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~イーフリートとの対話~

~イーフリートとの対話~


 イーフリートの居城はわかりやすいところにある。


王国の最南端の街が「ライニコフ」である。舗装されている道は王都につながる道だけ。けもの道や山道はあるが西側は岩肌がむき出しの山脈があり、深い谷がある。その奥に位置しているのがヴァイン帝国だ。地図上は隣り合っているが陸路では、トロイア国を通過しないとたどり着けない。


 だが、その岩肌の山々の手前にイーフリートの居城はある。何もない場所。だが、その場所は火の恩恵を受けている場所でもある。魔物や野獣も多いエリアでもある。


 だが、夏場となるとかなり蒸し暑い。


「どうして暑いのにこんなとこに行かないといけないのよ」


 ティセが怒っている。風の精霊の加護で風を身にまとっているが、心地よい風があったとしても記憶が下がるわけではない。


「やっぱりダイアモンドダストで一体を凍らせばいいのよ。そうしたら一気に涼しくなるわ」


 ティセさん。それはダメだからね。今回はイーフリートを倒しに行くんじゃないんだから。無駄な反感を買わないようにする。それが一番大事だ。


 そして、珍しく俺とティセの二人旅でもある。ペリドットさんは街から離れた設定になっている。実際は透明魔法で上空にいるのだが。そして、そのことをティセも知らない。


 というか、俺もペリドットさんが不感知魔法をかけているためかどこにいるのか把握できていないのだ。こういう俺の知らない魔法もいっぱいある。


 まあ、今の俺はジグル老に監視されている。だから出来るだけ手の内を見せないにしないといけない。その一つがペリドットさんだ。彼女の強さはこの世界から見ると規格外だ。だからこそティセと二人旅になっている。


 ティセは誘う時に何かを間違えるといつも怒る。だから、今回は早い段階でイーフリート城に交渉に行くのに付き合って欲しいと伝えた。俺も学んできたのだ。


 二人っきりでの旅だから危険もあることを伝えた。


「危険ってアデルが何かするの?」


「大丈夫。絶対に守るから。傷なんてつけさせない」


「ふ~ん、わかった。まあ、行ってあげてもいいわよ。二人っきりなら」


 という感じでティセと二人旅をすることになった。もちろんこっそりペリドットさんが着いてきていることは内緒だ。


 イーフリート城にたどり着くには道の整備も必要だ。土魔法で地面を固めつつ周囲の木を風魔法で伐採しながら歩いて行った。


広い場所をつくってクリエイトキャッスルを召喚もした。モンスターというより野犬やイノシシが出てきたので、イノシシを捕まえて食べていた。


 木を伐採しているので木の実なども手にできている。どちらかというとイーフリート城までは平和な旅そのものだった。


 イーフリート城が近づくとモンスターの数が増えた。サラマンダーやファイーエレメンタルなどが増えてきた。ティセは「私の見せ場ね」と初めはテンションがあがっていたが徐々にだれ始めている。まあ、その分俺がアイススラッシュで倒しているが。


「もう、無理。アデル後のモンスター倒しておいて」


 見えないけれどペリドットさんのプレッシャーを感じる。まぁ、これくらいの相手だと簡単に倒せるのだが、できればティセのレベルアップにつながればという思いがなかったのも嘘ではない。


 ただ、雑魚でも数が多いと大変だ。仕方が無い。


「ダイアモンドダスト」


 元々使えなかった魔法。ただ、イリーナの能力を受け継いでいるから使えるようになっている魔法だ。周囲が徐々に凍りついていく。


 同じ魔法でも使い手の魔力や使い方で効果がかわる。今回は広範囲に高出力で魔法を放った。


「どういうこと?」


 ティセが驚いている。ティセもアイスロッドがあればダイアモンドダストは使える。だが、ここまでの高出力の魔力解放をしたことがない。というか、ティセの今のレベルだとこういう結果にならないのだ。


 というか、俺も訓練の結果でここまでできるようになったのだ。今まで魔法を工夫して使うなど考えたことがなかったからだ。


 大規模、大出力の魔法と攻撃をぶっ放す。それが一番効率いいと思っていたからだ。ただ、それは「ユグドラシルシード」というチートな魔法があったからだ。


 訓練で知ったことだ。使い方次第で魔法はかわる。そういう意味では前衛より後衛の方が色んなことができないといけないのだ。


「訓練の成果だよ。訓練すればティセだって近いことはできるようになるよ」


 ティセに返事をしたが、もう少しレベルを上げないといけない。ティセが納得しない顔をしながら「わかったわよ。もう少し頑張る」と言った。


 だが、すでにイーフリート城までの道を凍りつかせたのだ。後は門を開けるだけ。赤く熱く熱せられているはずの扉も今はつめたくなっている。


 俺は扉を開けて中に入った。



 中は赤い絨毯に赤いレンガと赤で統一されており、所々牛の角が生えている戦士が描かれているタペストリーが飾られている。


 そして大きな通路がある。その先に大広間があり、イーフリートが座しているはずだ。大広間の扉をあける。


謁見室のようだ。奥に玉座があり、牛の角が生えた赤い顔、鎧を着たイーフリートが座っている。一歩中に踏み出すと一気に周囲の気温があがった感じがした。そして、恐ろしい闘気が流れてくる。


「だ、大丈夫なのかな?」


 ティセが俺のマントをつかんでいる。


「俺の後ろにいておいてくれ。そして、後ろに警戒をしてほしいんだ」


「・・・あ、当たり前じゃない。私が背後を守るんだから安心してよね」


 そう言いながらティセは震えていた。目の前にいるイーフリートは魔力の一部で作られただけだ。向こうも本気でないのがわかる。本当に戦うのならこの形態でないはずだ。


「人間風情がこの場所に何しに来た」


 俺が殺気を放っていない事で伝わったはずだ。王に謁見するように俺は片膝をついてあまたを下げた。ティセも俺を真似て膝をつく。


「まずは、この場に来るまでの間に眷族を凍らせたことお詫びいたします。実はお願いと確認に来ました。イーフリート様とお話をするように進言をしてくれましたのはクロノス様でございます」


 頭を下げながら目を閉じるとイーフリートに蹂躙された街を、人々を、父を、母を、そしてティセを思い出す。


 だが、戦う事だけがすべてじゃないことも俺は知っている。このイーフリートは倒せるが本当に対話ができるのか今まで試したことがない。


「面を上げよ」


 イーフリートがそう言った。顔を上げると人のような顔をしている。魔界で出会ったイーフリートに近い形態だ。外見だけは似ているが大きさが全然違う。人と同じサイズだ。


「それでは、お願いがございます。私はこの地より東にある『ライニコフ』という街のものです。今イーフリート様は魔素が落ちて弱られているがわかりますが、人族を襲わずに地脈からの魔素で補充をしてもらえませんか?」


 弱っていても人を襲い喰らうより地脈からでも回復は可能なはずだ。今まで弱っていても人を襲う事は少なかった。この時だけ街を襲うのだ。イーフリートが低い声でこう言ってきた。


「我が人の街を襲うことをクロノスから聞いたのか?」


 俺は指輪を突き出して見せた。


「私は『時の牢獄者』です。何度も同じときを経験しています。今まで僭越ながらこの地上からイーフリート様を滅してきました。だが、少し前にクロノス様と出会い、対話をするよう言われました。そのため今回対話をさせていただきにきました」


 そういうとイーフリートは顎に手を当て何かを考え出した。しばらく考えてからこう言いだした。


「お前らの装備は火の耐性も考えているようだ。おそらくこの地上で戦ったのであれば弱っていない時でも勝てない可能性もあるだろう。そして、盟友であるクロノスからの言であるのならば聞いてあげなくもない。だが、結論から言おう。無理だ」


 やはり対話などできる相手ではなかった。剣に手を伸ばす。その瞬間にイーフリートが掌をこちらに向けてこう言ってきた。


「無理なのには理由がある。今、この地の魔素は枯れ果てている。誰かが地脈の流れを変えたのだ。それが正されるのであれば我はこの地でひっそりとしておこう。期限は1か月。期限を超過した場合、我は人の街を襲う。だが、クロノスの顔を立て襲う街を変えよう。それが我から出せる提案だ」


 そう言われて記憶をたどる。どこかで魔素の流れがおかしいという話しを聞いたはずだ。どこだっただろう。


 転生を繰り返していると記憶があやふやになる。そうだ。ニャンクスの街ニャーニャーに行った時に言われたのだ。


 誰かが人為的に地脈の流れを変え、魔素を集めている。一体誰が。可能性があるとしたらジグル老かもしれない。


「わかりました。では、その地脈の流れを調べさせていただきます。いつから、またどこに流れているのかわかりますか?」


 だが、イーフリートは首を振るだけだった。


「わかっていれば我が直接その場に行って暴れただろう。巧妙に隠しているのがわかる。それだけではない。元々の流れを変えた後に更に手を加えた後もある。我から言えるのは二つの存在がこの地脈を変えることに関わっているということがわかるくらいだ」


 結局わからないことだらけか。まずはニャンクスの街、ニャーニャーに行って情報を集めるか。


「わかりました。では、調査を開始させていただきます」


 立ち去ろうとした時にイーフリートから光の塊がこちらに飛んできた。


「これは?」


 手に取ると光は形を変えて俺とティセの小指にまとわりついて透明な輪っかに赤い流線が入った指輪になった。


「それをつけていれば眷族から襲われることはない。それと、火竜を召喚することができる。何かの役に立てるがよい」


 こんなアイテム知らない。アイテムを調べたが、すべてのスキルが表示されていない。ということは伝説級のアイテムだ。


 使用者レベルによってスキルが変動するタイプだ。ということは、召喚できる火竜は俺が召喚した場合、レジェンド級になる可能性がある。


 それは少しの手助けどころの話しじゃない。一つの戦力だ。


「召喚した火竜はどれくらい維持できるものですか?」


 気になったので確認してしまった。イーフリートが言う。


「召喚主の魔力次第だろうな。後は慣れもあるだろう。ただ、召喚された竜が従順と思うなよ。あやつはプライドが高いからな」


 そう言ってイーフリートが笑っている。何かいい事でもあったのだろうか。わからない。


「では、朗報を待っておる。それまで我は眠りにつく」


 そう言うと一瞬で姿が消えた。目の前に残っているのは真っ赤な玉座だけだ。


「うまくいったね」


 ティセがそう言って笑ってくれた。ティセの顔を見てうつろな目をした顔を思い出した。本当にこれでよかったのだろうか。


 だが、今まで敵と思っていたイーフリートも対話をすれば分かり合えた。俺は今まで何をしていたのだろう。そして、これから何と戦えばいいのだろう。そう思うようになってしまった。


 とりあえず、考えるのは後だ。まずは地脈を調べる。


「次はどこに行くの?」


「ああ、ニャンクスの街『ニャーニャー』だ」


 行くには準備が必要だ。マタタビにカツオブシ。そして、そこにはあの時助けられなかった仲間たちが、ミーニャがいる。次は皆助けてやる。俺はそう心に誓ったのだった。



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