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【09】チートな釣りと串焼き魚泥棒の緑色の子供

~ここまでのあらすじ~


この話の主人公であるマサシが異世界に来て最初に始めたことは、食料となる植物の採取であった。

飢餓状態でここまで来たのだから、それは致し方のないことだった。

しかし、この世界は彼が元居た世界とは違う理によって成り立っているのである。

彼は、自分が確保した食料を盗まれるという経験を生まれて初めて味わったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『』は手紙や念話の表現に使おうかと思います。

(人の心や思いや意思が表現された文章や、電話で通話している相手の話し声、念話で送られてきた思念等。)

{}は“ナレーション”や作者の自分ツッコミなどです。

[]は“文字表記”の表現です。

(看板やお知らせ、新聞などの事務的な文章等。)

“”は名称などの表現にしようかと。

まあよい、まだ慌てるような時間ではない、うろたえるようなことなど何もないのだ。

そう自分に言い聞かせる。


実は、無限収納“黒靄くろもや”にはまだまだ沢山キノコも串もあるのだ。大したダメージではない。

トリュフを3個ほど串にさし焼き始める、汁気が出てきたら食卓塩を一振りかける。

食卓塩の小瓶は、新品で買ってきたものの、キャンプでは使わず仕舞いだった。

3日間レトルトカレーだけだったのだから、当然ともいえる。

この小瓶が空になる前に塩を確保することも、今後のタスクの中に入り始めている。

トリュフの焼ける香ばしい匂いを楽しむ余裕もなくあたりを警戒するので、食の楽しみも半減するというものだ。

焼きあがったキノコを食べる。それなりに食べではあったのだろう、それでおなか一杯になったらしく、眠くなってきた。

本当は河原で眠るのは危険なのだが、日が沈んで暗くなってきたこともあり、とりあえず河原にテントを張る。

熱いので換気用の蓋を開けておき、寝冷えをしないようにスキージャケットを腹に巻いてから寝袋の上で横になった。


~~~~~~~~


日が沈むと同時に寝ると、当然、早く起きる、日がまだ上っていない薄暮の時間帯に、だ。

そんな時間帯でもすでに小鳥たちは忙しげに飛び回りながらさえずっている、どんな意味が込められたさえずりなのだろう?

目が覚めると同時に盛大にお腹が鳴る、おならではない。

だが、今日は何を食べるかは、すでに考えてある。前回は全く役に立たなかったアレである。

おもむろにバックパックに結わえ付けてある筒を外すと、筒の蓋を取り、中から釣竿を取り出す。

一度も釣りをしたことのない素人が渓流でいきなり釣れるわけがないのだが、今回はうまくできるという根拠がある。

「鑑定さん、良い釣りポイント教えてください!オナシャッス!!」

である。


根拠もくそもねー。


ただし、問題が一つあって、鑑定さんが示してくれたポイントにうまくルアーを放り込めるという保証はどこにもないのである。

だが、なんと、うまくいった。どうやら狩猟スキルさんが良い仕事をしてくれたようだ。

そして、生まれて初めて、ルアーに魚がかかった。いや、魚がかかったかどうかわからなかったのだけど、

鑑定さんが[↓魚がかかりました]と表記してくれるので、それを合図に竿を引っ張り上げるだけなのである。

鑑定さんの表記を合図に竿を引き上げるだけで良いという、チートなイージーモード。

戦闘スキルがなくてもよくね?そう思い始めていた。


たった20㎝程度のイワナに20~30分くらいかける。割と疲れる。魚の体力やべーな。

うまい人はもっと早く吊り上げられるのだろうけど、ど素人なのでどうすればよいかわからない。

が、なぜか、一匹も逃げられずに済んだ。あからさまに狩猟スキルの恩恵を感じる。

ふつうはテグスが切れちゃうんだろうけれど、ありがたいことである。

餌なんかとっくに使い果たしたのでルアーしかないのだが、それで釣れるならありがたい限りである。

グーグーなっていたお腹が鳴りを潜め、日が高くなって中天に達するころには、20cm~30cmまでのイワナやヤマメやニジマスなどが釣れた。

30cmのニジマスは実に楽しみなサイズである。黒靄様が生物を生きたまま時間停止で保管できるというのはありがたいもので、何とか針を外した魚を黒靄に放り込む。

なかには、針が外れたタイミングで暴れだして逃れようとする個体もいたのだが、大変便利な黒靄様は川面に表れて、ようやく逃げおおせようとした魚を飲み込むのだった。

疲労と空腹と軽い熱中症でフラフラしてきたので、とりあえず、キンキンに冷えている川の水を頭からかぶって冷やす。

そのまま川の水を飲み、テントで休憩。日本と違って空気が乾いているので、日陰に入れば非常に涼しい、むしろ寒いくらいだ。


一心地ついたらテントのすぐ先の河原で手ごろな大きさの石を拾い集めて焚火台を設営する。

キノコ狩りの際に拾って黒靄様にしまっておいた枯れ枝を取り出し、一本だけナイフで削り込みフェザースティックを作る。

作ったフェザースティックに、半分以上ガスが残っている100均で買ってきたライターで着火する。

あとは杉の枯葉などを軽く載せれば、煙の量が多いものの、順調に火がついていく。


キノコは簡易ガスコンロで焼いたが、魚はさすがに簡易ガスコンロで焼くには大きいし、汁が垂れるとあと始末が悪い。

それと、以前から魚を串焼きにするなら焚火だろ?と思っていたこともあるのだが、一番の理由はガスボンベの残量がかなり心もとないことだ。

ガスボンベはもう一本未開封があるものの、今すぐにあちらに帰れる保証がない以上節約するべきだろう。


魚の串刺し、甘く見ていました。割と難しい。漫画やアニメでは割と簡単そうにやっているというのに、生き物を串刺しにするのは大変なのだ。

というか、黒靄から取り出した瞬間暴れ始めるものだから、まず、それを再捕獲するところから始まる。

暴れる魚に串を刺そうと悪戦苦闘したが、手がぬるぬるべとべとになるわ、魚は血まみれになるわ、それはもうひどくて、

の〇太よろしく「鑑定えも~~~~~ん!」と泣きついたのである。『質問の意図が理解できません』と返された。

「えも~~~~~ん!」は質問じゃないのだが、、、鑑定さんなりの抗議かな?


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


魚にいい感じに切れ目を入れて焚火の脇に突き立て…地面に突き刺さらない…、当たり前だ、地面は石ころだらけなのだ。

結局、石ころを集めて作った焚火台のわきに立てかけ、串の根元に小さめの石を積み上げて固定する形になった。

自分の手前から時計回りに作った順番に立てていく。6時、9時、12時、3時といった具合である。

当然ながら、一番良い出来なのは3時のほうなのだ。こいつは最後のお楽しみと行こう。

魚が焦げ付かないように串をくるくると回す作業に夢中になる。次第にうまそうな匂いを立て始めるので腹が鳴る。

お腹のなった音がこだまになるくらいに響き渡るし、俺がよだれをすすり上げる音もエフェクトがかかっているかのように二重に反響して聞こえる。

あ~~~~、も~~ぅ我慢できねーーー、6時に刺さっているやつを取り上げ、塩をぱらぱらといい感じにかけてかぶりつく、

「あっーーーーーーーーーーーーー!」めっちゃ熱い!火傷するかと思った。いや、火傷したかも。涙目になりながら「ほふっほふっ」と吐く息で冷まそうと足搔く。


落ち着いてくると、これはなかなかにうまい、自分で苦労して得たものを食らうのは実に良いものである。

食べていると、腸の中から直径3~4ミリくらいの光る石が出てきた。これは魔石か?魔石って、魔物の体内にあるんじゃないのか?

『この世界で生まれ育った生物や植物には、皆、その体内に魔石が生成されます。』

お、、、おぅ。俺はここの生まれじゃないから、俺の体内にはないということか。

『その通りです』

魔石を食べたらどうなるの?

『何も起こりません、そのまま排泄されることになります。』

こっちの生物が魔石を食べるとどうなるの?

『体内の魔石が強化拡大され、魔力や生命力が増強されます』

ほぉう、じゃあ、こっちの生物にはメリットがあるのか、商売で使えるか?とっておこう。

『魔石は商取引されているようです』

鑑定さんありがたしである。


さて、二本目行きますか!!と9時方向の串に手を伸ばそうとして気づく。

あ・・・またあいつと目が合った。

そして、脱兎のごとく串を二本持って駆け出す緑色の子供。

一瞬呆然とした後、まったくの手遅れ状態の中、河原と森の境目の茂みに飛び込んだ緑色の子供に向かって叫ぶ。


「こーーーーらーーーー!!どーーーろーーーーぼーーーーーー!!」


ここまで読んでいただきありがとうございます。

お気づきになった点や誤字脱字などいろいろと教えていただけるとありがたいです。

頑張らずに頑張っていきますのでよろしくお願いいたします。

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