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~ニャーニャーにて~

~ニャーニャーにて~


今までは「ライニコフ」から伸びる一本道の山道を歩いていた。だが、「アカ」に乗っているとほんの数分でニャンクスの街「ニャーニャー」が見えた。


そして、その先に少しだけ開けた場所がある。前にその場所を回復場所に指定したことがあるからだ。


 ダルーニャ、ミーニャ、ボルドーニャ、ミルニャーニャ、そして多くのニャンクスたち。あの時はタナトスが出てきた。だが、タナトスがなぜ出てくるのか、出てこないのかの理由はわからない。


 いや、それをいうとゴブリンロードの出現もよくわからない。この場所に何があるのだろう。とりあえず、上空で周囲を旋回してもらったが何もかわったものは見つからなかった。そのため、アカに着陸してもらった。


「主、我はドラゴンのままがいいのか?」


 アカが地面に降りた時にこう言ってきた。


「いや、人型になってもらおうかな」


「なんで、このままここで待機してもらえばいいじゃない。今回はアデルと私の二人旅なのよ。乗り物は待機でしょ」


 ティセがそう言っているが、アカはティセの要望は聞かないんだよな。すでに黒をベースにピンクの線が入った白のふりふりレースのスカートを履いた幼女がそこにいた。


「お前のような弱いのが横だと主も大変なのじゃ。我が護衛をするので立ち去るがいい」


 そういえばアカはどうやって戦うのだろう。


「アカ、お前はどうやって戦うのだ。まさかそのかっこでブレスとかで攻撃するんじゃないだろうな」


 せっかく人のかっこをしても、人がしないブレスとかで攻撃されると意味がない。アカが言う。


「まあ、ブレスもできるが、人のかっこを折角しておるのじゃ。剣と盾で戦うぞ」


 いきなり左手に盾、右手に剣が現れた。なんか赤紫に輝いている。


「なにそれ、ちょっと見せなさいよ」


 ティセが奪い取ろうとする。だが、アカが手を開いても剣はアカの手から落ちてこない。


「辞めぬか。これは我の竜燐で作られておるのじゃ。体の一部だから離れるのことはないわ」


 竜燐だと。伝説級のアイテムではないか。なかなかドラゴンを倒してもドロップしないアイテム。それが竜燐だ。竜燐があると作れるアイテムも多い。そして、その竜燐を守っている守護者的なモンスターも結構いる。


「アカ、その竜燐をもらうことはできないか?」


 ダメ元で聞いてみたらアカが「生え変わりの時ならいっぱい落ちるからそれでいいならいいぞ」と言われた。


 どれだけの量が出るのかわからないが、それだけでもひと財産が築けそうだ。


「生え変わりの時は教えてくれ」


「主のためならそれくらいいいのじゃ。もっと、我を頼ってもよいのだぞ。この女子より確実に役に立つからのう」


 そう言ってアカが胸を張る。デカい胸だ。胸元が開いている服なので谷間が見える。


「痛っ」


「アデル行くわよ」


 ティセに耳を引っ張られた。



 ニャンクスの街「ニャーニャー」の街は円型だ。木でつくられた柵がある。入り口は二つあるが通りに面しているのは一つだけだ。


 門番に冒険者であり宿泊したいと連絡いれる。もちろん、門番に渡すのはお金ではなく「カツオブシ」だ。


「ようこそ、ニャンクスの街、ニャーニャーへ」


 検問に居たのは青い毛並みの戦士ボルドーニャさんだ。そういえば、前もボルドーニャさんがここに居た。実際、この街で強いのはこの人を含めると4人くらいだ。


「この先にあるダンジョンを目指しています。今日はこちらに宿泊できればと思っています」


 嘘だ。だが、前回はこう言った後に村長から魔素の流れの様子を聞きだせたのだ。だとしたらその流れに沿って行動するのがいいだろう。


 そしてそう言いながらそっ「カツオブシ」を渡す。


「これは良品ですにゃ。歓迎しますにゃ。もっとあったりますかにゃ?」


「ええ、ちゃんと用意しています」


 俺らからするとカツオブシはスープの出汁に使ったり、料理の一部に使われるだけだ。だが、ニャンクスにとっては違う。特に山の中で生活するニャンクスにとっては高級品であり、宝石に近い価値があるのだ。


 すでに人数分を用意している。そのことを告げると「こんなには受け取れませんにゃ」とボルドーニャさんに言われた。


「では、今度来た時の分だと思って預かってください」


 助けられなかった。その記憶はなくても魂に刻まれている。タナトスの相手は俺かペリドットさんしかできない。


 ティセより強いと言ってもアカのレベルは60だ。死の息吹に耐えられない。


「わかりましたにゃ。それではまず、この街の村長にお会いくださいにゃ。場所はこの先にある一番大きな建物になりますにゃ。それと、案内をつけますにゃ。ミーニャ。そこにいるのだろう。この方たちをお連れするのにゃ」


 そう言われて奥からにょきっとミーニャが顔を出した。茶色い耳に茶色い髪、黒い瞳。茶色のレザーメイルに白いズボン。街道ですれ違った時と同じ服装だ。目をきらきらさせてこっちを見ている。いや、見ているのは「カツオブシ」だ。


 だが、元気なミーニャを見ると少し安心をした。いきなり耳をつねられる。


「アデル、何。あんな猫がいいの?」


 失敗した。注意していたはずなのに。そう思っていたらアカがこう言ってきた。


「主は猫が好みだったのか。ならば猫に変化すれば我をもっと愛でるのかのう?」


 アカもなぜか棘のある話し方をする。ドラゴンが猫に変化するってもはや意味がわからない。


「いや、違うんだよ。ニャンクスって見たことないなって思っただけだよ」


 適当に誤魔化す。誤魔化せているのだろうか。というか、なんで攻められているのかわからない。


「案内するのにゃ。私はミーニャだにゃ」


 ミーニャが俺たちの周りを1周してから俺の前に立った。なんだろうこの行動は。


「俺がアデル。こっちがティセでこちらがアカだ」


 そう言えば、前はアカの場所にペリドットさんが居たんだな。というか、全然ペリドットさんの気配を感じない。本当に近くにいるのだろうか。不安になる。


「よろしくなのだにゃ。アデルはどこかで会ったことあるような記憶があるのにゃ。でも、ヒューマンの知り合いなんてミーニャにはいないはずなのだにゃ。アデルは不思議な感じと、良い臭いがするのにゃ」


 そう言って懐に手を突っ込まれた。まるで抱きついてくるような感じだ。ミーニャの胸が当たる。


「アイスバレット」

「ファイアショット」


 ティセとアカから同時に攻撃をされる。ただ、同時過ぎて相殺され、いや、されていない。アカの方が勝っているため炎で燃やされそうになる。


「ふふん、我の方が魔力は高いみたいじゃの」

「ぐぬぬ」


 まあ、炎耐性があるので俺は暑くないんだけれど。


「ぎゃー暑い、こげる、助けて」


 仕方が無い。


「ウォーターショット(弱)」


 威力を抑えて、水鉄砲くらいの水をミーニャにかける。


「助かったのにゃ」


 水をかぶったせいで服が透けている。上半身はレザーメイルだからいいが、下半身の白いズボンはいただけない。うっすらと水色の下着が見えている。


「ウインド」


 どこからか風魔法が唱えられ一気に服が乾燥した。絶対ペリドットさんだ。そして、なんだかピリッとした空気になった。


「なんじゃ、この空気は」

「や、やばい。来ているの?アデル、アデル。助けてよ」


 ティセは頭を押さえてしゃがみこんでいる。そこまでのトラウマだったのか。


「とりあえず、案内してもらえますか?」


 俺はミーニャにそう言った。ミーニャもこの空気に気が付いている。


「わかったのにゃ」


 そう言って歩き出す。



 歩きながら前に来た時に感じた状況と同じなのがわかった。そう、魔素の流れが恐ろしくないのだ。


「この場所はおかしいのじゃ。イーフリート様の居城はここまでではなかったがこの場所はこのままだと生き物が住めない場所になるだろうな」


 アカがそう言う。というか、イーフリート様と言っているのが気になった。


「なあ、アカはどうしてイーフリートに様をつけるのだ?」


 イーフリートとは、今は戦うことはないがいつかは戦う可能性がある相手だ。その相手に敬称を付けると言う事は戦う時に敵になる可能性がある。


 いや、イーフリート以外でもだ。これから魔族と戦う時に敵対されるのは困る。そもそもアカについては謎だらけだ。召喚したが、普通ならすぐに居なくなるのに具現化しつづけている。それに本体は魔界にいるはずだ。不信な目で俺はアカを見た。


「主よ、そのような目でいるではない。我の本体は魔界にあるのじゃ。だが、この人間界で具現化しているのはイーフリート様の居城のゲートを通じてじゃ。


まあ、恩があると思ってくれればいい。だが、我の主はアデル。お主だけだ。もし、主の命であればイーフリート様にも戦いを挑むぞ。まあ、属性を考えると何の役にも立たぬと思うがな」


 この言葉をどこまで信じていいのかわからない。だが、アカについて全面的に信じることは難しい。


「こんなトカゲ倒しちゃえばいいのよ。アデル。やっつけちゃって」


 ティセが俺をけしかけてくる。


「ふん、気に入らぬのなら挑んでくるがいい。まあ、お前では我の相手にもならぬがな」

「何よ。見てなさい。ダイアモンドダスト」


 ティセがいきなりダイアモンドダストの詠唱に入る。仕方が無いから無効化する。


「アデル、なんで止めるのよ」

「アカは俺の召喚獣だ。まあ、裏切るようなら魂の回廊をぶった切るだけだな」


 召喚獣はクリスタルに封印し、短時間だけ具現化させ能力を使わせる。それは受肉をしていないからだ。


だが、召喚獣が受肉をしたらどうなるのか。正直知らないのだ。だから、今の状態が正しいのかはわからない。だが、小指にあるこの指輪を叩き潰せば受肉してようとアカはこの人間界で存在することができなくなる。


 そして、それは召喚獣の消滅を意味することでもある。魔界に本体があったとしても魂の大半が死滅する。魔界には体と魂の残滓しかない。知能のないドラゴンが魔界に一体生まれるだけだ。


「主が無意味にそういうことをするとは思えんがな」

「そういうことだ。だからティセ。少しはアカを信じてあげよう」


 全面的にはまだ信じられないがな。


「ふ~ん、まあアデルのペットということなのね。なら私も許してあげるわ」


 ティセがそっぽ向きながらそう言って手を差し出す。


「まあ、弱いものを守るのは強き者の宿命じゃ。虫けらでも主が共と選んだのなら守ってやらんでもない」


 そう言って手を繋いだ。まあ、多分だけれどこの二人は仲良くやっていけそうな気がする。


「着いたのにゃ」


 そう言われて、街の中央にある大きな円形の建物に案内された。その奥に玉座があり、ダルーニャが座っていた。眼光鋭く、まるで王の風格がある。



 謁見をした後にダルーニャに言われた。


「実はここ数日魔素の流れの様子がおかしいのだにゃ。君たちが向かうダンジョンは魔素の濃い場所でもあり、この一体の魔素の流れの本流でもあるのだにゃ。何か異変が起きていないか、ついでに見てきてくれないかにゃ」


 そう言われた。


「わかりました。お受けいたしましょう」


 同じ展開になってよかった。


「それで、その依頼はいくらなのじゃ」


 アカがそう言いだす。


「ははは。このような幼女にそう言われると難しいのにゃ。だが、この街に滞在する間の宿泊と食事代はこちらでもとうではないか」


 ダルーニャがそう言う。だが、周囲を見ると井戸は枯れているし、田畑も作物を育てられていない。


「大丈夫なのですか?」

「まあ、少しくらい蓄えはある。だが、期限は決めさせてもらおう。1週間だ。1週間だけ食事を出そう。それと、もう一つ。ダンジョンに行くのに娘のミーニャを連れて行ってもらいたい」


 そう言われえて横にいたミーニャがびっくりした顔をしている。


「なんでなのだにゃ?」


 俺も思う。ミーニャをここで連れて行く必要性がない。だが、ダルーニャが言う。


「ダンジョンの深部はまだ解明されていない。だが、この地には我々ニャンクスのみしか立ち入れない場所がある。その場所につながっていた場合ニャンクス以外の種族に荒らされるのは困るのでな」


 猫浄土だとすぐに分かった。だが、そのことを口に出すとややこしくなる。


「つまり、監視ということですか?」

「そういうことだ。そして、これ以上の情報を伝えることはできない」


 ダルーニャがそう言う。


「その猫って戦えるの?なんか無駄に発育だけは良さそうだけれど、戦えるようには見えないんですけれど」


 ティセがそう言ってミーニャを睨む。まあ、今のティセだとミーニャよりはレベルが高い。


 そう思って確認をする。ティセのレベルは45だ。ミーニャは21だ。あれ?少しだけミーニャのレベルが高いように感じる。


「戦えるのにゃ。これでも村では強い方なのにゃ」


 まあ、とりあえずレべリングは必要だな。


「わかりました。ではミーニャさんは同行と言う事でよろしいでしょうか?」

「いや、パーティー登録をしてもらおう」


 ダルーニャにそう言われた。パーティー登録は一度すると解除できないのだ。


「まあ、私たちは勇者だから依頼を受けるものだものね。わかったわ」


 ティセがそう言って手の甲をミーニャに向ける。


「なら、我もだな」


 そう言ってアカが俺に向けて手の甲を向けてくる。召喚獣ってパーティー登録できるのかと思ったらできてしまった。一気に体力を奪われる。


 まあ、ティセからしたらアカの分でHPがあがって、ミーニャの分でHPがさがったが、そこまでの影響を受けていない。むしろアカとミーニャの方がびっくりしている。


「では、依頼の成立だな。では今日は宴を開こうではないかにゃ」


 ダルーニャがそう言って宴席を開く。宴席ではダルーニャだけでなく、ボルドーニャさんや灰色の毛並みのミルニャーニャさんも居た。そう、前の世界で共に戦った仲間がそこに居たのだ。ただ、その記憶は彼らにはない。


「おお、このカツオブシは最高級だな」

「この、マタタビ酒も最高だ」


 持ってきていたものを提供する。そして、俺らは川魚と木の実と米を食べている。


「これってご馳走なのかな?」


 ティセがそう言って木の実を米に乗せたよくわからないものを食べている。ちょっと不思議な味がするのだ。


「多分そうなんだよ。まあ、俺らはマタタビ酒は飲めないけれどカツオブシはご飯にかけて食べるとおいしいよ」


 そう、文化の違いは食文化の違いでもある。柔らかく煮込んだ木の実と米は不思議な味がした。


 アカは何も口にしていない。


「どうしたのか?食べないのか?」


 気になったのでそう聞いたら「我は魔力を喰らうので問題ないのじゃ」と言いながら俺の膝の上にやってきて小さくまるまって寝始めた。


「ちょっと意味わかんないだけれど」


 ティセはそう言ってきたがアカの寝顔を見て許すことにしたらしい。



 翌日、ニャーニャーの奥にある洞窟に向かう。だが、魔素の流れを少ししか感じない。静かすぎるのだ。そして、魔物もいない。


「不気味じゃの」


 アカがそう言う。すでにアカは盾と剣を具現化させている。


「ここ最近ずっとひどいのにゃ」


 ミーニャもそう言って周囲を見る。鳥の鳴き声も聞こえない。木々も枯れ始めている。これは重傷だ。実はニャーニャーの中で「スコール」を唱えた。


 スコールは攻撃魔法ではない。雨が少ない地域で農作物を育てるために雨を降らせる魔法だ。そして、この雨は純粋な水ではない。色んな農作物に良いものが含まれている。栄養素があるのだ。そして、吸収力を良くするために電解質なのだ。


 だが、その水分は土地の中ではなくどこか違う所に強制的に吸い込まれていったのだ。明らかにおかしい。


「とりあえず、気を引き締めて行こう」


 そう言って洞窟に踏み込んだ。その瞬間に崩落して入り口がふさがれた。


 俺たちは閉じ込められたのだ。




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