12話【追放サイド】パーティーの崩壊
俺たちは大王ムカデからなんとか逃げきった。
しかしその後も逃げる先々でモンスターと遭遇。
そのどれもが一度は倒したことのある敵だった。
なのに、全く歯が立たない。
俺たちはボコボコにされたのだ。
逃げているうちにどんどん迷い込み、どこにいるのかわからなくなってしまった。
「おいどういうことだ! なんで俺がこんな目にあわなきゃならないんだよ! お前たちもちょっとは役に立て! この出来損ないのゴミクズ共が!」
俺は怒鳴り声を上げた。
もちろんお荷物のリクト相手にではない。
あいつはもう追放した。だからここにはいない。
残っているのは優秀な俺。
そしてハウザー、ルキシアの三人だ。
なのになぜこんなことに……。
「オレたちはいつも通り頑張ってますよ! アーノルドさんが悪いんじゃないですか」
「そうよ、使えないのはあんたでしょ。ビービー泣き喚いちゃって、あー恥ずかしい」
俺が悪いってのか? ふざけるな。
雑魚の分際で俺にたてつきやがって。
さっきから敬意も感じられん。
「チッ。テメェらの援護が足りねえからだ! まずハウザー、お前の指示はデタラメなんだよ。どんどん迷い込むしモンスターの行動だって全然違うじゃないか!」
「オレの責任にするなんてひどいっすよ。オレは提案してるだけで判断はあんたがしてるじゃないですか!」
「あ!? やんのかテメェ、俺のせいだってのか!」
くそ、そういえば今まではリクトの野郎が変なアドバイス出してたな。あいつのおかげだったってのか? いや、ありえない。
「おいルキシア! お前トラップも見抜けねえし戦いもしねえし使えねえんだよ。バフも全然効果ないし俺の腕だって治ってねえじゃねえか!」
「はぁ? あんたが脆すぎんのよ。その筋肉は飾りなわけ? 私、見かけだけで強がってる男ってほんと無理」
「あ!? テメェひん剥いて餌にするぞ!」
くそ、そういやモンスターと出くわすたびにリクトの野郎がなんか呟いてたな。遊んでんのかと思ったが奴が何かしてたとでもいうのか?
追放した時にもなんかほざいてたな。
あいつが敵を弱体化させていたのがそんなに役に立っていたのか?
この俺の目が節穴だったってのか?
つまり、この俺様は大して強くもないイキリ野郎だってのか?
いや、そんなはずはない。
あいつは昔から何をやっても目立たず平凡な奴だった。
あいつにそんな凄い能力なんてあるはずねえ。
今までだってこの俺が凄いからここまで来れたんだ。
「つーかさー。私たちがこんな目にあってんのって今回が初めてでしょ? ってことはリクトの奴がいなくなってからじゃん。あんたがあいつを追放したのが悪いんじゃないの?」
「あーそれオレも思ってたっす。リクトくんはたまに意見くれてたんすよ。あんたみたいな『無能』とは違って。それにあの時リクトくんはユニークスキルがどうとかって話してましたよね。それなのにあんたが構わず追放するから」
ルキシアとハウザーが俺に迫ってきた。
明らかにいつもと様子が違う。
「はっ、お前らだって喜んで追放してたじゃねーか。俺のせいなんてありえねえだろ。お前らが悪いんだよ!」
「なに逆ギレ!? うーわホント最低」
「最初に言い出したのはあんたじゃないすか。もうついてけないっす」
なんだコイツら。ゴミの分際で口答えしやがって。
そんなに気に入らねえならコイツらも──
「ルキシアちゃん。オレが今何考えてるかわかりますか?」
「奇遇ね。私も同じこと考えてるわよ」
二人と視線が交わった。
その瞳の色はさっきまでとは明らかに異なる。
だが俺はその目を知っている。その目はまるで──
「「追放しよう」」
二人はそう呟くと先日リクトを追放した目で俺を見てきた。
それはまるで弱者を見るような目だ。
「ま、待て、落ち着くんだ、少し言い過ぎた。てかここは俺のパーティーだ。勝手に抜けるなんて許さないぞ!」
俺は動揺して声を震わせてしまう。
「だったら出てくわ。生きて帰れたらね」
「オレもそれまでは協力してあげますよ。生きて帰るまでは」
それだけ言うと二人は全力で走り始めた。
その瞬間、
「シャアアアアアアア!!!」
「な、なんだ!? うわああああああ!!!」
振り向くと巨大な蛇と目が合った。俺の体は一瞬硬直する。
しかし本能が死を悟り、反射で駆けだした。
──────────
名称:デス・サーペント
体力:S
物攻:S
物防:S
魔攻:A
魔防:S
魔力:B
俊敏:A
──────────
「くそ! こんなところで死んでたまるか! 死にたくねえええええええ!!!」
俺もハウザーとルキシアの後を追って必死に走る。
あいつら絶対許さねえ。俺に歯向かいやがって。ぶっ殺してやる。
「待てやオラー!!!」
脚には自信があるためすぐに追いつけた。
このまま追い抜いてコイツらを餌にしてやるぜ。
「きゃっ!!!」
と思ったら目の前でルキシアが盛大に転んだ。
「うわあ!!!」
連鎖的にハウザーも巻き添えを食らう。
「ま、待って、置いてかないで! 助けてよ!」
「アーノルドさん! 待ってください!」
二人とも惨めったらしく命乞いしてきた。
もちろん俺は迷わず見捨てる。
「はっ! ざまあねえな! 俺は最初っからいつかお前らも捨てる予定だったんだよ! それが今になっただけだ。じゃあな!」
俺は二人の背中を踏みつけて颯爽と逃げる。
すると光が見えた。
「お! あれは出口じゃねえか! よっしゃついてるぜ!」
ここまでくれば大丈夫だろう。散々走り回ったせいで最初の地点まで戻ってきていたらしい。どうやら俺は神に愛されているようだ。このまま一人で生き延びてもっと有能な仲間を集めよう。あんな無能共とはおさらばだ。
俺は一度振り返り、元仲間を確認する。
最後くらいは見届けてやろうってこった。
二人とも襲われてるな、よしよし。
「一応礼は言っておこう。ありがとな! お前らの死は無駄にしな──」
バゴン!!!
無駄にしない。そう言い終えることはできなかった。なぜなら俺は壁にめり込んだからだ。何が起きたのか理解できなかった。
「ってて、なんだ……よ。うわああああああ!!!」
長年冒険者をやっていればわかる。こいつは本当にヤバいと直感的にわかった。全身から汗が噴き出る。鼓動が加速する。間違いなく今まで出会ってきたどのモンスターよりも強い。
──────────
名称:グリム・リッパー
体力:A
物攻:SS
物防:S
魔攻:A
魔防:S
魔力:A
俊敏:A
──────────
「や、やめてくれ、頼む。助けてくれ、なんでもする! ひっ、ひいいいいいいいい!!!」
目の前にいたのは『死神』と呼ばれる黒いローブを纏ったガイコツだった。
「死んで楽になるがいい」
そう言って大鎌を俺の喉元に当ててきた。
首筋を熱い液体が伝う。
「あ、ああ、あが、あああがが」
人語を操る魔物はレベルが違う。知能を持ち、学習することが出来るからだ。
俺は恐怖でまともに喋れなくなった。手足は痙攣し、体は暑いのに寒い。
「死ね」
大鎌が振り上げられた。
俺はそれをボンヤリと眺める。
そして、ゆっくりと目を閉じた──





