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転機が訪れたのは、昼休み。
「あっ。仁くんだ。
本当に同じ学校だったんだ。」
咲良美由紀の登場だ・・・。
ここから、月夜は荒れる。
「あら?確か神社の・・・。」
・・・白々しいな・・・。
さっきの様子からしてよく知っている相手だろうに・・・。
「ああ、確か・・・如月物産の・・・。」
先輩の方は知らんが・・・。
「ええ、で?
この朴念仁に何か用?」
なんてこと言いやがるんだ・・・・失礼な・・・・。
「ああ、うまいこと言うわね。
ただ一緒にお昼しようかなって・・・。」
先輩までかよ・・・・ってお昼?
「残念ね。今日はこの彼は私と食べる予定だったのよ。」
初耳だ。
まあ、確かに隣の席だから必然そうなるが・・・。
「・・・・。
え~。仁くん?本当?」
今、一瞬何か考えたな・・・・。
・・・ああ、なんか・・・・。
・・・この人の目的が変わった気がした。
『面白そう、遊びたい』、なんかそう聞こえる気がする。
・・・面白がっているのね・・・まったくいい性格している・・・。
月夜がどこか警戒しているみたいだったからな・・・。
俺としても、この人の性格を読み違えていたのかもな・・・。
けど・・・今はそれどころじゃない・・・
・・・おかしなことがある。
・・・先輩のアレが見えない・・・。
・・・・これまで見えなかったのは男だけ・・・・。
どういうことだ・・・あのあさひでさえ見えた・・・。
・・・全ての女性・・・見えたはず・・・・。
・・・・いや、待てよ・・・・・・さっきのハチの女もそういやあ・・・。
「仁くんにそんな約束をしたそぶりはなかったけど?」
「う、うるさいわね・・・仁が忘れてるだけでしょう!
ほら、仁、フレンチトーストあげるわよ!」
「私だっておかず何かあげるから!」
おい・・・ちょっとうるさいな・・・考え事中なんだが・・・。
俺は二人に引っ張られていた。
イラッ。
「おい、2人ともいい加減にしねえと・・・。」
ガラガラガラッ。
「ここか?
ここにいるのか!?
麗しの咲良先輩が!?
おい、仁!この僕を呼ばないなんて・・。」
・・・・アホが飛び出してきた。
おい!よせっ!
「邪魔。」
月夜の蹴りが空振る。
「おっ。白。」
咄嗟に、俺は目と耳を塞ぐ。
何も見えなかったし、
アホの声は聞こえなかった。
・・・・・・・・・。
セーフ・・・。
「変態、変態、変態!」
月夜がアホを踏みつけ、蹴りをかましている。
あっ。最後のは股間に入った。
あれは・・・。
「チャ~ンス!今のうちに。」
俺は手を引かれ、
屋上まで連れてこられてしまった。
「おいおい・・・大丈夫か?」
「はあはあはあ。
な、なんで・・・へ、平気なのよ。」
「ああ、走ったことか?
まあ・・・あれくらいなら・・・。」
「・・・いったいどんな体しているのよ!
あ~疲れた。」
まあ・・・俺も気疲れと言う意味では先輩の比ではないと思うが・・・。
何せ・・・地雷原がそこらに散らばって・・・。
「お疲れ様・・・。」
「・・・馬鹿にしてる?」
「いや、あの場にいるのは勘弁したかったからよ・・・どうも・・・。
ああ、それと・・・ハンカチ使うか?」
「そ・・・そう・・・。
・・・・ありがとう。
借りるわ・・・・。」
ピカーン!
すんげえ嫌な予感がする。
・・・何か要らん事思いつきやがったな・・・。
ニヤッ。
最悪だ・・・。
「・・・というか拭いて。」
と悪戯っぽい笑みを浮かべている。
・・・仕方がない。
正直、これでやり取りをするのは面倒だ。
・・・・飯も食えん。
今日は走ってきたから随分と腹が減った。
ああ、さっきも走ったし・・・弁当、大丈夫かな?
・・・それに・・・汗をこのままって訳にも・・・。
額を拭き、頬に触れる。
そして、顔を拭き終え、
「はい、終わりましたよ・・・?
先輩?」
「な、なにしてるのよ!」
やっぱりか・・・・いじるは好きだけど・・・ってやつ・・・。
「はあ、もういいですから食べましょう。
ああ、ハンカチですか?
あげますよ。」
面倒な・・・。
「えっ、そう・・・じゃないわよ。
乙女の柔肌に・・・。」
「触れてませんて・・・ハンカチ越しですし・・・。」
「ううう~。」
そう睨まないでくださいよ・・・はあ・・・。
「・・・はあ、悪かったですよ。
代わりに俺の体、触ってもいいですよ・・・。」
まあ、冗談なんだが・・・。
「ほ、本当!?」
おふっ・・・まさかのすごい乗り気・・・。
・・・まあ、いいか・・・どうせ頬や顔くらいだろ・・・。
「じゃあ!さっそく・・・。」
まず、俺の制服に手をかけ・・・。
・・・おいおい、冗談だろ・・・この女・・・。
「・・・・・・。」
・・・やけに真剣だ。
ああ、目まで輝いている・・・どうしたものか・・・。
気になるものを見つけた犬や猫みたいだ・・・。
「じ、仁ちゃん?」
おお・・・ナイスッ!
「おい、雪か?
助けてくれないか?」
「う、うん・・・って巫女さん!?」
雪の方を振り向く。
「ああ、雪ちゃん・・・そういえば、言いたいことがあったんだ・・・。」
「ああ、そうですか・・・・・って、仁ちゃんから、離れてください!」
?
先輩はなんのことかわからない様子。
雪が先輩の手の先を顔を背けつつ、指差す。
先輩は俺に触れた手を見る。
・・・・・・・。
固まった。
・・・未だ俺の服ははだけている・・・。
急に顔がリンゴの様に真っ赤になり、
「わ、私、ご、ごめんなさい。」
どこかへ走り去ってしまった。
「・・・あ、あの、話は・・・。」
雪・・・お前もあんな状況ですぐに話ができるようになるはずないだろうに・・・。
はっ!?
俺は驚きを隠せないでいた。
・・・雪・・・お前・・・
・・・そこまで・・・
・・・・そこまで学のことを・・・。
一番好きな相手 佐久 学 好感度1000/100
一番嫌いな相手 倉敷 仁 好感度-2000/-100
・・・それに・・・こんなにも俺を嫌って・・・。
これで証明された。
やっぱり、嘘だけじゃない・・・。
このパラメーターは・・・。
それにしても・・・こんな俺に頼んででも・・・学と・・・。
・・・・・・・
・・・・そこまでの思いか・・・。
・・・雪に嫌われているのは悲しいが・・・。
・・・この恋、絶対に成就させてみせる・・・!
そして、それ以降は学からも距離を置く。
当然、雪からも・・・。
そう、この時、俺は決心したんだ。
美由紀視点
私ったら、なにを・・・。
仁くんの服を・・・服を・・・ボッ。
触れてみると・・・体もガッチリしていて・・・。
いけない、いけないわ。
あれはあくまでも仕返しよ、仕返し。
おふざけだったのよ。忘れましょ。
汗が頬をつたう。
「あっ、ハンカチ、ハンカチ・・・。」
ポケットからさっきのハンカチを取り出す。
そして頬を拭く。
「あっ。」
汗・・・そういえば、拭いてもらったんだ・・・。
ううう~忘れようと思ったのに思い出しちゃったじゃない・・・。
見てなさい、仁くん・・・仕返ししてやるんだから・・・。