~ペリドット~
~ペリドット~
アデルが次元断で攻撃をされた時、おそらく私とティセだけは違うことを思ったはずですわ。だって、アデルが死ぬとパーティーメンバーは転生をしますもの。
引っ張られるような、黒い時空の渦に吸い寄せられる感覚は未だに来ていないですもの。
「主が消えたのじゃ。迎えに行かねばならぬ」
そう言ってアカが地面に這いつくばっていますわ。ドラゴンというよりその行動は犬みたいですわ。まあ、ペット枠なのかもしれませんが、ペット枠だと思っていた猫はアデルを追いかけたみたいですわ。
本当にこういう時だけ野生の本能には勝てませんわ。とりあえず、クラン編成をしていたので、パーティー編成を変更しておかないと。
ステータスを見るとすでに変更されていた。どうやら、私の知らないシステムがまだあるみたいですわね。このシステムはいつ安定するのでしょうか。
そう言っても仕方がありません。とりあえず、地面を掘っているアカを見ていると本当に犬のように見えますわ。一度芸でも仕込んでみましょうかしら。
それに、次元断で裂かれた空間はもう閉じています。この状態で追いかけることはできませんわ。
「そこの駄竜。そんなことしたってアデルのとこには行けないわよ。それより、目の前のこいつらをどうにかするほうが先だわ」
ティセがそう言ってアイスロッドをヘタマイトに向けています。あのティセが成長したものです。実際、アデルと私を除いたあの3人のパーティーの指揮をしていただけのことはあるみたいですわね。
あら、ヘタマイトが反応しています。無視するのかとずっと思っていましたのに。
「なんか勝手に盛り上がって悪いっすけど、私は戦うつもりはないっすよ。あなたたちの相手はこのドラゴンっす。ほら、とっとと回復するっすよ。大ヒールっす」
ヘタマイトがそう言うとイビルブラックドラゴンが復活したしたわ。いや、復活とは違う。さっきよりも魔素が上がっています。これはちょっと面倒ですわね。仕方がありません。
アデルのようにうまく指揮できるかわかりませんが、私だって指揮ができることを知ってもらいましょうか。
といっても、ここにアデルがいないのでテンションがあがりませんけれど。まあ、この2人のレベルが上がっていればアデルもわかるでしょう。
「はいはい。とりあえず、このドラゴンを倒しますわよ。アカ。アデルは無事なので安心して戦ってください」
「お前らはどうして主が無事だとわかるのだ?」
あら、なかなか返事に困る質問をしてくる犬、じゃなかった竜ですわね。
「愛よ。私とアデルにはつながっている思いがあるからよ、偉そうに言っているくせにそんなこともわかんないの」
ティセが面白い嘘をついてくれました。アカの表情が変わりましたわね。
「な、な、我も気が付いておるに決まっているではないか。主がそんな簡単にやられるわけがないとな。さあ、ドラゴンを倒そうぞ」
そう言ってティセもアカも私を見てきます。この二人は自ら考えるということをしないのですかね。まあ、そこまでのレベルじゃないのかもしれません。
「といあえず、あなた達二人でドラゴンの相手をしてもらいます。私はそこに隠れているヘタマイトの相手をさせていただきますわ。
さっきみたいに倒す途中で出て来られても困りますし。ちなみに、あのドラゴン。今動きを止めているわけじゃないですわよ。ヘタマイトが力を延々と注いでいます。
そろそろ限界値のため動き出しますわ。そして、そのスピードも威力もさっきの倍以上です。だから、普通にしていたら一瞬であなたたちはブレスの餌食です。だから、一つだけ策を授けます」
まあ、その策はただの時間稼ぎなのですけれどね。後はうまく私がヘタマイトを乗せる必要がありますわね。
「わかったわ。あんたの策を信じてあげる。失敗したらアデルがなんとかしてくれるんでしょう」
ティセがそう言う。失敗したのを知ったらアデルはどうするのでしょう。それはそれで楽しみでもありますが、私の評価が下がるのは避けたいですわね。
これでも、私はアデルのことを特別に感じているのですから。
「では、ドラゴンが来ますわよ」
「わかったわ。私たちがアデルが居なくても戦えるってこと証明してやるんだから」
それはまだまだ先になりそうですけれどね。
さて、私は剣を抜いてヘタマイトに向けて殺気をぶつける。ヘタマイトは不可視魔法で隠れているけれど、同じ宝石魔人なのですぐにわかる。
召喚主が違って、製法が違うだけでこうも変わるものなのですかね。
「そのまま隠れているつもりなら倒しますわよ」
そう言って剣に風の力を込める。剣の周りにトルネードを作る。
「ウインドスラッシュですわ」
もちろんこれで倒せるほどヘタマイトは弱くありません。どちらかというと魔素量は私より多いし、能力も私より高いみたいですわ。
けれど、だからと言って私が負ける理由にはなりませんかしら。
「めんどうなのか嫌いなんっすよね。とりあえず、これで静かになってくれませんっすか?」
そう言ってヘタマイトは黒光りする剣を掲げて円を描くように動かしていますわ。この円が完成すると次元断が発動しますから気を付ける必要があります。
そして、円の大きさでその次元断の範囲が決まりますの。そして、この次元断は別に閉じ込めた相手を攻撃することや、逃げるための技でもありませんわ。これは相手にぶつけたらその大きさの分だけ違う次元、場所に転移させる技でもあります。
私たち宝石魔人は核さえ壊されていなければ体は回復しますけれど、この次元断の攻撃を受けて無事というわけでもありません。
それにこの大きさは私の全てを飲み込んでどこかに追いやるためでもないです。ちょうど私の胴体に風穴を開けるくらいの大きさです。
これを喰らってしまうと核が傷ついて消えてなくなってしまうかもしれません。でも、この次元断には問題もあります。
そう、円が完成する前に相手の動きを止めてしまえばいいのです。このように。
「ウインドトルネード」
最大出力で突風をヘタマイトにぶつける。流石にいきなり最大出力が行くとは思っていなかったみたいですわね。
でも、こう予想と違うことをしない限り今の私たちに活路はありませんからね。私はそっと横を見た。
「ダイアモンドダスト」
ティセが大出力でダイアモンドダストをドラゴンにぶつけていますわ。普通ならば飛んで逃げるなどして回避することもできるかもしれませんが、今のドラゴンには私の風神盾で動きを制限させていただいています。
上空に3つ。左右にも3つ発動させていただいています。そう、今のドラゴンは前後にしか動くことができません。あの凶悪なしっぽも長い首も下に押さえつけられています。
ブレス攻撃をするには首を動かして息を大きく吸い込む必要があるみたいでしたので、頭を押さえつけたらどうなるか試してみましたの。そうしたらブレスが来なくなりましたわ。
まあ、この風神盾をこれだけ発動させているので大技は使えそうにありませんけれど、ヘタマイトに負けることはありませんわ。
だって、私の核がここにはないのですから。まあ、ヘタマイトの核もここにないので勝つこともできませんが。
お互いそれに気が付いているので不毛な戦いをしたくないのです。
「時間かせぎっすか。でも、私もちょっとは楽しませてもらうっすよ。次元断って多分こう使うのが私的には正解なんっすけれどね」
ヘタマイトが体制を立て直して剣を動かす。剣先を少しだけ動かしてこちらに向けてきましたわ。小指の爪くらいの輪っかがこちらに飛んでくるの。
けれど、この小さい塊に触れるとその部分が違う次元に転移してしまいますわ。かなり危険ですが、よければ問題ありません。
「そう、簡単にはよけられないっすよ。これだけあれば特にっす」
そう言ってヘタマイトの周囲には大量の輪っかが私に向かって飛んできますわ。ええ、この展開を待っていたのです。
「アカ。そのドラゴンを蹴りあげてください」
「我に命令をしていいのは主のみじゃが、お前は強者だから聞いてやらんでもない」
そう言ってアカはドラゴンの腹を思いっきり蹴り上げる。どうやらまだ少し凍りついていたみたいですけれどまっすぐこちらにやってきますわ。
まあ、周囲は風神盾で動けなくしていますもの。あら、ちょっと盾に当たって痛そうですわね。さて、アデルを真似てこの魔法を使いましょうかしら。
「スピードスター」
この魔法は敏捷性が一気に跳ね上がるけれど、HPが削られるという魔法ですわ。まあ、普通好んで使う人がいない魔法なのですけれど、相手の意表を突くにはいい魔法でもあります。
私はティセに向かって真っすぐ移動し、その後フライで上空に回避する。ヘタマイトが大量に放ってくれました小さな次元断の塊はドラゴンが全部受けてくれました。
「やはり体が大きいと言うのは的になっていいですね」
そう言うとアカが「我はもうドラゴンの形状に戻りたくないな。的でしかないと言われるとか恐怖じゃわ」と言い出した。
まあ、小さくてもアカの動きは読みやすいので的には変わりないですけれどね。ドラゴンの絶命を確認してすぐに「瞬炎」を唱える。
一瞬でも間違えるとヘタマイトが復活させるでしょうし。そして、念のためヘタマイトに向かって「ウインドスラッシュ」を放つ。だが、その場所から一気に気配が消えた。
「やったの?」
ティセさん。それはフラグなのでそのセリフはダメですよ。
「いいえ。逃げただけですわ。ここにヘタマイトの本体は来ていませんでしたし。来ていたら今の私では勝てないからね」
そう言うとティセとアカがびっくりした表情になりました。
「ちょっと待って。ペリドットさんで勝てないって絶対倒せない相手じゃん」
「我はまだ死にたくないのだが、引き返せぬのか」
本当に失礼な二人です。そう思っていたら奥の壁が、ゴゴゴという音を立てて動き出しました。
「ドラゴンが守っていたお宝だね。とりあえず、もらっておきましょう」
ティセはどうもお金が絡むと目が輝く傾向があるみたいです。
「まあ、何を守っていたのか気になるところじゃな」
そう言いながらアカからしっぽが出てきてわさわさ動いている。
「とりあえず、警戒が必要ですわ。その奥がモンスターハウスである可能性もあるのですからね」
そう、私が言った言葉を二人は聞いていたのかわかりませんが、どちらが先に見つけるのか競争しているように部屋に突進しました。
そして、音がする。やはりモンスターハウスだったみたいですわね。そして、その場所にいるのはゾンビなどのアンデッド。そして、その中央にエルダーリッチがいるみたいですね。
これはあの二人ではちょっと倒せそうにありませんわ。仕方がありません。二人に経験をと言っても居られませんからちょっと本気にならせてもらいます。
「風の精霊の加護」
部屋の中央にいる二人の周囲に風の膜をつくる。
「エバキューション」
周囲の空気を真空にする魔法。アンデッドでも空気を奪われれば風化し、砂に返る。風の精霊の加護でも受けていない限りどうしようもない魔法ですわね。
すべてが砂と化したので落ち着いて部屋に入れるというものです。
「ってか、あの量を瞬殺ってやっぱりペリドットさんはおかしいわ」
「主以外に忠誠を使う相手が見つかったのじゃ。我は忠誠を誓う」
そう言ってアカは寝転がってお腹を見せてきましたわ。まるで犬みたいですの。
「大丈夫ですわ。今の魔法は訓練で使いませんから安心してください」
使ったら一瞬で死んでしまいますからね。
「さて、この部屋の中央にある宝箱ですが、これは開けずにおきましょう。どうやら呪いがかかっているようですし、開けると中に封印されているものがとびでそうですから。この部屋を出ますよ」
私がそう言っても二人は動きそうにありません。確かにこの宝箱からは開けたくなるように意識を向ける魔法がかかっていますわね。
「もし、この部屋に残るのでしたらさっきの魔法をかけますわよ。砂になってもらいますけれどいいですか?」
そう言うと二人は部屋を飛び出した。このままでもいいのですが、やはり手を加える必要がありますわね。
「トルネードランス」
そう言って床に大きな穴をあけて、宝箱を地中に埋めて、石で蓋をする。そして、石の周りを削り簡単に取り出せないようにする。
「まあ、むき出しより少しは良くなったでしょう」
部屋を出るとまだ二人が脅えていた。そんなに怖かったのでしょうか?
「さあ、これからアデルと合流しますわよ。あの発情猫さんがアデルに何かをしている前に」
そう言うと二人が一気に元気になりました。扱いやすい二人ですわね。




