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4話 少女を助ける

「わたくしは魔王軍幹部が一人、蛇神ベルージャ! わたくしを邪魔する者は殺します!」


 絶叫し、物凄い勢いで俺に襲い掛かってくる。


「食らいなさい! ≪死毒(デスポイズン)≫!」


 頭から生えているヘビと自分自身の口から毒の弾を飛ばしてきた。その数はざっと100を超えている。


「きったねえな、邪魔だ!」

「なっ!?」


 その攻撃を、俺は木の棒で虫を振り払うが如く一振りで全て弾き落とした。

 驚くのも無理はないだろう。こんな芸当ができる者などそうそういない。生き物というのは圧倒的な強さを前にした時、思考が停止するからな。


「……ま、まあ少しはやるようですね。でもわたくしの得意は魔法攻撃ではなく物理攻撃なのですよ! 今までにも何人もの勇者を自称するひよっこ共をこの体で絞め殺してあげたのです!」


 コイツの物理攻撃力はSSランクだった。確かに一度捕まったら体中の骨が砕けて人間の形を保てなくなるだろう。でもそれはそこら辺の冒険者ならの話だ。


「死になさい!」


 ベルージャが叫ぶと地面に毒を吐き、滑るようにして俺に接近してきた。長い舌を出し、ヘビのように「シー」と威嚇してくる。そこには美しさの欠片もない。


「よく喋るなお前は。舌でも噛み千切って死ね」


≪反転≫


──────────――

 名称:ベルージャ

 体力:S  →  F

 物攻:SS →  G

 物防:A  →  E

 魔攻:S  →  F

 魔防:A  →  E

 魔力:S  →  F

 俊敏:S  →  F

──────────――


「ぬわっ!?」


 ドゴーーーーーーン!!!!!


 俺が能力を発動すると、ベルージャはバランスを崩して頭から壁に突っ込んだ。

 無理もない。高速で移動する中、いきなり全てのステータスが急激に下がったのだから。きっと体がついていけなくなったのだろう。


「滑稽だな」


 俺は木の棒を振り下ろす──と思ったが既に絶命していた。

 かなり派手に突っ込んだから衝撃で押し潰されたか、ショック死でもしたのだろう。


 こんな感じで、俺が本気を出せば魔王軍幹部だって一人で倒せる。元いたパーティーでも二体ほど幹部を葬ったのだが、俺の能力無しだったらあいつらは今頃生きたまま玩具にでもされていただろう。


 あいつらはこの先幹部に会ったらどうするんだろう。

 少し気になるがまあいいか。




「さて、大丈夫?」


 俺は縛られて吊るされたままの少女に近づく。

 年は同じくらいだろうか。人間の女の子だ。


 近くで見ると透き通るような白い肌。サファイヤの様な瞳。銀色の美しい髪を肩まで伸ばした美少女だった。俺より少し背が低く華奢な体をしているが、その分出るところは出ている。顔も整っていて誰が見ても可愛いと言うだろう。


 縄を解いてやり、その場に座らせる。


「えっと、その……ありがとうございました」


 少女はお礼を言って、もじもじと体を隠しながら俯いた。


「いいって。あ、これ着なよ」


 俺は泥一つついていないローブ(昨日の酒はかかっているが)を少女に羽織らせてやる。なぜなら服がボロボロでほとんど服の機能を果たしていなかったからだ。少々目のやり場に困っていた。


「ありがとうございます。本当になんて言ったらいいか……。その、私にできることだったら何でもします。いえ、させてください!」


 少女はバッと顔を上げて俺に詰め寄ってきた。

 俺のすぐ目の前に顔があり、体は汚れているのにいい匂いがする。

 てか近いよ。


「ちょっと一回落ち着こうか。別にお礼なんてしなくていいよ」

「はっ、やだ私ったらごめんなさい急に。こんな汚い女嫌ですよね」

「そんなことないって。君は綺麗で可愛らしいよ」

「ふぇ? ふぇええええーーーー!?」


 語彙を失ってしまったのだろうか。

 少女はわたわたして顔を隠すと、恥ずかしそうに下を向いた。

 白い肌と銀髪のせいか真っ赤にした顔がよく目立つ。

 俺は落ち着きを取り戻すのを待ってから話を進めた。


「まだ名前を聞いてなかったね。俺はリクト。一応、冒険者かな?」


 今は追放されて無職だけどね。


「リクト様ですね。私はフェンリィと言います。助けてくれて本当にありがとうございました」


 フェンリィは地面に額が着くほど深々と頭を下げた。

 礼儀正しくて素直な子だ。


「もういいってそういうのは。それと俺なんかを様付けする必要なんてないよ。呼び捨てで構わない」


 俺には恩を着せて従わせるなんて趣味はない。

 対等な普通の関係でいいんだ。


「いえいえとんでもないです! 恩人様を呼び捨てだなんてできません。私が呼びたいからそうさせてください。ダメ……ですか?」


 下から見上げるようにして聞いてきた。

 小動物みたいで庇護欲を掻き立てられる。


「そこまで言うなら好きに呼んでくれればいいよ」


 するとフェンリィは嬉しそうに笑って「リクト様」と連呼した。「なんだ」と聞き返すと特に何も言わずに、また「リクト様」と言ってくる。どうやら懐かれてしまったらしい。


「ところでフェンリィはなんでこんなところにいたんだ?」


 どうしてここまで迷い込み、今まで生きていたのだろうか。見た感じフェンリィは戦闘が出来るタイプではない。というか全く出来ない。見ればわかる。


──────────

 名前:フェンリィ

 体力:G

 物攻:G

 物防:G

 魔攻:G

 魔防:G

 魔力:G

 俊敏:G

──────────


 全ステータスが底辺なのだ。とてもじゃないが外に出ていいようなステータスじゃない。おうちで大人しくおままごとをしていた方がいいだろう。


「見てわかる通り私は全ステータスが最低値なんですよね」


 悲しそうな声でそう言った。


「俺の指輪が壊れてるわけじゃないんだ。でも、だったらどうしてこんなところに?」

「えっと、話すと少し長くなるかもですがいいですか?」


 この話には興味がある。俺は首肯して話を聞くことにした。

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