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~視察団との出会い~

~視察団との出会い~


 イーフリートを倒したことはすぐに知れ渡った。そして、もう一つ神の鉄槌を破壊したことも。


「まさか、そんなことがあったなんてな」


 怒られた後にそう言われた。王都から視察団が来たからだ。収穫祭が終わり、タイフーンが去った後のことだった。


 王都からの視察団は4人。うち一人は勇者だったウリクルという人だ。この視察団の隊長をしているらしい。


 細い体つきで見た目から勇者というより王子様という感じだ。


 中性的なその風貌は英雄譚に好まれるため上の方から引退をしてこのレフィール王国内をまわるように言われたそうだ。


 実は何人も並行して同時期に勇者は現れる。というか、勇者と名乗っているだけでただの冒険者だ。


 モンスターを倒しても収入が安定することはない。街の依頼を受けることもあるが微々たるものだ。


 だから、ある程度名声を得たらどこかの国に雇われる人が多い。


 その中で一番は王都での騎士になることだ。正直、魔王と戦うのなら4人とかの人数ではなく軍団単位で行けばいいだけだ。だが、誰もそれを行わない。


 それは魔王も怖いが他の国も怖いからだ。そして、強すぎる魔族はそこまでの脅威ではない。


 たまに暴れ狂い、一つの街が壊滅することはあるけれど、国が亡ぶほどではないのだ。魔族は団結して行動を取らない。単独行動だから被害も想定できる。


 だったら、自然災害のようなものと思えばいい。そして、名誉が欲しい在野の人間が功績を上げたらそれを国の騎士に取り入れる。それが各国の思いであり、出世を目指す冒険者の姿だ。


 まぁ、その中で俺は本気で魔王を倒そうとしていたのだが。


 そういうやつが一人くらい居てもいいだろう。そして、俺と仲間になったパーティーもそうだった。


 そう思っていたら、ウリクルが俺の方にやってきた。少し金髪の髪は首で一つにまとめられている。おでこも出ているがだが、きれいな顔立ちの人だ。


「あなたが、イーフリートを倒したのだと。なんでもすごい魔法を使えると聞きました。ぜひ一度王都へ来ていただけませんか?といっても、あなたはまだ若い。王都には騎士育成学校があります。そちらに入学しませんか?」


 ものすごくさわやかにそう言われた。本当にこの人勇者だったのか?


 まるで絵画から出てきたように話す。だが、このウリクルの戦いぶりは狂戦士だったと言われている。

 

 きれいな顔が狂気にゆがみ、敵を倒していくという伝説。そう思うとこの人の笑顔が怖かった。いや、この人笑っているけれど、体から殺気が強烈に出ている。


 下手な行動をしたらその腰にぶら下げているレイピアで突き刺されそうだ。


「間違えないで。イーフリートを倒したのは私たちよ」


 ティセが俺の前にそっとでる。そして、俺の手を握る。手が震えているのがわかる。


 ウリクルから出てくる殺気にティセも感じているはずだ。


「ウリクル。それくらいにしてくれませんか?」


 そう言ったのは青いローブを着た細い女性だ。神官なのだろう。青い帽子に十字がかかれている。


 若くきれいな女性だ。だが、なぜか太ももからスリットが入っていて白い足が見えている。大きな胸を強調できるかのように胸元が大きく開いている。


 なんだこの服装。神聖さが感じられない。ただ、見かけはこんな感じだけれど、この人も半端ないのがわかる。


「能力確認」をしたが、レベルは普通に高いのだ。あの時魔王を討伐に行ったメンバーは世界最高峰だと思っていたけれど違ったのかもしれない。不安になってきた。


「これはヴェルチ様。すみません。ちょっと強そうな子を見ると試したくなるんですよ。でも、二人とも合格ですね。この殺気で気絶しなかったのですから」


 ウリクルがわらっている。中性的できれいな風貌だけれど、中身はやばい。


 狂戦士と言われていた理由がわかってきた。


「ウリクル。試さなくても大丈夫ですよ。私のテンプテーションを受けてもこの子大丈夫だったのですから」


 そう言ってヴェルチと呼ばれた女性はウインクをしてきた。いつ誘惑魔法を受けたのだろう。


 そんな雰囲気はなかった。というか、そのためにそんなかっこをしているのか?この人もある意味でヤバいのかもしれない。


 そして、残りの二人。二人とも魔法使いのようだ。一人は白髪の老人。黒いローブに木のロッドを手に持っている。


 だが、そのロッドからは禍々しい黒いオーラが出ている。絶対に暗黒系のロッドだ。そんなもの見たことがない。


 そして、もう一人に至っては骸骨だ。あれはエルダーリッチだ。まさか人に組するとは思えない。身構えていると暗黒系のロッドをもった魔法使いがこう言ってきた。


「安心したまえ。このエルダーリッチは私が召喚したのだ。従順だぞ」


「召喚ってどうやるんですか?」


 つい気になったので聞いてしまった。


「ほう、坊主。その年で召喚に興味があるとは見どころがあるな。魔力もかなり高いし、特別に教えてやろうではないか。かっかっか」


「やめてください。ジグル老子。そんな子供に教えてどうするんですか?それにあなたのその召喚は邪法です。神はそれを許しません」


 ヴェルチがそう言ってきた。召喚できるものが強ければ盾役になれる。


 うっすらと記憶にある。俺らは魔王の前では無力だった。記憶から消したいくらいに。


「まあ、いいではないですか。聞いたところで実現できるとも思えませんし、実現できるとしても低レベルの悪魔、それこそインプくらいしか召喚できませんよ」


 ウリクルがそう言う。俺の手をティセがひっぱる。


「やめときなよ」


「いや、守りたいんだ。俺だけの力ではどうしようもない相手がいるんだから」


 まあ、実際目の前にいるこいつらもレベルがおかしい。こんなに強いのになんで民を、街を助けようとしないんだ。ジグル老子が言う。


「まず、悪魔というのは精神体なのだ。そして受肉をさせるには生贄が必要だ。そして、この世界に召喚するには多くの魂が必要だ。多ければ多いほど強い悪魔が召喚できる。


 そして、受肉させるには屈強な体や膨大な魔力を持った人間かそれ以上のものが居るのが好ましいな。このエルダーリッチもそうだ。一つの街が滅び、そして、儂の弟子を生贄にして生まれたのよ。


 どうだ。お前。見どころがあるから弟子にしてやるぞ。お前が母体になるならさぞかしすごい悪魔になりそうだ」


「お断りします」


 というか、殺される前提ではないか。その弟子は馬鹿だったのか。


「だから、言ったのです。意味がないと。そこで、あなた達。王都の騎士養成学園に入学を認めるわ。次の春になったら王都に来なさい。これは命令でもあるから。もし、あなた達が入学しなかったら、ひょっとしたらこの街は災害でなくなるかもしれないわよ」


「そうなると、また儂の実験が出来ると言うものだ。かっかっか」


 言われて思った。こいつは実験のために街が壊滅するのを望んでいる。


 敵だ。


 だが、今の俺でこの4人を相手に勝てるとは思えない。仲間が必要だな。盾役、回復役、遠距離攻撃役。出会えるはず。俺はそう信じている。


「わかったわ。私とアデルは春から王都に行くから。だからこの街には手を出さないで」


 ティセが震えながらそう言う。


「手を出すなんて人聞きの悪い。ちゃんと王都であなた達を預かるんだからこの街の安全は保障するわよ。それにこの街には怖い人もいるみたいですからね」


 振り返ると杖をついているけれど、ティセの祖母がものすごいオーラを出していた。


 この人ならイーフリートを倒せるくらいだ。おかしい。だとしたらどうしてあの時この街を守れなかったんだ。


「まあ、流石にこの4人を相手にするのは無理みたいですけれどね」


「そうだな。だが、思い通りにいかないことだってあることはわかっただろう。だったら今日はおとなしく王都に帰るがいい」


 本当に俺が守りたいと思ったのはこんな世界だったのだろうか。わからない。ただ、信じたいとも思った。これはごく一部だと。


「絶対、俺が変えてみせる。この世界を」


 そう、俺は今までただ単に魔王を倒せばいいだけだと思っていた。だが、違うのかもしれない。


「うん、一緒に頑張ろうね」


 そう言ってくれたティセの笑顔だけが救いだった。


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