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~宝石魔人~

~宝石魔人~


 戦いに勝つ方法ならすぐに思いつく。だが、戦っている二人を止める方法を考える。


「ライト」


 とりあえず、周囲に光を増やす。次に「シャドウスネーク」を発動させる。影を伸ばし二人の影を捕捉する。


「邪魔しないでくれます」

「・・・動けない」


 二人の動きを止める。この「シャドウスネーク」の難点は発動させると俺も動けなくなるのだ。まあ、「コピー」を使って発動させるのが一番いいのかもしれないが、「コピー」の時間を考えるともったいない。


「これで話しができるだろう。戦ったっていいことはない」


 俺がそう言う。まったくうごけないわけじゃないが、影の形が変わると「シャドウスネーク」は解除される。結構頭を使う魔法だ。


「そうだにゃ。ダルにゃんは悪くないのにゃ」


 ミーニャもそう言う。「私の名前はダルメシアンジャスパー。間違えないで」と言われたが「その名前は長いのにゃ」とちょっとすねたようにミーニャが言う。だが、動けないダルメシアンジャスパーをミーニャはそっと抱きしめている。


「ミーニャはダルメシアンジャスパーがお気に入りみたいだな」

「だって、ダルにゃんはお人形さんみたいでかわいいのだにゃ」


 まあ、ミーニャより強いがな。


「ミーニャ、離れた方がよろしくてよ。それはかわいいなんてものじゃないかしら。宝石魔人よ」

「それはあなたもでしょ」


 ペリドットさんとダルメシアンジャスパーがにらみ合っている。


「ねえ、宝石魔人って何?」

「うむ、我も名前こそ知ってはおるが良く知らぬぞ」


 ティセとアカがそう言ってきた。


「ペリドットさん、説明してくれないかな。同じ仲間だろう。みんなが納得できる形にしたいんだ」


 まあ、俺もよく宝石魔人のこと知らないんだがな。


「わかりましたわ。では、説明いたします。宝石魔人について」


 ペリドットさんの話しは長かった。


 まず、この世界についてからはじまったので正直あせった。東方に島国があるという。その国では万物のすべてに神が宿ると言われている。ただ、物に神が宿るのは年月が必要だと言われている。


 ただの石にも神が宿ると言われているが、その神が神でいるためには信仰が必要だという。また、物の価値によっても左右されるし、伝承があればその伝承の広まりでも存在が変わると言う。


 そういう祀られた神や伝承を魔王との戦いに使えないかと考えた魔道師が居たと言う。じいちゃんでなかった。それよりもっと前の魔道師だと言う。


 そして、その魔道師は神を具現化させるために用いたのが魔素を多く含んだ宝石と魔人だった。悪魔と違って魔人は召喚することができない。魔人はモンスターより高位であり、自我も強く人族に組しないと思われている。


 だが、魔人のすべてが魔王に従っているわけではないし、魔人を従える術もある。一つはその強さで従えること、もう一つは隷属の首輪をつけること。これは弱らせた魔人に隷属の首輪をつけることで強制的に主従関係を結ぶのだ。


 ちなみに低位の魔人だと隷属の首輪をつけた段階で消滅してしまうこともあるらしい。だからある程度のレベル、大体レベルは600位の魔人でないと隷属の首輪をつけることはできないそうだ。


 だが、人間界と魔界を繋ぐ門は基本閉じている。小さな穴はあるがレベルが高くなるとその穴を通ることはできない。そう、何らかの方法で人間界と魔界との門を開かない限り。例えば、猫浄土の門を使う、もしくは人間界にある魔王城にある謁見の間の奥にあるとされている門をつかうなどだ。


 そして、宝石魔人とするには宝石と魔人の相性もあるらしい。だが、この二つはただの媒体でしかない。


 物にやどった神を降ろすことが目指すものだったという。だが、実際神は宿らなかった。宿ったのは隷属の首輪をつけ宝石で強化された魔人であった。


 そのため宝石魔人と呼ばれているという。そして、この宝石魔人は製錬したマスターに従属し、そのマスターが死去した場合宝石と魔人を繋いでいた糸が切れるため崩壊するというのだ。


「まあ、私はそこの出来損ないと違って隷属の首輪をつけていませんけどね」


 ペリドットさんは胸を張ってそう言う。


「あなたは人族に自ら協力したの?」


 ダルメシアンジャスパーがそう言う。


「ええ、過去魔界に来た勇者、そこのアデルの祖父ですけれど、そのお方に挑んで負けましたもの。強いものに従うのは道理ですわ」


 そう言えばじいちゃんに聞いたことがある。魔人や悪魔は一度制約したことは破れないと。人と成り立ちが違い、根源が概念であることが多い。そのためその概念を揺るがすことはできないと言う。


 神もまた同じだが、神は人と制約をすることがないという。神にあるのは秩序だとじいちゃんは言っていた。


 だから、この神降ろしは成功しないと言っていた。だが、宝石魔人はかなり強く護衛に言いと言っても居た。じいちゃんに護衛がいるのかという謎はあるが。


「じゃあ、ペリドットさんはマスターが死ぬと消滅するの?」


 ティセが不安そうに聞く。


「まあ、そうなるかしら」


 ペリドットさんは何事でもないようにそう話す。


「ふ、ふざけないでよね。いきなり現れて勝負しましょうってなって、それでいきなり居なくなるとか。何よそれ。あんたはそれでいいの?」


 ん?ティセとペリドットさんは何の勝負をしているのだ。いつの間にか何か勝負をしているらしい。


「ペリドット殿のスパルタはひょっとして時間が限られていたからだったのか。気が付けずすまぬ」


 アカがそう言う。少しさびしそうな表情をしている。というか、いつからペリドットさんを殿と呼ぶようになったんだ。このちょっとした間に何かあったのか。


「そんな背景があったなんて知らなかったのにゃ」


 いつも元気なミーニャが悲しそうに言う。


「ああ、今の私のマスターはアデルに変更になっていますわ。丁度いい機会ですのでアデルにもそのことを話しておこうかと思っていましたの。だから私、アデルが死なない限り消滅したりしませんわよ」


 ペリドットさんがにこやかに笑う。一体いつそんな出来事があったんだ。思い当たることがない。


「我も強くならんといかんようじゃな。主が倒されるような強敵に立ち向かえるのはペリドット殿くらいじゃ。だが、二人を失うとなると残されたものに待つのは死だけじゃ」


 いや、転生するからそんなことないんですけれどね。


「そうだったのにゃ。ならばもっと強くなるのにゃ」


 まあ、強くなることに問題はないんだけれどね。そう思っていたらティセがプルプル震えていたかと思ったら爆発した。いや、さっきも爆発していたがさらにひどい。


「紛らわしい言い方すんな。こっちは、心配しだんだからね。それにアデルが死んだらなんて意味ないし」


 ティセは転生を経験している。そう、俺が死んだら転生してやり直すだけだ。そう思っていたらティセはまだ怒りが静まらないのかそのままアイスロッドを構えてダイアモンドダストの詠唱に入る。


「それダメだからね」


 アイスロッドに手を置く。あ、しまった。動いてしまったからシャドウスネークが解除されてしまった。


「よろしくてよ」


 そう言ってペリドットさんはダルメシアンジャスパーの胸を一突きする。だが、ダルメシアンジャスパーの動きは止まらず、ダルメシアンジャスパーの光の剣がペリドットさんの胸を貫く。


「どういうことだ?」


 お互いの胸を貫きながら微動だにしない。だが、二人ともから血は流れていない。


「あなた魔核を所持していないですわね」

「それはあたなも同じ」


 二人して剣を抜いたと思ったら、剣を納めた。だが、お互いの険悪な雰囲気は変わらない。


「一体何が?」


 そう思っていたらペリドットさんが俺に近づいてきて、後ろから抱きしめるようにくっついてくる。


「ちょっと、あんた何してるのよ」


 ティセがアイスロッドをこっちに向けてくる。とりあえず、防御魔法をかけておくか。そう思っていたらペリドットさんがこう言ってきた。


「私の魔核はアデルの心臓の所にあるわ。あなたの魔核は一体どこにあるのでしょうね」


 ペリドットさんのその言葉でダルメシアンジャスパーの敵意が無くなった。


「好きにしていいわ」

「どうしてそうなった?」


 思わず口に出てしまった。ペリドットさんが言う。


「私たち宝石魔人は核となる魔核があるのよ。魔核が壊されない限り私たちは死ぬことはないんですわ。そして、大抵のマスターは魔核を身につけるとか、どこかに隠していますの。でも、宝石魔人は魔核から距離が近ければ近いほど力を発揮しますの。そして、私の魔核はアデルの心臓に貼り付けているわ」


 びっくりして胸元を見る。傷一つない。


「いつの間に?」

「ええ、アデルが寝ている時にちょっと忍び込ませていただきましたわ」


 そう言ってペリドットさんが笑う。いや、怖すぎでしょう。


「ちょっと、あんた何、アデルの寝込みを襲っているのよ」


 ティセが怒る。


「そうか、寝込みを襲えばいいのかにゃ」


 いや、ミーニャ。それ違うからね。


「はぁ、発情猫。何言っているのかわかっているの?」


 ティセの怒りがペリドットさんからミーニャに変わった。


「それで、ダルメシアンジャスパーはどうしたいんだ?俺の心臓を貫くのかい?」


 そんな雰囲気はない。それに魔力探知で確認したら若干変化があった。


名前:ダルメシアンジャスパー

レベル:600

性別:女性

年齢:726

種族:宝石魔人

属性:土(宝石)光(創造)

備考:記憶喪失(一部封印)、生贄、隷属の首輪(一部解除)

スキル:クリエイト、土魔法クリスタル

ステータス:中立


 隷属の首輪が一部解除になっている情報がある。そして、ステータスが中立になっていて、全部のステータスが確認できる状況だ。


 いや、備考についてはその都度わかったことが追加されているようなので全部というのは違うのかもしれないが、少なくてもダルメシアンジャスパーが敵対していないことだけはわかった。


 そのダルメシアンジャスパーが俺に向かってこう言ってきた。


「アデルは私を助けてくれた。普通なら助けない。だから、恩を返す。ただ、私にはこれがある。いつかあなた達を裏切る。私はマスターを裏切れない」


 そう言って首を触る。手を伸ばすと首に透明な首輪があるのがわかる。


「これがなくなればダルメシアンジャスパーは解放されるのか?」


 だがダルメシアンジャスパーは首を横に振る。


「なら、俺がお前のマスターを倒せばいいのか」


 ダルメシアンジャスパーは目を大きく見開いた。そして、こう言った。


「わからない」


 多分、そうなのだろう。そして、ダルメシアンジャスパーのマスターは強いのだ。記憶喪失が封印となっているが、それはわかるのだろう。それか、俺が弱いと思われているかだ。


「助けて欲しいか?」


 俺は手を差し出す。助けを望んだ相手は絶対に助ける。それが勇者の選択だ。


「アデルでは勝てない」


「そんなのは知らない。お前が助かりたいか、助かりたくないかだけだ」


 俺はそう言って差し出した手をダルメシアンジャスパーの前に持って行く。


「私、迷惑かける」

「迷惑なんてかければいい。そんなの当たり前だ。助かりたいのか?」


 俺は俯いたダルメシアンジャスパーの目線が見えるようにしゃがんだ。


「どうなんだ」


 覗き込んだダルメシアンジャスパーは泣いていた。


「私、記憶を封印された。捨てられた。でも、この首輪があるからマスターの気配だけはわかる。私は生贄にされるだけの運命。でも、いやだ。私は助かりたい」


「わかった。助ける」


 俺はダルメシアンジャスパー立ってダルメシアンジャスパーの頭を撫でた。


「大変ですわよ。宝石魔人を作れる魔道師はランク外ですから」

「大丈夫だ。ちょうどそこにいいものがある」


 そう、青く光る球体がある。セーブポイントだ。ここで更新をすれば何度だってやり直せる。俺は手を出してパーティー登録を申請する。申請といっても仮申請だ。


「これは?」

「ああ、仮の申請だ。とりあえず、ダルメシアンジャスパーのマスターとの線が切れてないため、仮でしかない。でも、これでダルメシアンジャスパーは仲間だ」


 どんなに強敵でもやり直しができればなんとかなる。それに、メンバーはそろっている。前衛のアカに、中衛のミーニャにペリドットさん。後衛にティセとダルメシアンジャスパーだ。ただ、ダルメシアンジャスパーは中立の立場のため特定の敵に攻撃ができない可能性がある。


 いや、俺たちを攻撃するかもしれない。だからこそ俺がいる。


「馬鹿じゃないの。そんなことしたって意味ないのにさ」


 声をした方を見上げた。そこには赤い髪に一部黒いメッシュが入っている男性と、黒い髪に一部緑のメッシュが入っている女性。そして、青いフードをかぶった性別不明の3人がそこにいた。


「カンババは言う、多分。それは私たちの仲間、多分。勝手に奪われると困る、多分」


 黒い髪に緑のメッシュが入った女性が言う。


 男性とこの女子は前衛タイプに見える。いや、魔法剣士と言ったところか。そして奥にいるのが後衛だろう。


「記憶がないそれは僕たちには不要だからどうしたっていいよ。嘘だけれど。あなた達強そうだね。かなわなさそうだよ。それも嘘だけど」


 声からすると女性のようにも感じる。いや、背丈が低いから男性かもしれない。だが、確実にレベルは高い。


「みんな距離を取れ。各個撃破で行くぞ。前衛は俺とペリドットさん。最後尾はダルメシアンジャスパーだ。連中の狙いは彼女だ。彼女を死守する」


 そう言ってダルメシアンジャスパーを見た。彼女は頭を押さえてうずくまっていた。戦力にならないか。大丈夫。このメンバーで戦えばいいんだ。何度だってチャレンジできるんだから。


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