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2話 陰の立役者

 酒場の外に出ても元パーティーメンバーの哄笑は絶えなかった。

 どうやら俺を追放した記念に一杯やるらしい。


「いやーあいつの追放って言われた時の顔は最高でしたね!」

「まったくだ。今夜は酒がうまい!」

「ホントいいもん見れたわ。私、一回人間をぶん殴って見たかったのよね。モンスターじゃ味わえない快感が堪らなかったわ。そういう意味じゃ最後くらいは役に立ったわね」


 俺の悪口を肴に盛り上がっている。

 どうやらルキシアの本性はこっちらしい。

 なんだ人を殴る快感が堪らないって。

 ただのサイコパスじゃないか。


「それはさすがに酷いっしょルキシアちゃーん。一番仲良くしてたじゃないっすか」


「ハウザーだって楽しそうに殴ってたじゃない。それに仲良くしてたのはあんたたちにじゃんけんで負けたから仕方なくよ。それなのにちょっと優しくしただけで舞い上がっちゃって、本当にバカな男よ」


「まあ何はともあれ、これでお荷物は排除できた。こっからは魔王討伐まで一気に行くぞ。報酬は三人で山分けな」


 なるほど。

 報酬の取り分を多くするという意味もあったのか。

 って、分析してる場合じゃないな。理不尽すぎる。


「今日の任務も楽勝でしたよね。あんなのに勝てない奴が大半だなんて信じられないっすよ」


「あのゴミはいるだけの存在だったから実質俺らは3人でSランクまで辿り着いたことになるな。勇者パーティーになるのはこのアーノルド様率いる勝者の集い(ウィナーズ)だ!」


「あんな雑魚の話はいいから早く続き食べるわよ」


 まさか本当に自分たちが強いとでも思っているのか? 残念だが俺のいないパーティでは魔王どころか幹部の手先程度にも勝てないだろう。このままだと弱者の集い(ルーザーズ)になるぞ。


「ぷはーっ! 明日からは忙しくなるぞ。今日は思いっきり飲め! あいつの置いていった金を使うとしよう!」

「オレはどこまでもアーノルドさんについていきます!」

「魔王を倒したら下僕でもたくさん買おうかしら。くふふっ、楽しみだわぁ!」

 

 こんなクズの集まりだったとは全然気づかなかった。

 むしろ追放されてよかったかもしれない。


 でも参ったな。今の俺は有り金どころか装備もろくに持っていない。しかし今から取りに戻るのも気が引ける。それに、いつまでもここで立ち聞きしているわけにもいかないだろう。


 さてどうするか……。

 よし、とりあえず近くの町でも目指すか!

 今後の方針も決める必要があるしまずは拠点探しだ。


「……じゃあな」


 三人の高笑いを背中で聞きながら、俺は暗い夜道を一人で歩き始めた。




◇◆◇◆◇◆




 追放されてしまったが俺はパーティーが気持ちよく勝てるように支援していた。俺がその気になれば一人でもSランクモンスターなんて瞬殺できる。


 でもそれじゃつまらないし仲間から嫉妬されたり反感を買ったりしたかもしれない。強すぎる者の宿命というやつだ。俺はみんなでワイワイやってる雰囲気が好きだったから陰に徹して仲間を立てていた。


 ──という舐めプをしていたわけではない。俺は出し惜しみせず全力で味方をバックアップしていた。そのため僅か三か月でSランクまで昇格できたのだ。これは最速記録らしい。


 ではなぜこの能力を味方に話さなかったのか。

 いや、話せなかったのか。


 それはこの能力が魔王軍の使う能力と似ているからだ。

 誰しも隠し事の一つや二つあるだろうが、俺の場合はこの能力だった。


 公に知られれば騒ぎを起こされる心配もある。気味悪がられて追放される可能性はあると思っていたが、無能扱いされるとは思わなかった……。仲間ならいいかと思ったが、信じてもらえず追放された……。



 俺の能力は≪反転≫。簡単に言うと敵のステータスをひっくり返すものだ。今日倒したカタストロフドラゴンはSランクのモンスターだったのだが、俺の能力を使えばFランクのモンスターと同レベルになる。


 Fランクのモンスターとはせいぜいゴブリン程度だ。つまりあいつらは三人でゴブリンをボコボコにして喜んでいたことになる。あいつらも少しはやるが頑張ってもAランクのモンスターをようやく倒せるレベルだろう。


 さっきあいつらに殴られたり蹴られたりした時もこの能力を使い、あいつらの攻撃力を弱めた。ステータスの反転以外にも、こういう使い方ができるのだ。


 あいつら容赦なく全力で殴ってきたからな。あいつら自身には手ごたえがあったのかもしれないが、実際はハエが止まった程度の感覚しかない。油断したため一発貰ってナポリタンを吐いたがほぼ無傷だ。



 それと、俺は全ステータスが平均値なのだが、この能力があれば問題ではない。俺より強い敵には能力をかけて俺より弱くする。もとから俺より弱いならそのまま捻り潰す。つまりほぼ確実にタイマンで勝てることになる。


 でも俺の魔力がゼロってのは本当で、それについては悩みどころ。やっぱり魔法には憧れるし、魔力ゼロなんて奴は多分いない。追放された理由の一つだ。


 まあその代わりこの能力があるからいいけどね。

 ちなみに俺のステータスはこんな感じだ。


─────────

 名前:リクト

 体力:C

 物攻:C

 物防:C

 魔攻:-

 魔防:C

 魔力:-

 俊敏:C

─────────


 ステータスのランクは九段階に分かれている。

 SS、S、A、B、C、D、E、F、Gといった具合だ。

 Gランクはその辺の虫レベルでSSはレベルが違う。

 それなのにあいつらだけでSランクのクエストにいけるのだろうか。


 いや、過ぎたことを考えるのはよそう。

 少し心配だが俺にはもう関係ないからな。


「えーっと、この辺りでいいか」


 俺は大きな木に背中を預け、静かに目を瞑った。

 久しぶりの一人の夜。でも今日はぐっすり眠れそうだ。





 あ、そういえば俺は一つ決めたことがある。

 きっと他にも俺と同じようにパーティーを追放された者がいる。

 俺とは違って本当に辛い思いをしているだろう。

 そいつらと組んで俺が魔王を倒す。

 この世に無能な者などいないと証明してやろう。

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