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玄関の扉を開く。
「・・・お、お兄ちゃん、ごはん~・・・・。」
・・・・・やっぱり待っていたか・・・。
「悪い、少し遅れた。」
「・・・今日って、雪ちゃんとデート・・・?」
「いや、なんか咲姫神社にお参りに付き合ってほしいって・・・。」
「デートじゃん。
あそこカップルばっかり・・・・。」
面白くなさそうに頬を膨らませている 。
ああ・・・これは・・・・。
普通に機嫌を取ると・・・・すんげえ時間が掛かるんだよな・・・。
もう腹が減ったんだが・・・・。
・・・・はあ・・・・仕方ないか・・・。
あの手を使うか・・・・。
俺は手を開く。
「来い。」
それを見とめたむつみは目を輝かせる。
「お兄ちゃんだ~。」
スリスリ。
こいつは家族にこれをやりたがるからな・・・・
・・・母さんや婆さんにもよく・・・・・あれ?
・・・親父や爺さんがやろうとすると避けていたような・・・・。
・・・はあ・・・・・まあいいか・・・・。
これも最近は婆さんや母親がいないせいか控えていたんだが・・・。
あっ?俺?
・・・俺はちょっとな・・・。
・・・・なんでってそりゃあ・・・・・
・・・・・こいつの1部分が急成長しちまったから・・・。
・・・・生理現象なんて起きちまったら目も当てられない・・・。
・・・まあ・・・・・
・・・・・こいつがこんなに喜ぶんなら・・・・たまにやってやってもいいかな・・・。
忍耐力がいるようになるかもしれんが・・・。
「おい、そろそろ離れろ。
晩飯は仕込みをしておいたから、すぐにできる。」
「やだ!
だって、雪ちゃんとデートしてたもん!」
ほう・・・これは新しいな・・・・。
抱き着いていても、頬を膨らませているなんて・・・。
・・・おっといけない。
誤解を解かねば・・・。
「・・・なあ、さっきから言っているだろう。
デートじゃないって、雪は好きな相手ができたんだってよ。」
「・・・・どうせお兄ちゃんでしょ・・・そんなとこに行ってたんだから・・・・。」
目つきまで鋭くなった。
ん?
なんで俺?
「いや・・・違うけど・・・?」
「えっ!それホント!?」
っ!?
急になんだ!?
そんなに驚いて・・・俺のはずないだろう・・・・昔あんなこと言われたんだぞ・・・。
むつみはそう思っていたってことか・・・・。
誤解が解けてよかったな・・・。
「相手は?」
なんだ・・・興味あるのか・・・?
なんだかんだ言って年頃だもんな・・・。
まあ・・・当然といやあ・・・当然か・・・。
「ああ・・・学って言っていたよ。」
「うっそだ~。」
おいおい・・・間髪入れずにかい・・・・。
「うそじゃねえよ。
わざわざ、俺に手伝ってくれって屋上に呼び出したんだからよ。」
「う~ん?」
と首を傾げている。
むつみ視点
おかしい・・・・。
私のお兄ちゃんに手を出そうとする敵が減ったのか?
それとも・・・。
仁視点
「よし、あとは少し煮込むだけ・・・。
むつみ、風呂の準備をするから、ちょっと離れてくれ。
滑るからな。
お前が怪我するかもしれん。
顔を打ったりしたら大変だろう。
せっかく可愛い顔しているんだから。」
(どうせこうでも言わんと離れん・・・。)←仁の胸中
むつみ視点
「お兄ちゃん!?」
そ、そんな・・・か、かわいいなんて・・・。
それに心配も・・・。
う、うれしい・・・けど、油断はしない。
・・・まだ敵は一杯いるんだから・・・絶対にお兄ちゃんは渡さない。
雪視点
「明日から頑張らないと!」
絶対に仁ちゃんと付き合ってみせるんだから・・・。
美由紀視点
「ふふ、仁くんと明日は会える・・・ふふふ。」
襖の裏
「な、なあ、母さん、様子おかしくなかったか・・・まるで恋をしているような・・・。」
「はあ・・・まあ、あの子なら当然でしょうね。
・・・私だって・・・。」
「・・・ま、まさか・・・母さんも・・・・。
た、頼むから捨てないでくれ・・・!」
「はいはい・・・。」
まったくお父さんは何やってるのかしら?
母さんに「捨てないでくれ!」なんて・・・。
・・・まあ、離婚になったら、母さんについていくけど、
ただそうなると仁くんに会えなくなるかも・・・・・
・・・・はあ・・・・・あとでフォローでもしておきますか・・・。
咲姫視点
「まさか・・・。
私のことも明日には見えるようになるなんて・・・・・なんて最高な結果なの!
これで・・・障害はなくなったわ。
リリスもたまにはいいことするわ。
ライバルが多いのは想定外だけど・・・というか増えたものね・・・。
明日から頑張るわよ。」
「・・・姫様・・・・・・少年、頑張ってくれ・・・・・。」
リリス視点
「ちっ。ぬかったわね・・・・。
・・・・まさか・・・・そんな副作用があるなんて・・・。
・・・今度こそ・・・。」
「いたぞ。」
「見つかったわ。
まさか・・・・あの少年・・・退魔師を・・・!?」
学視点
「そろそろ、リリスは捕まったかな?」
仁視点
「むつみ、よく噛んで食べろ。
喉つまらせるぞ。」
「だって、おいしいんだもん。」
・・・まったく・・・・・。
ハグハグ・・・グッ。
飲み物を渡す。
「ほら、言わんこっちゃない・・・・。
そんなにうまいなら俺の分の分けてやるから。」
なでなで。
「えへへ・・・・お兄ちゃん大好き!」
スリスリ。
「まったく・・・。」
そして夜は更ける。
・・・・・倉敷仁は明日からの日常に大きな変化があるなんて、
毛の先ほども考えていなかった・・・・。
プロローグ 完