44話 Final fase
俺とフェンリィは冒険者を率いて作戦を開始した。
先程ルーナからも連絡があったのだが、協力してもらうことに成功したようだ。
あとはあのデカブツを破壊すれば全て終わる。
「みなさん! 恐れる必要はありませんよ! リクト様が絶対に助けてくれます!」
フェンリィが味方を鼓舞している。
本当は俺が冒険者のステータスを≪反転≫させて向上させればいいのだが俺の能力はできれば人に知られない方がいい。今までも敵を弱くすることはあってもフェンリィとルーナ以外の人間には使わなかった。でも本当にヤバくなったら隠さず使おう。それまでは俺が全力でみんなを守る。
「っしゃ、思いっきり行くぞ!」
「今なら何でもできる気がするぜ!」
「頼りにしてますリクト様!」
「きゃー! フェンリィ様ステキ!」
想像以上の信頼を勝ち取ったらしい。
フェンリィは女神のように崇められている。
「油断は禁物ですよ! みなさんの役割は住民を守ることです! 敵の注意を逸らしてください!」
こっちの陣営はダメージを与えるほどの火力が無いため撹乱がメイン。
住民を救出したり遠距離攻撃で自分たちに気を引かせたりしている。
本体を倒すのは向こうサイドの仕事だ。
「それでは作戦開始です! 他の冒険者さんに会ったら協力を頼んでください! 生きて会いましょうね!」
「「「おおおおおおお!」」」
町は広い。そのためここ以外にも冒険者は多い。
他の避難所で不安を抱えている一般人もいるはずだ。
そういう人たちの対応もこちらの陣営が行う。
「リクト様、私たちも行きますよ」
「了解、隊長」
「あ、その響きいいですね。えへへっ」
「訂正するわ」
こちら側の仕事は全て冒険者に任せ、俺たちは本体に向かって移動を始めた。
ルーナたちと一緒に巨大ロヴェッタを倒すためだ。
俺とフェンリィの仕事はこの町全ての指揮を執ること。
危険な場所があれば対処し、ルーナ達を支援するのが役目。
一番重要かもしれない。
◇◆◇◆◇◆
「フェンリィ! リクト!」
無事にルーナと合流することができた。
フェンリィ同様にひと悶着あっただろうが上手くいったようで何よりだ。
「やりましたねルーナ。ルーイさんもありがとうございます」
手短に再会の言葉を交わし、すぐさま戦闘に集中する。
目の前には巨大ロヴェッタがいて今も町を破壊しているのだ。
「これ、想定外だよな?」
俺はフェンリィに問う。
「はい。ルーイさん何が起きてるんですか?」
想定外というのはこの巨大ロボの動きだ。
話に聞いていたのは意思が無くただ無差別に攻撃するだけだと聞いた。
しかし今はビームを放ったり明らかに人を狙ったりしている。
いきなり装甲がばかっと開いたかと思ったら中から小型ロボットも出てきた。
そいつらはあまり強くないが数が多くて鬱陶しい。
「アストレシア家が完全に裏切った。中には僕たちの父がいて操縦している」
そう言えばこの巨体は誰かが操縦することで真価を発揮すると言っていた。
ロヴェッタを倒した今それはないと思っていたが甘くなかったか。
ルーナの父というと王宮に行ったとき足を負傷していたような気がする。
もう元気になったのか?
「それと完全に巨大ロヴェッタが起動したことにより核が中心の内部だけじゃなく他に四か所できた。エネルギー供給源になってるから壊せば弱体化できる、よっと!」
攻撃してくる小型ロボを破壊しながら説明した。
俺たちも対処しながら話を聞いている。
「なるほど、そうですか……」
ほんの数秒顎に手を添えるフェンリィ。
「ではまた二手に別れましょうか。外のことは全て私たちに任せてください。お二人には中から破壊してもらいたいのですが……」
すぐに作戦を立案し、チラッとルーナの方を見た。
「心配しなくても大丈夫よ。また後で会いましょ」
「そうですね、頼みますルーナ」
この二人には俺とは違う信頼関係がある。
二人が大丈夫と言えば俺の心配することはない。
作戦は俺とフェンリィが外を担当し、ルーナとルーイが中に侵入して主犯であるジークを倒す。
他の冒険者はすでに各地で戦い始めていた。
「これがファイナルフェイズです。悪は全て裁きましょう」
兄妹たちはフェンリィに合わせ、こぶしを突き上げ「おー!」と言う。
「ほらリクト様も」
「え……ああ。おー」
なんか緊張感無いな。
まあいいか。
「ところでどうやって中に侵入するんだ?」
見たところそんな場所はない。
こういう人型ロボットは上から乗り込むような気がするがこいつは30mぐらいある。
登るのだろうか。
「決まってるでしょ」
そんな俺の疑問は置き去りになる。
いつの間にかルーナとルーイは巨大ロヴェッタに突っ込んでいた。
不安定な足の部分をあっという間に駆け上がり、小型ロボが出てくる時に開かれた部分から侵入した。
敵が出てくるなら中に繋がっているという考えか。
きっとあそこにはうじゃうじゃロボットがいるはず。
だがその穴からロボットが現れることはなくなった。全部倒したのだろう。
「俺たちも始めるか。両肩と両足の核を破壊すればいんだよな」
「そうです。両足は冒険者の皆さんが攻略してくれるので私たちは両肩を破壊しましょう」
核があるのは人間でいう膝と肩の部分の計四か所。
この巨体の膝は8mぐらいの高さにある。
地上からでは届かないがロボット故か体表がごつごつしていて足場になる。
そのためルーナ達のように駆け上がるか近くの建物を利用すれば攻撃が可能だ。
既に冒険者たちが二手に分かれて両足を狙い始めていた。
これだけ上級冒険者が集まっていればそんなに心配はいらないだろう。
「どうやって上まで行く? って言っても方法は一つか」
肩の位置は25mほどある。
ちまちま登っていては時間が足りない。
「ついでに私たちにヘイトを集中させて攻撃させましょう。リクト様なら簡単ですよね」
にこっと笑って俺の背中に乗ってきた。
今俺はフェンリィをおんぶしている。
「今日だけだぞ」
「ひゃひゃ」
変な声を出して胸を押し付けてきやがった。
知能が上がってるはずなのに頭がおかしくなった様だ。
「振り落とすぞ」
「失礼しました」
「まあいいや、ちゃんと捕まってろよ。≪反転≫」
俺は重力を反転させ、宙に浮いた。
能力を発動したり解除したりと繰り返せばその場で浮くことも可能。
移動できないのが難点だ。
けどこれで十分。あっという間に高度が上がる。
「見てください人がアリさんみたいに小さいですよ! いい眺めですね」
「ん? 確かに遠くの山とか海はいい景色だな」
いい眺めってそういう意味だよな?
楽しそうだからいいか。
『なんだ貴様らあああ!!!』
巨大ロヴェッタの頭部と同じ高さに達すると中にいる奴が俺たちに吠えてきた。
本当に操縦してる奴がいたらしい。
『人間如きが盾突くとはおこがましい。目にもの見せてくれるわ!』
すると巨大な口ががばっと開いた。
もしかしなくても何か飛んでくる。
『死ねええええ! ≪破壊光線≫』
一瞬にしてエネルギーが蓄積されて視界が真っ白になった。
それほど莫大な光線。さっき町に撃ってたビームもこれだろう。
町民にとって一番危険な技だ。食らったら骨も残らず消滅するだろう。
だからこそこの技を引き出し、最初に攻略する必要があった。
「単細胞はわかりやすくて助かる」
俺は右手をそっと前に出し、予想通り過ぎる展開に笑みを浮かべた。
「≪反転≫」
俺に向けて放たれた光線は全く同じ威力で方向だけ反転した。
それによりバカみたいに大きい頭部が吹き飛んだ。
『な、なにをしたああああ!!!』
操縦者は頭部にいたわけではないらしい。
だがこれで≪破壊光線≫は封じた。
俺たちの火力ではこのSSSランクの耐久を誇る相手にダメージを与えることは難しい。
ならそれに相応する攻撃をぶつけてやればいい。
「お前首洗って待ってろよ。すぐに俺の仲間がお前を裁く」
『おのれええええええ!』
右腕全力の大振りが俺たちを襲ってきた。
操縦者なしの状態に比べ格段に速い攻撃。
しかし、その攻撃は虚空を掴むことになる。
「フェンリィ」
「任せてください。ミーちゃん!」
【可変式弾丸銃】が変形し、ワイヤー銃へと姿を変えた。
すると銃口からアンカーが射出され、猛スピードで巨大ロヴェッタの肩へと引っかかる。
「そんなとこ持ってると危ないぞ。もっと寄れ」
「ひゃっ、ひゃい!」
俺はフェンリィから銃を受け取り、両手でしっかりと握った。
その分落ちないようにちゃんと捕まってろって意味だ。
さっきより数倍背中が熱い。
「きゃああああああああ!!!」
ワイヤーが勢いよく巻き戻り、俺たちは風のように空を駆けた。
無事に目的地まで到着。
「死ぬかと思いました。でも幸せです」
「そうか。もうくっつかなくても大丈夫だぞ」
あとは核を破壊するだけだ。
ここまで全て作戦通り。





