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俺は急いでいた。
まさか・・・・あいつの話がここまで長いとは・・・。
適当に頷いて、後で家に来いというのを了承したから、ぎりぎり間に合いそうだが・・・。
・・・まあ・・・後で面倒が心配だが・・・。
だって行く気はないから・・・。
ああ、咲姫神社か・・・そういやあ、先輩の家だったな・・・。
この時間は人がいないんだな、
なんて思っていると・・・・
ん?
あれ?
なんか走り回っているのがいるな・・・いい大人が・・・。
こういうやつがいるから・・・・・・ん?
・・・妙だな・・・。
少し近づいてみる。
おい、あれって何かに追われていないか・・・。
あれって・・・
・・・ハチじゃねえか?
「ひ、ひっく、ハチさんなんで追いかけてくるの~。」
女性だ。
ハチはめちゃくちゃ興奮している。
あいつ・・・なにしやがったんだ・・・。
「おい、室内に逃げ込め。」
「わ~ん、なんで~。」
聞こえていやがらねえ。
「ちっ。」
俺は駆け出す。
そして、女の手を取り、
「おい、お前。
こっち来い。」
「えっ。」
ちっ。下駄か・・・これじゃあ・・・。
「ちょっと我慢してろよ。」
「うん?」
おし、抱え上げる。
「走るぞ。しっかり捕まっておけ!」
「う、うん!」
よし、狙いはあそこだ。
社務所・・・あそこなら室内だ。
駆け抜ける。
ああ、まずったな・・・よく見るとあの大群スズメバチだ。
カチカチッ。
威嚇していやがる。
・・・ホントこの女は何をしたんだか・・・・。
なんて考えてる暇じゃねえな・・・。
行けるか?
ミスったら死ぬかも・・・。
そういやあ、昔、学が一度刺されたときは救急車を呼んだな・・・。
つまりミスったら俺もそうなるんか・・・。
・・・・けどな・・・。
「ひっく・・・ひっくっ。」
抱えた女は本気で怯えてやがる。
ちっ。
面倒だが、本気で走るか・・・
下はジャリ・・・転んだら一環の終わりだが・・・・。
「ひっくっ。」
・・・賭けだな・・・。
「おい、女、危ねえから、舌かむなよ!」
ギュッ。
「おらぁ、行くぞ!」
腿から力を伝え、膝、そして足首に至るまで連動させ、加速する。
ちっ。
かなり滑るな・・・・。
・・・あっちも加速してきやがったか・・・。
けど・・・もう目の前、
「手ぇ放すから、捕まってろよ。」
ギュ~。
扉を高速で開き、
勢いよく閉め、押さえる。
・・・・・・・。
セーフ・・・。
まったく焦ったぜ・・・。
「おい、女、もういいぜ。」
ぎゅ~。
おい、おい・・・。
気づいていやがらねえ・・・。
それにしてもこの女軽いな・・・むつみより軽いんじゃないか?
それに柔らか・・・・・よそう・・・これはよくない・・・こんなやばそうな女になんて・・・。
「な、何事ですか!?」
どこかで見たことのあるような女性が入ってきた。
「・・・ああ、これは・・・。」
「あ!ああ・・・あなたは・・・。」
ん?俺を知っているのか?
考えられるのは・・・・昨日のこと・・・か・・・。
先輩あたりにでも聞いたんだろう・・・。
「すいません。
さっきハチに追われていたもので・・・。
ってそれより、
彼女を見てあげてくれませんか?」
「えっ?
・・・彼女・・・?」
「ええ・・・。」
はっ!?
「(うっとり)・・・。」
こいつ気が付いた途端に、表情が変な方向に変わったような・・・。
目がハートマークになってやがる・・・。
やばい気がする・・・。
ハチを怒らせた理由くらいは聞きたいところだったんだが・・・。
ここは・・・。
「と、とりあえず・・・・任せました!
俺、学校があるんで、
昨日はありがとうございました。
お礼はいずれ・・・。
それじゃあ、お願いします、
美由紀先輩のお姉さん。」
俺は彼女を畳に降ろし、ハチが消えたのを確認し、走り出す。
「えっ、ええ・・・。」
ガラガラ・・・。
あっ!そうだった!
「たぶん、巣があると思います・・・。
業者に連絡したほうがいいと思うんで・・・。
こんどこそ、じゃあ。」
ガララララ。
咲姫視点
ほ、本当に危なかった・・・。
でも・・・。
さっきの抱きかかえられた様子を思い出す。
ふふふふ。
お姫様抱っこ♪お姫様抱っこ♪
たくましかったわね・・・。
いい思いしちゃったわ・・・・。
ああ・・・できることなら・・・・・。
・・・残念。
でも・・・本当に見えていたわね・・・うふふふ。
これからが楽しみね・・・・・ふふん♪
これから、もっと会うようにして・・・・そして・・・・ふふっ♪
「ねえ、咲姫様?・・・・。」
「・・・・・・。」
後ろからの殺気・・・。
「じっくりお話し聞かせてもらおうかしら・・・?」
「・・・・・はい。」
なんで・・・
・・・なんで、こうなるの・・・。