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雪視点

・・・仁ちゃんが倒れちゃった・・・。


ど、どど、どうしよう?


なんで急に!?


さっきまでは普通におしゃべりもしていたし・・・


ってそんなことより頭なんて打ったりしてるんじゃあ?


大丈夫かな?ひ、冷やさないと・・・。


おろおろ。


「大丈夫です。」


巫女さんの1人がそう言って私の手を握ってくれる。


彼女の手に触れた途端に安心したのか、


落ち着きを取り戻していく。


「あっ、ありがとうございます。」


・・・人の体温って安心するんだな・・・


などと思っていると、


「今、医務室(いむしつ)に連れていきますから。


付いてきてください。」


先ほどの巫女さんが私にそう伝える。


「わ、わかりました。」


すると、他の巫女さんたちも来て、


担架の準備ができたようで、


「「せぇの。」」


数人の巫女さんが仁ちゃんを運ぶ。


「失礼します。道を空けてください!」


「すいません、通ります。」


人ごみを割って、仁ちゃんを運んでいく。



私も言われたとおりに付いて行っているのだが、


医務室の看板が見える。


あっ、あそこだっ!



私がそう思ったのをよそに仁ちゃんはそこを通り過ぎっていく。


「えっ!


医務室じゃあ?」


「いえ、彼はこの先で治療を行います。


一応、お医者様を呼んだので・・・。」


そうして、より奥へ連れていかれ・・・。



結局は中庭のある大きな日本風の建築物に連れ込まれた。



私は客間に・・・。


そして、仁ちゃんは看病をするとのことで、違う場所に・・・。




それから程なくして、神主らしき人と先ほどの長い髪の巫女さんが現れた。



「「こ、このたびは、申し訳ございませんでした。」」


すると、彼女たちは謝罪の言葉とともに頭を下げてきた。



私は困惑していた。


急にここに連れてこられて、仁ちゃんと離れ離れ・・・。


そして、私はここに通されるなり、謝罪をされる・・・。



・・・まったく状況が飲み込めないのだけど・・・。



一体何が起こっているの?



「あ、頭を上げてください。


というか・・・・なんで謝られているのでしょうか?


状況がちょっと・・・。」


2人は頭を上げる。


2人とも苦笑を零しつつ、


「いやあ・・・私どももこんな事態初めてなもので・・・。」


「・・・お父さん、説明が先だったわね。」


こんなことを言い合っている。


私としては、


・・・こんな事態初めて・・・


ということに引っ掛かりを覚えた。


ここはそれなりに多くの人が訪れる神社。


それなのに・・・


美由紀(みゆき)も同じことしてたじゃない・・・。」


彼がそんなことを言うと、


ギロッ。


娘さんの強い眼力が・・・。


・・・なんかうちのお父さんとお母さんみたい・・・。


「ひっ、ひい。」


あはは・・・反応も同じ・・・。


そんな私の呆れを感じ取ったのか、


チラッ。


2人とも私の方を窺い、


少しばつが悪そうな表情を浮かべる。


「ご、ごほん。


では、説明しよう。」


「・・・さっさと始めてください。」


「・・・美由紀が始めさせてくれないんじゃあ。」


あっ・・・また余計なことを・・・。


ギロッ。


・・・そうなっちゃうんですよ・・・。




すると、巫女さんの表情がより真剣なものに変わる。


声から離すことはあなたにとって大切なことです


・・・まるでそう伝えるかのように・・・。



「・・・お父さんじゃあ不安なので、私が説明させていただきます。」


「お、お願いします!」


その緊張を感じ取ったのか、


私は彼女の顔をじっと見つめる。


「では、さっそく・・・・・。」


そして話が始まった。


「不安・・・。」


と言う声が聞こえた気がしたけれども、気のせいだと思うことにした。



・・・私にとって・・・



・・・・これはとても大切なことになる・・・。



・・・・・そんな気がしたから・・・・・・。




学視点

ある一室にて


「ねえ、あれでよかったの?」



「ああ、ありがとう。リリス。」



「勘違いしないで、あなたを手伝ったのは、


咲姫に嫌がらせをするためよ。」



「・・・そうだね。


僕も君に好意なんかの感情はない。


ただの協力者さ。」



「ふん、当然よ。


これで、約束は果たしたわよ。


もう、さようならね。」



「ああ。もう、会うことなんてないように・・・。」



「ええ、もう、顔も見たくないわ。」



リリスは飛び去っていく。


「ははは・・・・やっと準備が整った。


僕は手に入れてみせる雪を。


はははははは。」


高らかに声は響き渡る。



リリス視点

ふふ、馬鹿な男。


本当にあれで手に入るなんて思っているのかしらね。



・・・・そんなに甘いものじゃないわよ・・・。




・・・・恋する乙女は・・・・。




・・・さて・・・・・見物でもしましょうか・・・。




雪視点

私は巫女さんこと咲良(さくら)美由紀さんの話を聞いていた。


・・・神・・・能力・・・邪魔・・・。


私はそういう本を読んだことがあるから、


そういう存在はいてもおかしくはない・・・。



なんて思ったこともあったけど・・・



・・・まさか・・・・



・・・まさか私の恋愛に関わってくるなんて・・・。



「・・・これで概要は以上となります。


なにか質問は?」


「・・・・・・。」


まだ完全に状況が飲み込めたわけじゃない・・・。


・・・それが真実なのかも・・・


・・・だから・・・



「・・・まあ、戸惑うのはわかるけど・・「本当なんでしょうか?


その・・・さっきの話って・・・。」・・・ええ、残念ながら・・・。」


・・・彼女に確認することにした。


彼女の話は続く。


「どんな状況かはわかりませんが、


彼には何かしらの能力・・・もしくは呪いが発現するでしょう・・・。」


・・・能力・・・それに・・・呪い・・・。


もし呪いだったりしたら仁ちゃんは・・・


「っ・・・もし・・・もし呪いだとしたら、それを解く方法ってないんですか・・・?」


・・・・・・・。


2人とも無言で押し黙ってしまった。


私はさっきの彼女の説明にその部分がまったく触れていなかったことから、


答えは何となく知っていた。


・・・でも・・・それでも・・・


聞かずにはいられなかった。


縋らずにはいられなかった・・・。



・・・そして・・・



「・・・はい・・・。」



無情にも予想通りの答えだった。



そして彼女は続ける。



「・・・彼はあなたや他の女性の好意が見えるようになるはず・・・でした・・・。


さっきも説明したように、現在の状況は・・・今、解析中です・・・


それが済まないことには・・・なんとも・・・。


・・・もちろん・・・呪いだった場合の解く方法も・・・・・。」



・・・そんな・・・



私が打ちひしがれていると、



ススススス~。


襖が開く音がした。



「・・・そこからは私が・・・。」


「お母さん!?


終わったのっ!?」


(ふすま)を開け、姉妹のような若さを持った女性が入ってきた。


「ええ・・・解析が終わりました。


御使い様と咲姫様が急ぎでやってくれたわ。」




・・・結果が出た・・・



・・・加護・・・それとも・・・



私は恐る恐る口を開く。


「・・・で・・・・結果の方は・・・。」



「・・・・・・。



・・・彼には一部の方の好意の対象が、



最も好きな相手と嫌いな相手とで逆転して見えるそうです・・・。



残念ながら・・・あなたがどうかはわかりません・・・。」



・・・非情だった・・・。



「・・・そ、そんな・・・。


・・・じゃあ、私は・・・。」



・・・両方だった・・・



・・・加護と呪いの・・・。




・・・そう、仁ちゃんには私が仁ちゃんを嫌っているって見えいるかもしれないんだ・・・・。




・・・・・・そんなのって・・・・。




「「・・・・・・。」」




「・・・ただ。」



「ただ?」



「ただ、いくつか解く方法があるみたいです・・・。」



・・・解く方法・・・?



「っ!


その解く方法って!?」



私は彼女に縋りつく。



「・・・落ち着いて・・・・。」



私は巫女さんに引き離される。



「・・・・・・彼が自分で気づくこと・・・相手の好意に・・・。」


・・・自分で気づく・・・


・・・ふう・・・なんだそれなら・・・


「・・・・・・。」


巫女さんのお母さんの顔色は暗い。


まるでそれが難しいことであるかのように・・・。


なぜ?


・・・そんなの教えてあげれば・・・簡単に・・・。


そして、私はある可能性を思いつく。




・・・そして、その可能性は私にとって最悪・・・



彼に好意を抱く者には致命的になりえるとも思えるその可能性に・・・。




「・・・ってまさか・・・。」



「・・・そう、彼にはその言葉は届かない。


・・・彼には他人からのその言葉が認識できないそうです・・・。」



・・・でも言葉が届かなくても・・・他なら・・・。



「たとえ、文字に記したとしても・・・


仮に、唇を読めたとしても・・・。


・・・どうやっても彼には自分で気づいてもらうしかないと・・・。」



・・・正直この時点で望みは絶たれた・・・



そう私は思っていた。



なぜだろう・・・さっきから、私は彼に嫌いって思われる気しかしないのだ。



しかも、こう言った最悪にも近い勘は確実に当たる。



「・・・・・・。」



「・・・もう1つ方法があります。


もっとも・・・これは望み薄(のぞみうす)ですが・・・。」



・・・これより・・・ですか・・・。


もう聞きたいとすら思わなかったが、一応意識をそちらに向ける。


「・・・それって?」



「彼があるキーワードを心を込めて言うこと・・・。


これはどんなキーワードなのか、


術者しか知りませんから、


不可能に近いです・・・。


・・・やっぱり、彼に気付いてもらうのが現実的ですね・・・。」



ズ~ン。


気持ちが沈み込んでしまう。


巫女さんがこんな風に慰めてくれる。


「・・・まあ、あなたがその一部に含まれない可能性もあるんだし・・・。」


・・・まあ、あるにはあるでしょうが・・・正直望みはまったくないかと・・・。


お母さんの方も、


「そうよ!


それに彼が自分で気づくことも・・・。」


・・・それが一番ないと思います・・・。



「実は・・・。」


私はこの人たちに向けて、言葉を発さずにはいられなかった。


「・・・仁ちゃんは・・・。」


・・・そう彼は・・・。



「・・・()()()()()()・・・。」





「「「・・・・・・・。」」」



巫女さんが私の肩をポンと叩く。



彼女に触れられ、安心したおかげか、


はたまたここの神様のお詫びかはわからないが、


ある考えに至る。



そして同時に、ある希望を見出す。




・・・もし、例えば・・・


例えばの話だけど・・・




・・・私が仁ちゃんを好きだと・・・




・・・もし・・・


・・・もしそうだとあの鈍感な彼に・・・



・・・そう気づいてもらえたのなら・・・




・・・他の一部の女ではなく、誰よりも先に私がそれをできたなら・・・。




・・・彼は私を本当に好きになってくれるのではないか・・・。




・・・・確信ではないが、私は自分の勘を信じることにした・・・。




そう・・・私はこの時、仁ちゃんに全力でアプローチをかけることを決めたのだった。





そう・・・そのためには・・・。




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