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~変化~

~変化~


 タナトスの石像があった場所に封印をかける。元々知らないとこの場所に立ち入れないが、更にその奥に土魔法で壁を作っておいた。


 これで発見されることはないだろう。ただし、魔素の流れについては手を加えられない。少しでも力が加えられるとタナトスが覚醒する。そういう魔方陣だ。


 だが、それはあの部屋に限ったこと。あの部屋に魔素を供給している龍脈の流れを変えればいい。いや、そもそもこのダンジョンで誰かが龍脈をいじっているのだ。


「まずはみんなと合流する必要があるな」


 俺はそう言った。


「合流って誰とするの?このダンジョンにいるパーティーは複数いる」


 俺でもこの魔素の乱れたダンジョンでパーティーを発見できていないのにダルにゃんは把握をしている。この子はこのダンジョンの何かを知っているのだろう。


「複数ってどれだけいるんだ?」


 だが、ダルにゃんは首をかしげて「わからない」とだけつぶやいた。


「仕方ないのにゃ。心配しなくてもお姉さんがなんとかしてあげるのにゃ」


 いや、実際年齢もダルにゃんの方が上だ。しかも、なんとかされるのはどちらかと言うとミーニャの方だ。


「頭、痛い。こっち行けない」


 そう言ってダルにゃんは行こうとしていた通路の前にしゃがみこんだ。


「仕方が無い。引き返すか。さっきの分かれ道まで戻ろう」


 そう言って後ろを振り向いた時、何かが動いた気がした。俺もミーニャも周囲を見渡す。だが、何も発見できない。


 ジグル老たちがいなければ「アクティブ・ソナー」を使うのだが、あの魔法を使うと言う事は自分がどこにいるのか主張することでもある。仕方が無い。


「デコイ」


 自分そっくりの人型を出す魔法を唱えた。とりあえず5体出して周囲を探索させる。だが、誰にも捕獲されずにそのまま突き進む。いや、1体だけ存在ごと消された。俺たちが進もうとしていた先だ。強敵がいる。


「とりあえず、この場を離れるぞ」


 デコイを爆発させることなく消滅させる。それはさっきのジャイアント・ウォーリアよりも強敵である。今のミーニャでは足手まといにしかならない。


「どうしたのにゃ?」


「ああ、あっちに強敵がいる。さっきのジャイアント・ウォーリアがかわいく思えるくらいのな」


 何が居たのかわからない。だが、確認しにいったとして俺だけなら何とかなるかもしれないが、二人を守りながらだときびしい。おそらくダルにゃんも自らの危機を感じたから先に進まなかったのだろう。


「とりあえず、ここまで来たら大丈夫だろう」

「何が大丈夫なんっすか?」


 後ろから声が聞こえた。この話し方、この雰囲気。剣を抜き切っ先を向ける。そこには褐色の肌に灰色のような銀髪で右目が隠れている少女がいた。


 目の周りが白く、唇も白い。だが、笑っている口の中がやけに赤く見える。


「ヘタマイト。何しに来た?」


 剣を向けるがヘタマイトから敵意は感じられない。先ほどの恐怖や気配とはまた違う。さっきの気配はこいつではなかった。


 まあ、ヘタマイト自身本気になったら多分倒せるかわからないくらいギリギリの戦いになりそうだ。


「君に用はないっす。私が用があるのはこの子にっす」


 そう言ってヘタマイトはダルにゃんを指差している。


「・・・あなたのこと、知らない」


 ダルにゃんは頭を抑えながらそう言った。


「ダルメシアンジャスパー。あなたの役目を思い出させてあげます」


 いつものふざけた話し方じゃなく、冷たい、吐き捨てるような声をヘタマイトが出した。やはりダルメシアジャスパーだったか。


 ジャスパーという鉱石がある。マット感があり安心感がある石だ。その中でも白と黒の模様がある犬のダルメシアンに似ていることからダルメシアンジャスパーと呼ばれる石がある。


 ダルにゃんの名前は想像がついていた。だが、その名前を言うことで何か記憶喪失(封印)とあるこの封印に影響が出ると思って呼べなかったのだ。


 そして、ヘタマイトは名前を呼んだだけ。ただ、それだけだが、ダルにゃんは頭を押さえてそのまま気絶した。


「あら?意外としっかり封印されているんすね。仕方がないっす。とりあえず、回収させてもらうっすけどね。まあ、その役目は私じゃないっす」


 ヘタマイトはそう言って闇に消えていく。俺の力ではヘタマイトを探すことはできない。だが、目の前にもう一体敵がいることはわかる。


「ミーニャ、距離を取れ。もう一体敵がいるぞ。とりあえず、ダルにゃんを抱えて後ろに下がっておけ。後ろは警戒するように」


 俺は目の前に向けて「ライト」を放つ。その場所に立っていたのは緑を基調にし、赤の模様が入った少年がそこにいた。髪と目の色は金色。髪が短く短パンを履いている。そして、その顔立ちはどことなく残忍だ。


「僕は悪いけれどそこにいる出来損ないと一緒にしないでほしいね」


 魔力感知で相手を調べる。


名前:ドラゴンブラッドジャスパー

レベル:800

性別:女性

年齢:****

種族:宝石魔人

属性:土(宝石)、風、闇(模倣)

スキル:変化、****、****

ステータス:敵対


 レベル100の差は大きい。だが、二人を守りながら戦うのはつらい。そして、もう一つ。背後からプレッシャーを感じる。


 目の前にいる緑の少女の肌はまるでドラゴンの鱗のようだ。そして赤く血管のようなものが動いている。そして、スキルが見られないものが多い。だが、確認できている変化だけでも結構面倒なスキルだ。


「僕の前に立ったことを後悔させてあげるよ」


 緑の少女がそう言って黒く靄の形になる。その靄が晴れたそこに居たのは、虹色の剣を持ち、尖った兜をかぶり、白いひげがなびいている戦士がいた。


 その体の大きさは人より少し大きいくらい。そう目の前に居たのは俺がこの転生のキッカケになった相手。魔王がそこにいた。


「ふふふ。久しいな。勇者よ。もう一度絶望をお前に与えよう」


 目の前からあり得ないくらいの魔素が流れてくる。


「丁度いい。お前を倒したかったのだ。これが幻でもなんでもいい。お前のせいでマリーが苦しんだのだ。これは八つ当たりなのはわかっている。だが、少しでもこの思いが晴れるのなら倒させてもらうぞ」


 そう、これがじいちゃんとかだったら絶望しかなかった。けれど、魔王だから本気で行ける。



 正直、相手の変化だと思っていたから楽に行けると思っていた。だが、俺の記憶以上の強さをこの魔王は持っている。


 体はもうボロボロだ。右手はすでに吹き飛び、左手でプリズムソードを握っている。そして、大ヒールを使っても全然回復をしてくれない。


 そう思った時気が付いた。これは本当に変化なのか?剣を見る。刃こぼれをしている。このプリズムソードがだ。ありえない。ということは、これはありえない世界だ。


 俺は目を閉じる。


「ふはははは。諦めたか。ならばそのまま死ぬがいい。勇者よ」


 一撃が振りかざされる。剣戟の速度が速くまるでリチャードがやられたみたいに、剣戟を受ける前の真空波だけでふっとびそうだ。


 だが俺の脚は地面についたままだ。そう、これは俺の意識だけの問題。幻術にプラス実際の攻撃と見た方がいいだろう。剣を右手に持ち返る。右手は吹き飛んだはずだがやはり剣をつかめた。


「種がわかったらこれほどお粗末なものはないな」


 俺は右手に力を込めて「ソードスラッシュ」を放つ。


「危ないのにゃ」


 目を開けると次はダルにゃんを抱えたミーニャがそこに居た。


「そっちは偽物なのにゃ」


 振り返ると後ろにも同じようにダルにゃんを抱えたミーニャがいる。


 そういう事か。変化と幻覚の使い手。それがドラゴンブラッドジャスパーか。いや、違う。多分そういうことなのだろう。


 俺は地面に剣を突き刺し力を込める。


「アースクェイク」


 擬似的に地震を起こした。


「「危ないのにゃ」」


 ミーニャは同じ動きをする。そりゃそうだ。この状況を俺は知っている。ヒュプノスの眠りに近い。そう、これは俺の記憶を使った攻撃。


 そして、俺はただ自らの意識とだけ戦っている。剣を握る。この世界からの脱出は簡単だ。作られた世界が維持できないくらいの魔素をぶつければいい。


 本来のダンジョンであれば龍脈のエネルギーを使っているからアースクェイクを発動させようとも崩れることはそうないだろう。


 だが、このダンジョンはまやかし。そして、限られた世界の中。ならばこのまま力を込めれば崩壊するはずだ。


 剣に魔力を込める。あいにくMPだけはかなり高いのだ。世界にひびが入る。


「おや、意外と早い復帰だったね。僕としたことがびっくりだよ」


 目の前に倒れているミーニャがいる。だが、ミーニャは必死でダルにゃんを抱えている。


「絶対に離さないのにゃ」


 時間にして数秒と言う所か。俺は「スピードスター」を唱えて加速させる。


「剣閃」


 闘気を込めた剣の抜刀。この神速の剣は早いだけでない威力も高い。ドラゴンブラッドジャスパーが少し下がった瞬間にミーニャに大ヒールをかける。


「10秒程度しか拘束できなかったか。君は何者なのだい?」


「ふん、知らない。だが、お前よりもっと高度な魔法を使う相手と戦ったことがあるから、すぐに気付けたよ」


 先にステータスを見ていたから変化や模倣に意識が向いてしまった。ただ、このレベル差なら見えるかもしれないが、相手が意図的に見せたということも考えた。それが正解だったようだ。


「ふ~ん、じゃあ、僕がこうしたらどうなるかな」


 ドラゴンブラッドジャスパーの容姿がかわる。それは白い服を来て虹色の剣をもった男性だ。そう、俺自身に変化したのだ。


「これはただの変化じゃないよ。僕は君の動きをマネすることができるからね」


 自ら手の内をさらす必要はない。ということはフラグが含まれている。何か切り札があると思っていいだろう。


「じゃあ、始めさせてもらうよ。まずはそうだね、この魔法だ『ユグドラシルシード』」


 そう言うとドラゴンブラッドジャスパーの背後に大きな木が出現した。これは「ユグドラシルシード」の魔法そのものだ。


 俺はまだ幻覚を見ているのか。俺は地面に剣を指して「アースクェイク」を発動させる。だが、地面は揺れるがそれだけだ。


「ふふふ。何をしているのかな。現実と幻覚の区別もつかないなんてことないよね」


 そう言ってドラゴンブラッドジャスパーは剣に力を込めて円を描く。あれはまずい。


「次元断」


 この攻撃はよける、逃げる以外の選択肢がない。だが、後ろを見るとそこにはミーニャとダルにゃんがいる。


「ミーニャ。走れ。この攻撃は絶対によけろ」


 そう言うとすぐに「ミーニャ、下手に動くな。攻撃されるぞ」と俺と同じ声でそう言ってきた。ミーニャを見るとどうしていいかわらかずおろおろしている。仕方が無い。


 俺は剣で円を描く。しかもドラゴンブラッドジャスパーが出した次元断よりも大きな円を。


「次元断」


 ドラゴンブラッドジャスパーの次元断を飲み込むように俺の次元断が突き進む。だが、ひらりとドラゴンブラッドジャスパーがかわす。すぐにユグドラシルシードからしずくが落ちてきて全回復する。


 ユグドラシルシードはチートな魔法だ。あれがある限り絶対に勝てない。仕方が無い。まずは攪乱しよう。


「コピー」


 すでにコピーに発動させる魔法を決めている。さらに「デコイ」を発動させる。動きをシャッフルさせてどれがコピーでどれが本体かわからないようにさせる。だが、ドラゴンブラッドジャスパーは「コピー」を発動させ、さらに「デコイ」も発動させる。


 マネをすればなんとかなると思っているみたいだが俺の狙いにまだ気が付けていないようだ。


 お互いのデコイ同士がぶつかり爆発をしていく。


「金剛盾」


 ミーニャの周りに金剛盾を発動させ、爆発を防ぐ。


「アデル、助かったのにゃ」

「そこから動くなよ」


 金剛盾のデメリットは周囲が見えないことだ。岩が迫り出して盾となるためだ。だが、今から行うことを考えると防げるはずだ。俺はフライを発動させ自ら的となるような動きを取る。周りがこっちを見た瞬間に「フラッシュ」を唱える。


 その瞬間にコピーに魔法を発動させる。発動させる魔法は「ナパームボム」だ。


 ナパームボム自体に殺傷能力はあまりない。かわりに草木を焼き尽くす能力がある。狙ったのはユグドラシルシードだ。ナパームボムの影響を受けてユグドラシルシードは燃え上がっている。


 魔王と戦った時に知ったのだが、このユグドラシルシード自体を回復させる手段はない。いつもはマリーが防御壁を張っていたのだが、魔王はその防御壁を打ち破ってきた。今回ドラゴンブラッドジャスパーが防御をしていないことも調べている。


「まさか、こんな手段で破られると思っていなかったね」


 さらに油断をしている。すでにコピーにはもう一つ行動を決めている。


「次元断」


 円を描きユグドラシルシードの一部とともにドラゴンブラッドジャスパーを攻撃させる。


「僕を見くびってもらったら困るね。こんな攻撃よけられるに決まっているじゃない」


 そうやってよける。それを見越していた。俺はすでに空を飛んでいる。そして、ずっと闘気を練り続けていた。


 上空で剣を構える。モーションが大きい、ために時間がかかる。でも、意識がこちらに向いていない時がこの攻撃が一番有効だ。


「オーラブレイド」


 剣戟が振り落とされる。これで一刀両断だ。だが、その瞬間にドラゴンブラッドジャスパーが消えた。

少し離れた所から声が聞こえる。


「こんなのでも倒されたら困るんっすよ。こいつらには役目もあるっすから。でも、いい魔法が手に入ったので良かったっす」


 ヘタマイトがいつのまにか現れていた。小脇にドラゴンブラッドジャスパーがいる。すでに俺への変化が解けて緑の鱗のようは肌が目立っている。


「また、すぐに会えるっすよ。お互い会いたくないかも知れないっすけどね」


 そう言ってヘタマイトは消えて行った。ユグドラシルシードをこのような形で奪われると思っていなかった。だが、対処がないわけでもない。


「アデルが勝ったのにゃ」


 ミーニャが俺に抱きついてきた。そして、その横でダルにゃんが目を覚ましている。いつも以上に無表情だったのが余計に怖かった。


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