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そして、
いつも通りの退屈な授業なんかといったどうでもいいこともろもろが終わり、
俺は屋上にいた。
・・・なぜこんな前置きをしたのかと言うと、
またもや時間を持て余していたから・・・、
・・・時間になっても来ない・・・。
・・・雪にしては珍しい・・・
むしろかなり早く待ち合わせになんか来る方だからな・・・あいつは・・・。
・・・なんかちょっと心配になってきたな・・・
・・・あいつは小学校の頃もいじめられて、俺に隠していたんだよな・・・。
なんて考えていると、
「ごめん。仁ちゃん、今日、日直なの忘れてて・・・。」
・・・ああ、よかった。
心配のしすぎだったか・・・。
「どうしたの?」
「ああ、ちょっとな。」
・・・流石に直球でいうのは恥ずいしな・・・。
「で?用ってなんだ?」
雪は落ち着きなさげに俺の方を見る。
「そ、そうだったね・・・・。
きょ、今日は・・・仁ちゃんに・・・お願いがあって・・・・・。」
・・・最後の方は声が小さく何とか聞き取れるほどなんだが・・・・。
・・・・どんだけ言いにくいことなんだよ・・・。
スーハ~。スーハ~。
・・・深呼吸まで・・・
・・・これ・・・絶対面倒ごとだろ・・・。
「よし。」
なんて思ってたら、
覚悟決めやがった・・・。
「じ、仁ちゃん・・・・。」
・・・ああ、最悪だ・・・。
「・・・わ、私ね・・・・・。」
ゴクリッ。
「・・・・・学のことが好きなの。」
「・・・・・・。」
・・・ものすごいすごい棒読みだった・・・。
こ、これは本当に本気なのか・・・?
聞いただけだと冗談にしか聞こえないんだが・・・。
俺は窺うように彼女の顔を見る。
すると、雪の表情はいたって真剣なものだった。
・・・まあ、めでたいことだしな・・・
・・・それはいいんだが・・・。
・・・これって手伝ってくれってことだよな?
俺としては妹のような存在の雪にこんなことを頼まれたら、
引き受けないわけにもいかないんだが・・・。
・・・あれ?
・・・若干、表情に陰りがあるような・・・。
「で?俺は何をすればいい。」
「えっ。」
「えって、俺に何かしてほしいことがあるから来たんだろう?」
「うん、そうなんだけど・・・、
・・・・本当にいいの・・・。」
「ああ、なにか問題はあるか・・・?」
「・・・・・・う、うん、ない・・・けど・・・。」
雪は複雑・・・っていうのか?
・・・なんか、すごくがっかりしているような・・・。
この状況に合わない表情をしている。
「なあ、本当に学のこと好きなんだよな・・・。」
「・・・・う、うん、もちろんだよ。」
・・・また、棒読みか・・・わからん。
まあ、雪はいい子だから、
なにか人に害があるようなことはしないだろうしな・・・。
「よし、じゃあ・・・・とりあえずは俺はこれからサポートすればいいんだな。」
「うん、そう・・・。」
またその表情か・・・なぜなのかまったくわからんな・・・。
俺にどうにかできることではないと判断したので、
「・・・じゃあもう帰るな。
むつみに飯を作ってやらんといかんから・・・。」
「ご、ごめんね。
じゃあ、何お願いしたいか、
メールするから・・・。」
・・・・そして、今に戻る。
・・・長かった・・・。
まさかこんなに長くなるとは・・・
って、もう列の先頭じゃねえか。
「おい、後ろがつかえてるんだよ。
早くしろよ。」
「あん?」
「な、なんでもないです・・・。」
・・・・これは、俺が悪いな・・・
・・・なにせここまで5時間もかかったからな・・・
後ろのやつが苛立つのもわかる・・・。
・・・さっさとお参りして・・・
・・・となるとやっぱり・・・
お願い事をしている雪が視界に入る。
・・・はあ・・・まったく俺ってやつは・・・
・・・まあ、俺の願いも重なれば結ばれる可能性も上がるかね・・・?
雪が真剣に祈っている姿が目に入る。
・・・まあ・・・俺の願いでもあるか・・・
・・・やっぱり・・・こうなるか・・・
『・・・どうか雪と学が結ばれますように・・・!』
そう願った時だった。
急に体の力が抜ける。
「雪、退けっ!」
俺は力を振り絞り声をあげる。
「えっ。」
反応できなかった彼女を避け、俺は上体を傾ける。
よし・・・
・・・避け・・・きれ・・・た・・・。
バタン。
「えっ・・・・仁ちゃん?」
ざわざわ。
「仁ちゃん!?
仁ちゃん!?
仁ちゃんたら!?」
「っ!?
どうしました!?」
「仁ちゃんが倒れて・・・それで・・・それで・・・。」
「落ち着いてください。
誰か、担架、担架を・・・。」
俺の意識はここで完全に途絶えた。
・・・・この後、何があったのか俺は知らない。