが!」

『ちゃんと言わないって約束は守りましたよ。まあ、言ったところで証拠は不十分ですからね。この能力のおかげであなたたちを裁けます』


 そう言って笑みを浮かべると無抵抗の俺の顔に靴底を擦り付けてきた。


『はぁ……。お前たちには期待していたんだがな。この様子だとSランクまで上り詰めたのも不正をしたとしか思えん。聞くところによるとお前たち如きが一人追放したようだな。そいつのおかげか? そいつはもうこの国にいないそうじゃないか。お前たちのせいでこの国は重要な戦力を失ったぞ。他の国に大きく後れを取るかもしれん』


「お、俺は悪くねえ! 全部あいつが悪いんだ! 俺はあいつにハメられただけの被害者なんだよ!」


『黙れ! 俺の顔に泥を塗るような冒険者はこの国にいらん』


 王はダン、と地面を踏みしめて立ち上がると俺たちに剣を向けた。

 俺はその目を知っている。

 自分も同じ目をしたことがあるからだ。


『お前たちを追放する』


 それを合図に、俺たちは意識を失った。









 次に目が覚めたのは知らない空。

 体の拘束は解かれていた。


「ってて……。お前ら、生きてるか?」

「なんとかね……」

「最悪っす……」


 周りを見渡しても何もない荒野。

 そこでようやく実感した。

 俺たちは、追放されたということを──

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