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38話 呪いの真実

「さあ、知っていることを全部話してもらおう」


 俺は核だけになって喋る以外何もできなくなったロヴェッタに話しかけた。


『ふん! あなたに言うことなんて何もないわ。わたくしは魔王様に忠誠を誓ってるもの。わたくしに命令していいのは魔王様だけよ』


 落い詰められてもさっきと態度は変わらんか。

 まあこっちの方がやりやすい。


「≪反転(インヴァース)≫」


 これはあべこべにする能力。

 喋りたくないことも喋らせることができる。


「俺の命令を聞け」

『わかったわ。チッ』


 意識を乗っ取るわけではないので反抗はしてくるが十分だ。


「魔王はどこにいる」

『知らないわ。わたくしが知りたいくらい』


 どうやら本当のようだ。

 そういえば以前、幹部に聞いた時も知らないと言っていたな。

 部下にも素性を明かしていないのか?

 質問を変えよう。


「ルーイに能力をかけたのはお前だな?」

『そうよ、わたくしがルーイ君のルーナちゃんを想う気持ちをひっくり返したわ』


 やはりそうだったか。

 おそらくルーナを大事にしていた分だけ突き放しているのだろう。

 もしかしたら俺にかけられている呪いと似ているかもしれない。


「なぜそんなことをした。わざわざルーナとルーイを引き離さなくてもやりようはあったろ」


 ルーイは徐々におかしくなっていったらしい。

 だがロヴェッタには≪不法侵入(ハッキング)≫がある。

 そんなことをわざわざしなくても一瞬で言うことを聞かせられるはず。

 俺の問いに対してロヴェッタは、



『それはあの子たちの愛があまりにも深かったからよ』



 狂ったように語り出した。


『わたくしは知りたいの! 愛が突然ひっくり返ったらどうなるんだろうって! ルーイ君は自分の気持ちに打ち勝つことができるのか。ルーナちゃんはそれを見てどう思うのか。わたくしは魔王様を愛しているわ。そしてわたくしも魔王様に愛されたい。でも愛ってなんなのかしら。感情でするものなの? 本能でするものなの? わたくしのこれも本当に愛なの? もしかしたらただのプログラムかもしれないわ。それを知るために実験したのよ。あの二人の愛がどう歪んでいくのかをね!』


 あまりの勢いに圧倒された。

 コイツが言ってることは何一つ理解できない。

 だがこれだけわかる。


「そんな下らないことのためにルーナを泣かせたのか」


『んふっ、おかげでいい収穫だったわ。愛、それか好きでもいいけど、その反対って何かわかる? 嫌いとか無関心とかそんな話じゃないわよ』


 音声だけでもコイツがどんな表情で話しているのか伝わってくる。

 どうやら立場がわかってないようだ。


「悪いが遊びに付き合ってる暇はない。さっさと話せ」


 そう言って刀を突きつける。


『ふふっ、連れないわね。その答えは凄くシンプル。”殺意”よ』


 ”殺意”。

 俺はその単語を聞いてハッとした。

 フリーズした俺の脳にロヴェッタは畳み掛ける。


『愛してる、好きってことは死んでほしくないって事でしょ。じゃあその反対は殺したいほど憎くて嫌いってことになるじゃない?』


 俺の中で最悪のイメージ浮かび上がっていく。

 もしもだ、もしもこの考えが全て正しいとしたら……。


『あら? 今気づいたけどあなたもしかして……同じ呪いにかかってる? でもわたくしがかけた覚えはないわね。てことは……魔王様? んふふっ、ああら可哀想! そんなの解けっこないじゃない! 魔王様に勝つなんて絶対あり得ないもの!!』


 俺の中の最悪のイメージが構築された。

 心の奥底で動き始めているこの邪悪な感情はつまり──


「リクト様?」


 フェンリィに手を握られた。

 俺は咄嗟にその手を強く払う。

 バチンと音を立てて白い手に赤い跡がついた。


「……悪い」


 俺の体温が急激に下がっていくのを感じる。

 ほとんど動かずコイツを圧倒していたのに汗が止まらない。


『え? もしかしてあなたこの子のこと好きなの!? あら大変じゃない殺しちゃうの? ぐちゃぐちゃにしちゃうわけ? ねえ、どうやって殺すか教えて頂戴!』


 俺を嘲笑うロヴェッタ。

 これではどちらが追い詰められているのかわからない。

 気色悪い音声が脳を巡る。


『でももしかしたら大丈夫じゃない? ルーイ君もルーナちゃん殺せなかったみたいだし。まあ今は抑えきれなくなって殺しちゃってるかもね。わたくしも殺した後ルーイ君がどんな顔するのか見てみたいわ。愛って本当に素晴らしいわね!』


 落ち着け。

 今までと何ら変わりない。

 まだ俺には時間が残されている。

 それまでにいくらでも対応できる。


 それにまだ呪いが発動したと決まったわけでもない。

 だってそうだろ?

 俺はこの子のことは何とも思っていない。


「そろそろ黙れよ」

『あら動揺しちゃった? そう言えば聞いたわよ、あなたほんと──』


 バキッッッ!!!


 刀を核に突き刺し、粉々に砕いた。

 バチっと火花が散る。


『わたくしを……ザ、倒しても、ザザー……終わらない……わ……』


 やかましいノイズ交じりの音声は静かに消えていった。

 これで目的は達成‥‥‥したんだよな?

 あとは残党を殺してルーナの様子を見に行くだけだ。

 いや、コイツを殺したからルーイの呪いは解けたのか?



「リクト様……」


 俺があれこれ考えていると暗い顔したフェンリィが手を抑えて俺の前に立った。


「ごめん、叩いたりして悪かった。俺はもう大丈夫だ」


 そう言って赤く腫れた手に触れる。

 やはりなんともない。

 今もこの子に触れて喋っていても何も感じない。

 きっと他人から言われて変に意識してしまっただけだ。


「謝るのは私です。私、こんなに大変なことだって考えもしませんでした。リクト様は真剣に悩んでたのに私はバカみたいに……」

「フェンリィは何も気にするな。だからそんなに泣かないでくれ」


 これは俺の問題だ。

 俺の都合のせいでこの子が責任を感じる必要はない。


「で、でもっ──」


 俺はそれに続く言葉を言わせなかった。

 頭にポンと手を置き、髪を撫でる。


「まったく、お前は自意識過剰だぞ。≪反転(リワインド)≫」


 簡単に言うと時間反転。

 逆再生のように今のフェンリィの記憶からロヴェッタがあの話をする前まで記憶を巻き戻した。

 この話を知っている必要はない。全部忘れてしまえ。



「あれ? 私今何してましたっけ。えーっと、んー……あ、そうだ! リクト様、あのロボットの人はどこに行っちゃったんですか?」


 いつもみたいにキョトンとした顔で訊いてきた。

 いつ見てもパッチリしててキラキラした目だ。


「もう倒したよ」

「ホントですか! さすがリクト様!!」


 そう言って俺に飛びついてきた。

 うん、やはり何も感じない。


「よし。じゃあ伝えてた通り残りの奴らを全部片づけるぞ」

「そうでした。早く終わらせてルーナを迎えに行きましょう」


 銃を持ち、集中モードに入るフェンリィ。

 一度時計台に上って戦況を確認した。

 ここからは町の様子を一望できる。


 町は半分ぐらいの建物が崩れていて酷い有様だ。

 ギルドも全焼してるしモンスターの大群が人を襲っているのもよく見える。

 俺たちが知らないところでも多くのバトルが繰り広げられていただろう。

 それを今から全て終わらせる。


「フェンリィは抵抗感とかないのか?」


 フェンリィもこの町の出身で辛い思いをしてきただろう。

 そんなこの子が今何を思っているのか。


「そんなものありませんよ。リクト様も言ってたじゃないですか。救える命は救うって。私もできれば誰にも死んでほしくありません。それにもう昔のことはいいんです。ルーナとも友達になれて、なによりリクト様に出会えたので」


 にっこり微笑むフェンリィ。

 その姿は可憐で美しいと思ってしまう。


「そっか。じゃあ始めよう」


 俺とフェンリィが揃ってこの場所にいなければこの作戦は使えない。

 その理由はいくつかある。

 まず一つは俺の能力が視認している相手にしか効果が無いこと。


「≪反転≫」


 俺はこの町にいる平均(Cランク)以上のステータスを持つ全てのモンスターを弱体化させた。

 これで全モンスターが最高でもCランクの雑魚になった。

 こうすれば後は簡単。


「いけるか?」

「発射準備完了です」


 フェンリィがこれから撃つ技は溜めに時間がかかりすぎる。

 それもそのはず、この町のモンスター全てを攻撃するのだから。

 隙が出来て他のモンスターに襲われる可能性があるため二人一緒じゃなければ実行できないのだ。


「参ります」


 【可変式弾丸銃(バリアブルガン)】は銃口がいくつもついた巨大な銃へと姿を変えていた。

 その無数の銃口にエネルギーが蓄積されていく。

 それを上に向け、ドドドドドっと物凄い勢いで連射した。


 その技は一度見たことがある。

 初めてフェンリィがこの武器を使った時だ。

 だがその時と比べて威力も数も桁違い。

 町中を無数の弾丸が降り注いだ。


「今日は雷警報ですね」



襲撃雷降(アサルトライフル)



「100、200、300。……800、1000」


 フェンリィが呟く。

 聞かなくてもその数字が何を意味しているかは簡単にわかった。


「よかったです。消えた音に人間のものはありませんでした」


 あれだけの弾数をモンスターにのみ当てて死滅させたのだ。

 もう何でもできてしまいそうな気がする。


「さすがだな。よくやった」

「私にもできないことぐらいありますよ。あの四天王には手も足も出ませんでしたから。リクト様には敵わないです」


 こんなものを見せられた後だと自信なくなるがフェンリィが言うならきっとそうだろう。

 よし、これであとはルーナを迎えに行くだけだ。


「行こうか。帰って三人でおばちゃんのところに──」



 ドガアアアアアアアアン!!!



 突如地面が揺れた。

 いや、地面だけではない。

 町ごと全てが揺れた。


「フェンリィ! 俺に掴まれ!」


 俺たちのいた時計塔も崩れ落ちた。

 フェンリィを抱きかかえ、≪反転(グラビティ)≫による重力操作でなんとか被害を最小限に抑える。


「くっそ、あの野郎。まだ終わらないってそういうことかよ」


 町は一瞬にして陰に包まれた。

 俺はあまりの予想外すぎる展開に笑うことしかできない。


「ははっ、これじゃあ能力がどうこうってあんまり関係ないな。どこにこんなもん隠してたんだよ」


 俺たちが大きく見上げるその物体。

 王宮があった場所から突如ぶち破って現れたその巨大兵器。

 それは四天王ロヴェッタの最終形態。

 超大型ロボットのロヴェッタだ。


────────────

 名称:ロヴェッタ(Final form)

 体力:SSS

 物攻:SS

 物防:SSS

 魔攻:SS

 魔防:SSS

 魔力:SSS

 俊敏:SS

────────────


 こんなステータス見たことないがハッタリじゃないだろう。

 それだけの絶望感がある。

 さて、どうやって倒すか……。


(ザザー、……ザザ)


 通信機に反応があった。

 ルーナからだ。


「ルーナ無事か!? そっちはどうなった?」

(助けて、兄さまが……。兄さまが死んじゃう!!!)


 ルーナは無事だ。

 だが、兄さまが死ぬ?

 どういうことだ。


「待ってろ、すぐ行く」


 事態は一刻を争う。

 俺はフェンリィと共に全速力でルーナの元へ向かった。

 戦いは最終局面へと移っていく。

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