【06】絶体絶命!!雪山遭難からの異世界遭難
~ここまでのあらすじ~
ネットにチャレンジ動画をアップロードすることでバズって一獲千金を狙ったのだが、思うようにいかなかった。
世の中そんなに甘くはない!さらに、泣きっ面にハチ、弱り目に祟り目とはよく言ったもので、悪い時には悪いことが重なるものだ。
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『』は手紙や念話の表現に使おうかと思います。
(人の心や思いや意思が表現された文章や、電話で通話している相手の話し声、念話で送られてきた思念等。)
{}は“ナレーション”や作者の自分ツッコミなどです。
[]は“文字表記”の表現です。
(看板やお知らせ、新聞などの事務的な文章等。)
“”は名称などの表現にしようかと。
なんだかいつまでたっても朝にならないような気がして目が覚めると、ものすごい風音と何かたくさんの小さなものがテントにたたきつけられるような音がするし、ものすごく寒い。
とりあえず寝袋から出てテントの窓のファスナーを開けると、雪と風が雪崩れ込んできた。外は暴風雪だった。
「まじかよ・・・」と呟きつつ、とりあえず食事をしようとバックパックを漁るが、中にあるのはレトルトのカレー数パックと同じ数のレトルトのご飯だけだった。
密閉されたテント内でガスを使った煮炊きはさすがに躊躇われる。
どうしようか、とりあえず、残りのKitCutをいくつかかじってから寝袋に潜り込む。
恐ろしく寒いのだ、顔が凍り付くかのようだ。寝袋に入り込む前に、バックパックの中からタオルを取り出し、顔に巻き付ける。
タオル一枚だけなら呼吸に問題ないうえに、呼気を乾燥させなくて済む。それからしばらくするといつの間にか眠ってしまった。
起きてから、時間がどのくらい経っているのか確かめるためにスマホの電源を入れて日時の確認をする。
帰宅予定日から1日半経っている、今は夜中の12時のようだ。
外は相変わらず吹雪いている。「日中は晴れていたのか?」朝に目が覚めなかったことが悔やまれる。予備のバッテリーはもう残っていないために、スマホを目覚ましにすることはためらわれる、電池さえ残っていれば、下山中に電波が入り次第電話もできるのだ。
「なるようになるしかないか」、とりあえず何かを食べようとバックパックを探るが、KitCutの袋の中身は空だった。先日食べ過ぎたのだった。
「おなかに蓄えがあるし、水だけでも数日は持つというし、抜くか。」と言うことで、今夜は水だけ飲んで寝ることにする。
お腹がグーグーなって寝付けないし、異様なほどの焦燥感もある、「俺、、、死ぬのかな、、、いやだな、こんなところで孤独死とか」
そんなことを思っていたら、いつのまにか寝ていた。
翌日は空腹に耐えられず、加熱していないレトルトパックのカレーやご飯を食べ始める、クッソまずいが、空腹の辛さはましになる。
スマホの電源も入れなくなって久しい、いつになったら吹雪はやむのだろうか、レトルト食品もなくなってしまい、バックパックには殻の2リットルペットボトル2個と残り3分の1になったに水の2リットルペットボトルが1個あるだけだ。
{この時点では、業務用のマヨネーズがバックパックの奥底に残っていることを失念している。
マサシのサバイバルは七日目に突入していた。}
空腹を我慢していると、突然空腹感がなくなることがある。
そのおかげで何とか耐えていられたようなものだ。
幾日の吹雪の日々を過ごしていたのか分からなくなったころ、薄明るくなったテントの中で目を覚ます。
かなり息苦しい、頻繁にあくびも出るが、息苦しさが半端ないのだ。
窒息するのではないか?と不安になり、よろよろと寝袋から這い出してテントの窓を開ける。
窓のファスナーを半分ほど開けたところで、雪が雪崩れ込んでくる。
突然入ってくる空気と陽光。
吹雪いていた時は風にあおられたテントがはためくので雪が張り付かず、薄いテント生地越しに空気の流動があったために窒息はしなかったが、いつの間にか風が止んだために、雪がテントに張り付き密室状態になっていたのだ。
冷たいものの柔らかい新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込むと、生きた心地がした。
それと同時に、ものすごい空腹感に襲われる。早く下山して食べ物にありつかなくてはならない。よろけながらも撤収の支度をし始めた。
入山してから10日目、遭難してから7日目、食事をしなくなって3日経っていた。標準体重の人なら飢餓状態になっているところだが、幸か不幸か、お腹にかなりのたくわえがあったおかげかもしれない、まだ起き上がって動ける。
テントを片付けながら、「雪ってこんなに重かったっけ?」と思っていた。
足が雪に潜って動きにくいのも撤収作業を遅らせる原因になっている、ようやくテントを畳み終わった頃、太陽は中天に上り詰めていた。
撤去作業をしながら辺りを見回したが、街では目にしたことがない一面の銀世界に、きちんと帰れるかどうか不安になった。
木の少ない向かいの山が見える方角が川で…その右手にあるあのこんもりとした雪の盛り上がりは、おそらくキャンプ場の管理棟だろう。
と言うことは、管理棟の前にある開けたところがキャンプ地用の林道のはずだから、そこから林に入ればバス停まで行けたはず。
ということで、荷造りを終えるとバックパックを背負い込み、“元来た道”をたどり始める。夕方までにはバス停に辿り着くだろう、等と、どこまでも自分にとって都合の良い甘い考えで。
おかしい、日が大分傾き、向かいの山の稜線に夕日が隠れ始めてきた。ほぼ真横から差し込む薄明るい光のせいで、ちょっとした樹木でさえ深い影を差し込んでくる、林の中が異様に暗くて足元もおぼつかない。いつまでたっても県道に出る気配がないし、今自分が歩いているところが、元来た林道かどうかも自信がない。
「まさか、道に迷ったんじゃねーよな?」と言いつつ、ほぼほぼ確信しかけていた。迷子になったぞ?と。スマホの電源を入れてみるが、電波は入らない。これは詰んでいる感が半端ない。
真上を見上げると、木の枝の隙間から薄明るい空が見えるが、そのもっと先には濃紺の天空が見えている、夜は間近だ。今夜はこの林で野宿か、しかし、テントを設営できるような開けた水平な場所が無い。
何とか斜面を降りて行くが、一向に県道に出ないことが不安を煽る。そんな中、ついにあたりが真っ暗になってしまった。
バックパックを背中から降ろし、中からLEDランタンを取り出して明かりを灯す。とにかく、こんな斜面の山林の中では野営もできない。谷底にあるであろう沢までたどり着ければ、開けた平らな場所があるかも?と、バックパックを背負い直して斜面を折り続ける、空腹と疲労から足取りが重たい。
そんなとき、ふと、視界の左端に、何か大きな空洞があるように見えた。そちらに目線を移すと、そこには、大きな木が立っていて、その根元に大きな洞があった。大人一人なら何とかは居れそうだ。あの中で寝袋にくるまりながら、洞の口をバックパックでふさげば寒さを凌げるかもしれない、と、雪の積もった山林の斜面を横切る。
もう少し、もう少しだ!もう少しで木の洞に入れる!!
気合で辿り着き、木の洞の中に足を踏み入れる、、、?!
もう少し警戒していれば、LEDランタンでも中が見えない洞などに足を踏み入れることがどんなに危険なことか判ったはずだが、空腹で頭が回っていなかったこともあり、踏み込んでしまった。そして、落ちた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
お気づきになった点や誤字脱字などいろいろと教えていただけるとありがたいです。
頑張らずに頑張っていきますのでよろしくお願いいたします。