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~洞窟~

~洞窟~


 洞窟を降りて行くと普通に開けた場所が出てきた。そして、岩を削られた家がある。そう、街がそこにあったのだ。


 通りがあり、市場も開かれている。そして、天井にはライトの魔法がある。こう洞窟探検って、モンスターがでてきたり、宝箱があったりと想像していたらそういうのと違った。


 平和そのものの街だ。だが、何か色をなくした感じにも見える。


「おお、ミーニャじゃないか。ちゃんとここがわかったんだな」


 ミーニャが街に降り立つと何人にもそう言われた。そして、ミーニャから俺たちは「恩人」という紹介を受けていた。


 地上ではゴブリンロードが蹂躙しているがこの場所は大丈夫なのだろうか。まあ、入り口があの崖の途中にある穴だけならなかなか入ってくるのは難しいだろう。


 そういえば、この人たちはどうやってここにやってきたのだ。そう思っていたらミーニャに手をひっぱられた。


「これからうちの親に会ってもらってお礼するのにゃ」


「それはいいけれど、これからミーニャはどうするんだ?」


 ミーニャは目を輝かせてこう言った。


「ミーニャはアデルが気に入ったにゃ。だからアデルのお嫁さんになるにゃ」


 え?意味がわからない。一瞬固まってしまった。ティセが言う。


「猫風情が何を言っているのかわからないですわ。アデルの嫁になるって聞こえたんですが氷漬けにしてあげようかしら」


 ティセさん。怖いんですけど。


「ティセがなんで怒っているのわからないにゃ。ティセはアデルのお嫁さんなのかにゃ?」


「お嫁さんですって・・・」


 そう言ってティセがゆでたこみたいに赤くなる。


「ち、違うわよ。私は、そう、お、およ、よ、お嫁さんとかじゃないけど、アデルが誰かと付き合うのかなんて認めないんだからね」


 そう言っていきなりダイアモンドダストを唱えそうになる。


「ストップ。街中でその魔法はまずい。みんな凍っちゃうからね」


 ゆっくりだけれどティセもレベルがあがってきている。街中で魔法をぶっ放すのはやめてほしい。


「ふ~ん、じゃあ、ティセはアデルのお母さんみたいなものにゃ」


「それは絶対に違う!」


 なんかほのぼのしていて平和だな。そう思っていたらミーニャがこの地下街で一番大きな建物に連れてきた。


「ここにいるはずにゃ」


「どうしてそう思ったんだ?」


「だって、お父さんは町長だから一番大きな所にいるのが当たり前にゃ」


 そうなのか?俺の父親も町長だが、普通の大きさの家に住んでいる。そういうものなのだろうか。


 着いたのは神殿だった。円柱の柱の奥に祭壇がある。


「お父さんだにゃ」


 そう言ってミーニャは走り出す。そこに黒い髪に黒い耳、黒い口髭に鋭い目つきの男性がいる。壮年という年齢なのだろう。だが、彫は深く怖い印象しかない。ミーニャを抱きしめ俺たちを見る。


「君たちは?」


 少し前に出会っただけ。なんて言えばいいんだろう。ものすごい睨まれている。ティセが言う、


「街道で出会った旅のものよ。ゴブリンの軍団に襲われていたからその子を助けただけ。私たちが助けなかったらその子は死んでいたわ。感謝しなさい」


 いや、ティセさん。その通りだけれど、不穏な空気の中そう話しますか?ミーニャが言う。


「お父さん、それは本当だにゃ。そしてアデルは無茶強いのにゃ。剣戟を飛ばすスキルがあるのにゃ」


 ソードスラッシュか。確かにこの技術はまだ広まっていない。冒険をしている時に剣聖というか、おじいちゃんと一緒にパーティー組んでいた化け物に出会い、無理やり修行させられたんだ。


「おら、おら、おら、おら。怠けてんじゃねぞ」


 とか言って、むちゃくちゃ切り付けられた。


「そうか。娘を助けてくれてありがとうだにゃ。わしは村の長であるダルーニャと言うものにゃ。ここは我らの祖霊が眠る祖廟。娘をここに連れて来てくれて感謝するにゃ。だが、この場所は部外者を入れるわけにはいかぬ場所ゆえ、申し訳ないがそうそうに立ち去ってもらえないかにゃ」


 周囲を見渡す。地下に街があることに違和感があった。この場所は村の形をしているが足りないものが多い。そう、形だけだったのだ。


「ここは、噂に聞く猫浄土ですか?祖霊が住むために作られた地下の街」


 誰かから聞いたことがある。ニャンクスには死んだ魂が暮らせるために地下に街を作り、1年に1日だけその場所で死者とともに暮らすと。


 いや、ここではない違う場所を訪れた経験がある。


「何?猫浄土って?」


 ティセが言う。


「ニャンクスの風習さ。ここは擬似的に作られたあの世でもあるんだ。そして、1年に1回、死んだ人が現世にくるとされている日、確か彼岸日だったかな、その日に祖霊を子孫が迎えるための場所でもある。ここはニャンクスにとって神聖な場所なんだ。そして、この場に立ち入っていいものは、血のつながりがあるものだけ」


 ティセにそう言うとダルーニャがこう言ってきた。


「詳しいですにゃ。その通りですにゃ。だから、恩人とはいえ、この場に長く滞在されては困るのですにゃ」


 だろうな。それにこの場所は違う意味もある。ここが本当に猫浄土なら血のつながりがないものが長く居ると冥府の道を開いてしまうし、魔界ともつながってしまう。そう、俺たちはそうやって魔界に向かったのだから。


 あれ?


 何か思い出せそうだ。何か大事なことを。だが、思いだせない。何かひっかかるのにやはり思い出せないのだ。ただ、この場所ははじめてきたということだけはわかる。


「外はゴブリンがいるんですよ。今出て行けってことは私たちに死ねってことですか?」


 ティセが怒っている。いくら呪いの魔法のおかげでHPとMPは上がっているといっても、基本的なステータスは低いままだ。


 ティセのレベルは今15だ。そしてミーニャのレベルは20だ。おそらく外のゴブリンのレベルを考えるとかなりきつい。


 あれ。俺ってHPとMPは下がっているけれどそこまで能力が落ちているわけじゃない。ということは俺一人で殲滅すればいいのか。


 だが、パーティーを組んでいる以上、単独行動はペナルティーを受ける。能力ダウンやレベルダウンだってありうる。地道にティセとミーニャのレベルを上げるか、パーティー解除をするかだ。


「ちょっと、アデルも何か言ってよ」


 ティセに頭をはたかれた。痛いと思ったらアイスロッドで殴られていたのだ。ティセもレベルが上がっているのだからそういうのは気を付けてほしい。


「いえ、長くこの地に居られないことはわかっています。早めに退散しますのでご了承ください。それに長く血族以外がいることで別の問題もでてくるでしょうし」


 俺はそう言ってお辞儀をして神殿を出ようとした。


「待つのにゃ」


 走りながらミーニャがそう言って俺の前に立つ。


「血族が大事ならミーニャとアデルが結婚すれば問題ないのにゃ。お父さん。ミーニャはアデルと結婚するのにゃ。今から婚姻の儀をすれば問題ないのにゃ」


 その言葉で場の雰囲気が一気に変わった。


「うちの娘に何をしたのかな?」


「アデル、これはどういうことなのかな?」


 修羅が二人現れた。

 

 ゴゴゴという効果音が聞こえてきそうだ。その交換音を無視してミーニャが腕を組んでくる。


「アデルはいやなのかにゃ?どうなのかにゃ?ミーニャはもう決めたのにゃ」


 頬を赤くして照れながらミーニャが言っている。胸が腕に当たる。やわらかい。なんだこれ。動けない。拘束魔法か何か。そして、目が谷間に釘付けになる。


「アデルが触りたいならいいのにゃ」


 いいのか。触ってもいいのか。このたわわな胸を。ごくりと唾を飲み込む。


「発情猫、アデルから離れなさい。私とアデルはこれからゴブリンを狩りに行くんだから」


「ミーニャ。はしたないにゃ。離れるのにゃ」


 危なかった。もう少しで危ないことになりそうだった。あれがテンプテーションという魔法か。


「ミーニャ。ここは神聖な場所で、冥府とのつながる場所だにゃ。ここでは婚姻の儀は行えないのにゃ」


 ミーニャの父であるダルーニャがそう言う。そう、ここは死者を祭る場所。ここで行える祭儀は死者の弔いだけだ。ミーニャが納得をしていない。


「大丈夫。また会えるよ。これからちょっとゴブリンを倒してくるから。そしたら元の街に戻れるでしょ」


 俺は勇者だ。だとしたらあのゴブリンを掃討しなきゃいけない。上空からメテオストームをぶち込んでしまえばかなりの数は減らせられるはずだ。


 ミーニャたちの街に当たらないようにしないといけないが。


「ふふん。ここでミーニャとはお別れなのね。さみしいわ。でも、ちゃんと覚えておいてあげる。じゃあ、パーティー解除ね」


 そう言ってティセは右手の甲を触る。「あれ?どうして?」とティセが言う。


「ちょっとアデル。パーティー解除ってどうやるの?」


 そう言われて俺も右手の甲に手を当て魔力を注ぎ込む。ボードが浮かび上がる。そこに名前が表示されるのだ。


 3名の名前。俺、ティセ、そしてミーニャだ。そしてミーニャの名前が表示されている所にふれる。普通なら選択が出るはずだ。


 だが、何もでない。どういうことだ。解除ができない。いや、解除をしようとすると指輪が熱くなる。


 これが呪いか。パーティーメンバーを変えることができない。だが、別に人数に上限があるわけでもない。


 一緒にレベルを上げればいいのだ。それに、これから約1万のゴブリンを狩るのだ。どれだけレベルが上がるのだろう。


「パーティー解除できないということは私も一緒に行くしかないのにゃ」


 ミーニャが言う。その通りだ。単独行動はペナルティーを受ける。それはパーティーメンバー全員だ。戦略的分割はいいのだけれど別だが、特にこの場所にミーニャがとどまり続けることは無理だ。


「ならば、ここで試させてもらう。ミーニャを預けるに足る能力があるのかをにゃ」


 ミーニャの父であるダルーニャにそう言われた。目つきが半端ない。能力感知で調べるとレベルは25。え?ミーニャより少し強いくらいだ。手加減をしないとえらいことになってしまう。


「お父さん。やめとくのにゃ。アデルはけた違いに強いのにゃ」


 能力確認の魔法はもう少ししたら発表される魔法だ。というか、使える人はいるのだが、機密という事で開示されていなかった魔法だ。


 それを打ち破ったのがうちの魔法使い、あの緑のとんがり帽子を被っているあの子だ。ダメだ。顔も名前も思い出せない。


「大丈夫だ。我が眷族の至宝を使うのにゃ。出でよ。召喚獣『グリフォン▽※oΘ』」


 最後がうまく聞き取れなかったが召喚されたのはグリフォンだった。


 グリフォンとは鷲の翼と上半身、ライオンの下半身をもつ生き物。空を飛ぶ魔物は結構面倒だ。だが、ここは洞窟の中でしかも広いとはいえ神殿の中だ。


 さすがに無理に攻撃をすると神殿を壊してしまう。仕方がない。


「フライ」


 まずはこちらも空を飛ぶ。飛べることの優位性を奪う。そして、次に出すのは決まっている。


「サンドショット」


 ソードスラッシュだと神殿を壊してしまうかもしれないので、地面に落ちている砂を相手にぶつける魔法を唱える。これは攻撃と言うより目くらましが目的だ。


 グリフォンの一瞬動きが止まる。


「ソードスラッシュ」


 その隙を逃さない。一発で倒せるレベルの敵だ。剣戟はグリフォンを真っ二つに割いていく。


 そもそも、グリフォンの優位性を生かし切れていない。というか、グリフォンは長距離の飛行ができるから移動で使うのが一番だと思うし、閉ざされた空間で使うには向いていない。


 グリフォン自体そこまで強くないからだ。それこそ、バジリスクの方が状況によっては扱いにくい。そう思っていたら真っ二つになったはずのグリフォンがクリスタルに変わっていないのに気が付いた。まだ動いている。


「至宝だと言っただろう。それはただのグリフォンではないぞ」


 グリフォンが二体に別れた。ありえない。いや、これは幻術だ。ということは、このグリフォンに騎乗しているやつがいる。


 つまり、この召喚はグリフォンではなく騎乗者がいるということか。幻術のやっかいな所は気が付けないと対処が遅れることだ。


 攻撃は風魔法の「ウインドショット」にかぎづめでの攻撃。そして、炎のブレスのようだ。


 炎のブレスは火の攻撃を無効化できるから気をつけなくてもいい。接近戦をしなければかぎづめは怖くない。そう思っていたら後ろから攻撃された。


 背中に傷がつく。


「ヒール」


 すぐに回復させる。というか、目の前にいる二体のグリフォンは幻影か。そして、本体は透明化でもしているのだろう。仕方がない。


「サンドストーム」


 自分の周りに砂嵐を巻き起こす。回復するための時間稼ぎ魔法である。砂嵐に突っ込んでくる相手がいないからだ。そして、効果時間も限られている。けれど他にも使い道がある魔法だ。


「更にサンドストーム。もう一つサンドストーム」


 いや砂だけに三度出したかったわけじゃないよ。


 砂嵐の上空から外に飛び出す。そう、その砂嵐を魔力で動かすのだ。天井に張り付いて。目に見えなくても存在をしているのならば砂に当たるはず。


 砂嵐に魔力を注ぎ動かす。だが、これは陽動だ。相手が知能あるものが騎乗しているのならばその先を読めばいい。


 幻術使いなどその先を読み取るのが大事なのだから。周りを見る。砂嵐の先にティセ、ミーニャがいる。


 ただ、距離が近い。そして、ダルーニャがいない。そういうことか。なら答えは簡単だ。


 天井に向かって唱える。


「フラッシュ」


 強烈な光を放つ魔法。ただそれだけの魔法だ。だが、凝視していた相手にはつらいだろう。そして更に上に飛ぶ。


「どうしてわかったのにゃ」


 そう、天井と思っていた所はただの梁があるだけ。その上がさらになったのだ。そして、その上にダルーニャがいる。ダルーニャの首筋に剣が伸びている。


「天井まで上ったはずなのに、ティセとミーニャの距離が近い。この建物の大きさからしたら天井はもっと上のはずだとね。だから、この上に幻術使いがいるとわかった。そして、あのグリフォンは実体を持っていない。グリフォンゴーストですよね。初めてみましたよ」


 まさか、召喚でゴーストを出してくると思わなかった。


「ふふふ。だが、そのゴーストに攻撃できるソードスラッシュというのにはびっくりしたがにゃ。合格だ。ミーニャの婿に認めよう」


 え?なんか話し変わっていませんか?


「いや、それは」


「なんだにゃ。ミーニャに魅力がないとでもいうのかにゃ」


 いきなり怖い表情になった。これNoと言えないやつだ。でも、言わないと後が大変になる。


「いえ、俺らは王都で騎士養成学園に入学しないといけないので」


「安心しろ。それならミーニャもその受験資格を持っている。一緒に連れていってくれ」


 言いながら俺たち二人は地上に降りて行った。すぐにミーニャが走ってきて抱きついてきた。


「これで、一緒だにゃ。結婚だにゃ」


「ダイアモンドダスト」


 ティセさん。それつっこみで使っていい魔法じゃないからね。


「マジックレジスト」


 魔法を解除する魔法。相手より魔力が高くないと成功しないがティセ相手だったら大丈夫だ。周りが凍りつく所だった。


「ちょっと、なんで解除するのよ」


「いや、するでしょう。この一体が氷漬けになるからな」


 そう言ってティセがしがみついているミーニャの頭をアイスロッドで叩いている。しかも手加減なしだ。


「まあ、これから外にでてゴブリン退治だ」


「そうだ、あのソードスラッシュというのは我々も使えるのかにゃ」


 ダルーニャにそう言われた。コツさえつかめば誰でも出来る。ただ、SPがないとHPを削るだけだが。


「できますよ」


「ならば、村の者に教えてくれないか。これは剣じゃないとできないのかにゃ」


 ぶっちゃけ弓でも投石でもできる。闘気を外に出す。発想はモンクの拳に宿すオーラを外に出すだけなんだがな。


「なら教えますよ」


 レベルが低いため弓矢に闘気を宿すオーラショットを教えた。おかげで、戦術が思いついた。


「あのゴブリンたちを掃討しましょう。日常を取り戻すために」


 だが、ミーニャがこの後取った行動は予想外の出来事だった。戦うニャンクスの戦士全てをパーティー登録したのだ。


 その数、100名。というか、それだけの人数にHPとMPが分配される。おかげで気絶をしてしまった。


 というか、パーティー解除できないって言ったのになんてことをしてくれたんだ。


 対処は後で考えるか。ミーニャが「これでずっとアデルは集落に居られるのにゃ」と言ってきた。確信犯なのかもしれないと恐怖を覚えた。


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