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~旅立ち前夜~

~旅立ち前夜~


 視察団が帰った後にティセのおばあちゃんに呼ばれた。


「実はな、あのものたちがこの街に来るのは決まっておったのじゃ。だが、お前たちが先にイーフリートを倒したので時期が少し変わった。王都は変わってしもうたのう。もう、あの頃の様な感じではない。本当ならお前たちが王都に行くのを止めたいのだが、無理なんだろう」


「ああ」


 なんとなく気が付いていた。俺の街を焼き払ったのは確かにイーフリートだ。


 だが、それは作られた惨劇だったのかもしれない。そうでないなら、このおばあちゃんがあのレベルのイーフリートなら倒してしまうからだ。


 それに、あのイーフリートは弱すぎた。おかしい。


 多分力を補充するためにこの街を襲う予定だったのだろう。そして、それをサポートするためにあの4人が事前に邪魔になる相手を排除したのだろう。許せない。


「だから言っておく。仲間を作ることだ。それもできるだけ王都に行く前に。ただ、気を付けるのじゃ。敵はどこにいるのかわからないからな。それと、必要なものがあれば言ってくれ。倉庫にあるものなら自由に使ってよいぞ」


 それはありがたい。だが、俺は魔法使いを目指しているわけじゃない。


 ここの倉庫にあるもので後レアなものは一つだけだ。


 精霊の腕輪があるが、俺の腕にはもう違う腕輪がある。だとしたら精霊の腕輪はティセが装備すべきだろう。あれはレベルに関係なく全属性の精霊魔法が使えるようになる。


 それに、なぜか俺は精霊魔法も使えるようになっている。才能化もしれないし、ティセと能力を分け合っているからなのかもしれない。ティセには素質がある。それは事実だ。


「なら、精霊の腕輪をティセに渡して欲しい。あれがあるとティセの魔力も上がる」


「ってか、勝手に決めんな」


 ティセに頭をはたかれた。


「まあ、あの精霊の腕輪は狙っていたからまあ、良いんだけれど、あんたには上げないんだからね」


「へいへい」


 そう言ったらおばあちゃんは笑ってくれた。


「なら、すぐに旅立った方がいい。まず、色んな街を見て、修行と思ってモンスターや魔獣を倒してみるのもいいだろう。お金も少しは稼げるだろうしね」


 そう言われて意味が解らなかった。


「王都の学園の学費は高いからね。ちゃんと稼がないと入学できないよ」


 そういう事か。仕方がない。街をまわってお金を稼ぎまくってやる。


 中には宝石を隠し持っている魔獣もいる。その宝石を売れば結構いい値段になるのだ。パーティー組んでいた時はその宝石を良く狙っていたものだ。


「アデルと二人旅か。変なことしたら凍らすからね」


「しないって。凍らせたらいやだしね」


「しないの?」


 ティセが俺を見てくる。なんだこれ。何かした方がいいのか。


「していいの?」


「聞いてくんな、バカ」


 そう言って叩かれた。おばあちゃんが笑っている。でも、これが俺の守りたかったものだ。こういう日常があるからいいよな。


 笑いあった後、俺は家に帰りに父親に明日から旅に出ることを伝えた。


「まあ、アデルには悪いと思っている。だが、その通りだ。学費は払えない。そして、アデルを学園に行かせないとこの街が平和でなくなる。それも事実だろう。父親として申し訳ない」


 そう謝らないで欲しい。だって、前の世界では一人で街の住民を埋め、体を鍛え、そして強くなったのだ。あの時に比べたら帰る場所もある。それに一人じゃない。


「代わりにならないかもしれないが、少しだけお金を渡す。合って困るものじゃないだろう」


「いや、いいよ。俺は大丈夫。それは俺が戻ってきた時に街全体で祝ってもらうために残しておいてほしい。それと、戻ってきた時に誇れるくらいこの街を大きくしてほしい。俺の故郷ってすげえんだぜって言えるくらいにさ」


「わかった。なら、お前が帰って来た時にはそれくらいの街にしてやるか」


 こうやって話せるのも俺がイーフリートを倒したからだ。


 笑って、これからしばらく食べられなくなる母さんの料理を食べる。そして、最後にもう一度だけ倉庫に行く。長旅になるのであれば必要になるものがある複数あるからだ。


 倉庫に着き、探し出そうとした。


 すると、何か大きな音を立てて動き出した。壁が動いている。びっくりして目を見開いているとそこから藍色のおかっぱ、白い端正な顔立ち、黒を基調した白いフリルが付いたメイド服を着た女性が出てきた。ものすごくきれいな顔立ちをしているが生気が感じられない。


「貴方ハ誰デスカ?」


 そう言いながら手に剣を持っている。見たことがない剣だ。剣と言っていいのかわからない白一色の剣だ。


 何で作られているんだ。だが、その剣に近いものを知っている。自分が持っているものに近いからだ。同質の剣、同レベルだと感じた。


「俺はアデルだ。この倉庫のガーディアンは俺が倒した。お前こそ誰だ」


 こんなヤツ俺は知らない。


「私ハ、マスターカラ、倉庫ノ管理ヲ指示受ケテイマス。貴方カラハマスターニ近イオーラヲ感ジマス」


 そう言うと一気に間合いを詰めて俺の頬に剣先が当たった。血がにじむ。


「血族デアルコトヲ確認。マスター権限ヲ付与シマスカ?」


 そう言いながら俺の首筋に剣があたっている。返答を間違えたら殺される。


「ああ、付与してくれ」


「デハ、魔力ヲ吸収シマス」


 そう言って俺はキスをされた。その瞬間一気に体から魔力を奪われた。半分以上MPが減った。


 俺のファーストキスなのに。いや、ティセにそう言えばされた記憶がある。いや、あれは事故みたいなものだ。


「契約完了しました。魔力補充もされましたので、通常モードに移行します」


 さっきまでのたどたどしい感じの話し方でなくなった。目にも生気が戻っている。


「お前は一体?」


「私はマスターに作られた人口生命体。ガーディアンが倒された時に起きるシステム。けれど、もう魔力エネルギーが切れかけていたため危険だった。貴方はマスターの何?」


「マスターって多分俺のじいちゃんの事だろう。じいちゃん。ガストン・ライニコフ。俺はその孫のアデル・ライニコフだ。よろしく。えっと名前は?」


 とりあえず、前の世界では魔力切れで動けなかったという感じなんだろう。


 というか、俺より早く動くとかまじでおかしい。ここ数日で自分が最高の勇者だったと思っていたけれど心が折れそうだ。上には上がいるものだ。


「私の名前は、CZ-LT98type2657です」


 それって名前なのか?


「シーゼット?」


「はい、CZ-LT98type2657です。マスターが作成した中で完成したのが私です。それまでのプロトタイプもあったようですが、その行方について私は知りません」


「名前が長い。シズでいいか?」


「かしこまりました。これより私のニックネームを『シズ』と認識しました。マスターアデル」


 よくわからない。とりあえず、シズにこの倉庫に来た内容を告げる。


「探そうと思っていたのは、無限水袋とオートマッピング、後はポーション類かな。ポーション類は大量にあるよね」


「マスターは制作がお好きでしたので。色んなものを作られています。研究施設はここの比でないくらい物があります。研究施設への転移に失敗。転移先に不具合が発生している模様です」


 ん?研究施設なんてあるのか。ってか、ここよりもっと色んな装備があるならまずそこを目指すべきなのではと思ってしまった。


「シズ、その研究施設はここから遠いのか?」


「歩くと2週間で着きます。向かわれるのであればオートマッピングで行先を記載いたします」


「シズは一緒に来られないのか?」


「マスターより私はこの場所と研究施設の守護を任されています。ガーディアンがいない以上、私はここを離れるわけには行きません」


 そうなのか。多分シズは強い。俺よりも強いし、一人で魔界に突っ込んでも問題ないくらいだ。できればパーティーに入れたいのだが難しいのだろうか。


「シズ、一緒に来てくれないか?」


「無理です。私のエネルギーは動くたびに消費されます。この場所でスリープモードであれば問題ありませんが、現状動くとなると毎日マスターよりMP補充が必要です。可能でしょうか?」


 いや、毎日MP半分持って行かれるのはきつい。それにMPは一晩寝たくらいで全回復しないのだ。


「いや、厳しい」


「研究施設の問題が解決したら私のスリープモードが解けるようにしておきます。念のためこちらには弱いですが、メタリックゴーレムを守護においておきます」


 そう言ってまたシズは壁の中に消えて行った。扉付近にゴーレムがいる。


 というか、前のガーディアンより強そうなんですが。これで弱いってシズさんどれだけ強いのよ。とりあえず、まずはじいちゃんがつくっていた研究所に向かうと決めた。



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