【02】初めての公園で野宿(のじゅく)
~ここまでのあらすじ~
誕生日に実家を追い出されてしまった主人公は、生まれて初めての野宿をすることになった。
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『』は手紙や念話の表現に使おうかと思います。
(人の心や思いや意思が表現された文章や、電話で通話している相手の話し声、念話で送られてきた思念等。)
{}は“ナレーション”や作者の自分ツッコミなどです。
[]は“文字表記”の表現です。
(看板やお知らせ、新聞などの事務的な文章等。)
“”は名称などの表現にしようかと。
とりあえず、どこか落ち着ける場所に行こう。
ということで、近所の公園まで来たわけだが。。
バックパックをしょった上に、やけに重たいボストンバッグを持ち移動してきたわけだが、なぜこんなに重いのか中身も確認せずに出てきてしまっていた。
さらに言えば、ひどい頭痛と眩暈とのどの渇きがあるので、おそらく熱中症になっている。
朦朧としながらも「あ、これ、熱中症臭いな、水のまなきゃ・・・」
と、自販機を探してふらふらと彷徨う。
{こうして、佐藤雅は真夏の都会で遭難した。}
必死の思いで捜し歩いていると、漸く、公園の入り口付近の路上に自販機が見えてきた。
辿り着いたコラ・コーラの赤い自販機には、青いラベルのスポーツドリンク「水瓶」が燦然と輝いて見えた。
なぜか指先が震えるせいで財布の小銭入れから数枚のコインが零れ落ちるが、構っていられない、別の百円玉を2枚取り出すと、やおらコイン投入口に投入し、慎重に「水瓶」の購入ボタンを押す。
釣銭受けにコインが5枚落ちる音を聞きながら払い出し口に手を入れる、ああ、冷たい。
払い出し口に頭を突っ込んで涼みたいくらいに払い出し口の中が涼しい。
まぁ、入れられるものなら入れてみろという大きさなわけだが。
自販機の前でしゃがみこんだ状態で取り出した「水瓶」のキャップを開け、ぐびぐびと飲み始める。口角からいくらか零れ落ちるのも構わず無心に飲み続ける。
ああ、生きててよかった。脱水症状の中で500mlのスポーツドリンクを飲んだくらいで大げさな感想を抱く。
そして、落としたコインをしっかり拾って財布にいしまう。
半分くらい飲んだところで眩暈が収まってきたので木陰に向かう。
幸いなことにそよ風が吹き始めた、生まれて初めてそよ風をありがたく感じたかもしれない。
今まではエアコンの効いた親の自宅の中に割り当てられた一室で何不自由なく過ごしていたので、そんなことを感じたことがなかった。
さて、一息ついたところで、これからどうするべきかを考える。
そうだ、これから俺は生まれ変わらなければいけないのだ。
異世界転生したら本気出す!!
・・・・・・・・・・・・・・
いかんいかん、早速逃げ始めてしまった。今のは無しだ!
{しかも微妙に著作権侵害してる?}
弱気になると、どうも、どうでもよい消極的な方向に思考が傾くな。
と益体もないことを考えているうちに、ふらっ と公園のベンチに倒れこんでしまったのであった。
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ふと目が覚めると、相変わらず蒸し暑いがあたりはすっかり暗くなっており公園に設置されている防犯灯が点灯している。
腕時計など必要ないから持っていないので、時間を知りたければスマホを見る。19:40か日の入り直後あたりのちょうど暗くなり始めた時間帯のようだ。
引きこもりニートにスマホなんか要るのだろうか?と思われるかもしれないが、いい歳こいた大人が駄々をこねて母親に買ってもらったものだ。
「今どきはスマホを持っていないほうが変だもんね、しょうがないね」と言って渋々買ってくれたのだ。
30前後のおっさんがママンと一緒に契約しに行き、ママンの免許証などの信用証明で家族割適用の安いスマホを入手するのだ、「SOMYのスマホが高性能で信頼性も高くていいなあ」と無邪気に言ったときに、母が深刻な声音で「こんな高いものじゃないとダメなものなのかねぇ…」と呟いたのを聞いて、流石に自分が無邪気に両親(の懐)を痛めていることに今更のように気が付いて、良心が痛んだことを覚えている。
しばらくぼーっとしていたものの、荷物の中身を確認しなきゃな、と
公園に来た時にベンチに並べた荷物の中身を検めてみることにした。
先ずはバックパックだ。ファスナーを開けると最初に見えるのはクシャクシャになった紙だ。
その紙を取り出すと、下着類が各5着ずつ程入っている。
その下には、普段着が各3着ずつ。ただし、胴回りのサイズが合うかどうかは不明だ。
更に、バックパックの底の方にはスマホ充電用のACアダプターと、ACアダプターのUSBタイプC端子が刺さったままのスマホ充電用バッテリーがあった。気が利くじゃないかお袋。
そして、バックパックの最下層にはビニールケースに入った郵貯の貯金通帳あった。
少し隙間が空いているページを開くと、そこには郵貯のキャッシュカードが挟んであった。
寝ている間に盗まれなくてよかった。本気良かった。
そんな時に、「ぎゅるぎゅるぎゅる」っと腹が鳴る。我が腹ながら空気の読めない奴だ、そんなところまで俺に似なくてもよいのに。
そういえば3人前のコンビニ弁当があったはずだ・・・いや、3時間以上前のだから腐っているんじゃね?この暑さだし。
しかも、弁当の中身がコンビニ袋の中にこぼれているので食品衛生上の安全性という要素は一つもないのだが。
しかも、この、弁当の入ったコンビニ袋の中身は圧縮済みだ。圧縮済みなのだ・・・どうやら寝ている間に寝押ししてしまったようだ。
捨てるのはもったいないし腐ったようなニオイもしないので、袋の取っ手部分同士を縛って閉じていたところをほどいて袋の口を開く。
ちょっと鮭の塩焼きのにおいがきついが、腐ったようなにおいではないように思えるので、袋内に散乱していた割り箸を掘り出してから、
ベンチを食卓代わりにして、3食分のコンビニ弁当全部を合わせた量のほぼ半分を食べてしまった。
外に出て生活してみると、公衆便所のある公園って有難いものなんだな、と思う。今までそんなこと思ったことなかったのに。 たった半日外にいただけで「外に出て生活してみると」とか、おこがましいことこのうえない。
腹がくちくなると眠くなってきた、ネトゲをやってると眠気が邪魔に感じるのに今は眠りたくて仕方がない。
とりあえず、バックパックの中身を元に戻し、さらに、その上に袋の口を縛りなおした残飯を入れてファスナーを閉じ、ベンチの下に置く。
次に、明日検める予定のボストンバックをバックパックの隣に置く。
最後に、ベンチに横たわり、腕枕をして目を瞑る。オヤスミナサイ
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明け方、体中が痛痒くて目が覚めた。耳にはあの忌々しい羽音がプーンプーンと鳴り響いている。気温が下がったので蚊が活発に活動し始めたのだ。
{佐藤雅は半べそで逃げだすのであった。}
ここまで読んでいただきありがとうございます。
お気づきになった点や誤字脱字などいろいろと教えていただけるとありがたいです。
頑張らずに頑張っていきますのでよろしくお願いいたします。