~タイムアタック イーフリート戦~
~タイムアタック イーフリート戦~
収穫祭を迎えるまでに何回か街の周辺のモンスター討伐にティセと行った。
二人でラーナに行ったことと、その時にゴブリンの集落を一つ潰したことがキッカケとなった。
あのゴブリンの集落は街でも気になっていて冒険者に依頼をするか悩んでいたという。
「ねえ、次は一本角の狼が畑を荒らしていたって言われたのよ。もう本当に嫌になる。私たち何だと思っているんだろうね」
そう、ティセが言っているが顔はうれしそうだ。冒険者ほどのお金はもらえていないが、それでも、小遣い稼ぎにはなっている。そして、そのお金でティセと何度かラーナに出かけたのだ。
すでにキュロープスが退治されてしまったので、騎士団は不在だが、キュロープスから鍛冶を学んだという人が何人か居て武具を制作している。魔化はうまくできていないが、流通している武具よりは少し上くらいのものを作れているみたいだ。
まあ、俺たちが身に着けているのは伝説級のものが多いので興味は持てないが。だが、ティセは違う。
一緒に食べたクレープだけでなく、チーズケーキという甘いものにも出会ったのだ。このケーキは程よい甘さなので俺も好きだ。ブルーベリーを乗せたものやレアチーズケーキなどかなり豊富なのだ。
おいしいものを食べると幸せになる。それはわかっている。けれど、あまり舌が肥えてしまうと長期の冒険で苦しむだけだ。
まあ、クリエイトキャッスルで召喚する呪いの館には食べ物をある程度保管することも可能だ。館自体が食べてしまうので保管しても減るのだが。ただ、おいしいものはおいしい。おいしいは正義だ。
「おいしいは正義だよね」
ティセもそう言っている。順調にティセのレベルも上がって今では20まで上がった。
たまにラーナにはワイバーンが出現するのだ。南の山脈のどこかに巣があるのかもしれないが、険しいところが多いので探す気が起きない。
といっても、ワイバーンを討伐したのは2回だけだ。今度はちゃんとした価格でワイバーンの皮を売った。ラーナの街の人はノリがいい。だが、そのノリに騙されたら痛い目を見る。
「あんた何言っているの。若いうちは無茶をして、失敗しなきゃいけないわよ。これも買ってしまったら何かわかるかも知れないから」
なんて、露店のおばさんに言われた。わかるのは多分「後悔」のはずだ。だが、その露店で不思議なものを見かけた。
それは竜鱗だ。しかもブラックドラゴンの。はじめは偽物だと思った。だが、手に取ると本物だということがわかった。1枚だけ。でも竜鱗は加工すれば色んなものに使える。流石に一枚だけだとアクセサリーくらいしか作れない。
そうだ、竜鱗を核にすれば身代わり人形が作れるかもしれない。即死魔法を変わりに受けてくれる人形だ。
タナトス戦の時はティセがそばにいないようにすることを考えていたが、これがあれば一回だけだが死の息吹を回避できる。
「すみません。これください」
後は、肌身は出さずティセが身に付けたくなる人形を作るだけだ。まあ、ペリドットさんに相談したら、俺とティセの人形をつくってお互いに持つと言えば速攻で持つと言われた。
ただ、そう言ってくれたペリドットさんは機嫌が悪かった。仕方が無いので俺はペリドットさんの分の人形も作ったのだ。
簡単に作っただけの人形でそれだけ喜んでくれると思っていなかった。まぁ、俺とペリドットさんの人形には核となるものは違うものを使っている。倉庫にあったから使ったのだ。こういう材料系もあると思っていなかった。
人形を渡した数日後に収穫祭がやってくる。事前にティセには話していた。
夜にイーフリートを倒しに行く。
ティセはすでにティセのおばあさんから聞いていたみたいだ。それにここ数日水晶球のロッドではなくアイスロッドを手にしている。まぁ、ダイアモンドダストの実験台にされたのはマジでやめてほしかったが。
とりあえず、今回のイーフリート戦ではエキストラスキルを使わない。ただし、アイスロッドの固定技でもり、俺とティセの二人で使用可能となる「氷結牢獄」は使用可能と言われた。
まぁ、俺一人でもアイスロッドがあれば氷結牢獄は使えるのだけれど、それだとティセのレベル上げにならない。
それと、もう一つ。戦う時に結界を張るようにと言われた。ただし、簡易なものである程度戦いがあったことはわかるようにするという結構加減が難しいことをさらっとペリドットさんに言われた。
いまいちわからないんですよね。その加減が。というわけで、そろそろイーフリートを倒すのにも飽きてきたと言ったらペリドットさんにこう言われた。
「どれだけ早くイーフリートを倒せるのか試してみてください」
これまた無茶振りです。だが、ペリドットさんの目つきがマジだ。
「わかりました。頑張ります」
今まで戦う時に時間なんて考えてことがなかった。まあ、最初の世界の時は高火力で攻撃しつづけることしか考えていなかったが。
あれ?そういえば俺勇者で前衛だったはずなのに、ここ最近後衛で魔法使いのような戦い方をしている。
これはマズイ。だが、まだ腕力が前見たいではない。それに俺が前線で戦ったらティセの出番もなくなってしまう。
いや、短期決戦ならいけるかもしれない。俺はイーフリートに対して試してみようと思った。
夜。
ティセと待ち合わせをする。それだけなのにティセは楽しそうだ。ティセの笑顔を見ていてうれしくなった。今までで一番ティセのレベルを上げることに成功したし、連携もうまくいっている。
「ねえ、今日ダイアモンドダストいっぱい使っていい?」
笑顔で言っているが、内容はかわいいものではない。なんでそんな最高の笑顔で言うんだ。
「ううん、今日は二人で出来る最高の魔法を使いたいんだ。さあ、一緒に行こう」
どこからタイムアタックかわからないので俺はティセを抱き寄せてフライで飛んだ。ペリドットさんが行っていた加速は風の精霊の加護の応用だと分かったけれどうまくできないのであきらめた。ただ、風の精霊の加護はすでに発動させている。
イーフリート城の上空に来た。何回この光景を見たことか。俺はティセの手を取り目を見てこう言った。
「前と同じように魔力を流すから受け取って」
「え?あれすごくアデルを感じるんだよね。わかった」
顔を赤らめてティセがそう言う。そうなのか?俺は送り込むほうだからわからないけれど、受け取るほうは何かを感じるらしい。
手を繋ぎ魔力を注ぐ。アイスロッドに魔力がたまるように。ティセがなんか変な声を出している。
「痛いの?」
「そうじゃない。大丈夫」
ティセの言葉を信じて俺は力いっぱい魔力を注いだ。もう、大丈夫だ。
「イメージして。四角い箱を」
魔法はイメージが大事だとイリーナは言っていた。未だに良くわからないがそのほうが効果がいいらしい。一呼吸おいて発動させた。
「氷結牢獄」
イーフリート城を包み込むように氷の箱が出現し、全てを凍らせ砕いていく。氷結牢獄が消えるとすぐに城跡にできた穴に飛び込む。
「何?何?」
ティセがびっくりしている。
「これからイーフリートを退治しに行くんだ。今のは城を潰しただけ」
穴の中に入ると炎の魔石が地面から這い出ていた。そして、ティセの手を繋ぎながら魔力を今も注いでいる。
「いい加減出てくればどうだ。イーフリートよ」
奥からすさまじい熱波がやってきた。そこに居たのはまるで岩石でできたのでは思うくらい大きな戦士だ。
その岩石は赤く燃えたぎっている。だが、岩石でないのがわかるのはその顔だ。赤い肌、赤い目をし、赤い髪をしたきれいな顔をしていたからだ。ただ、目の下から赤い線が入っている。
顔だけは魔界で見たイーフリートそっくりだ。だが、体は違う。岩石で作られた大きないびつなものだ。バランスが悪い。魔界でのイーフリートは人間とかわらない容貌だった。
だが、体が小さいから弱いというわけでない。人と変わらないから倒すのに戸惑いが産まれてしまうのだ。いびつな方が気兼ねなく戦える。
「お前か、我が居城を粉砕した馬鹿者は」
「ああ、そうだ。お前が弱っているのは知っていたからな。人を襲う前にこの地を浄化しに来てやった」
そう言ってアイスロッドを向ける。唱える魔法は決めている。そして、そのアイスロッドに闘気を込める。頭の中でイメージして、そのままを解き放つ。
「ダイアモンドダストショット」
大きな冷気の塊となったダイアモンドダストがまっすぐに突き進む。出現したサラマンダーは冷気に触れてそのまま凍りつく。だが、俺はティセの手を取りながらフライで冷気の塊の後を追いかける。すでに剣を取りだし、ティセと一緒に剣を握っている。
「ふざけるな」
イーフリートが怒りながらファイアーロックキャノンを放ってくる。それはもう想定内だ。俺は闘気を込めた剣に冷気を込める。
「大丈夫。ティセの魔力を乗せて」
そう言ってティセの魔力を剣に循環させる。その魔力が俺の中に入ってきた。その瞬間ティセの想いが頭の中に入ってくる。
これが、ティセが言っていた魔力が中に入ってくるというのは。だが、なんだか安心できる。大丈夫。絶対に成功させる。
「アイスソード・バースト・ストリーム」
アイススラッシュの乱れ打ちだ。岩石の様なロックキャンを粉砕し、しかもイーフリートも攻撃する。俺一人でも十分だけれど、ティセと一緒に剣をつかんで行えばティセにも経験値が入る。そして、もう一つの手にはアイスロッド。交互に突き出す。
「ダイアモンドダストショット」
「アイスソード・バースト・ストリーム」
しかも距離を詰めて行う。時間短縮のためだ。境界線まで近づく。ここから先は俺たちは入れないし、イーフリートも越えることができない場所。ここで唱える魔法はもう決めている。
「氷結牢獄」
もう、ティセは汗だくだ。そりゃそうだ。これだけ魔法を連続で使ったことはないはずだ。俺だってしんどい。慣れてないから限界だろう。そっとティセにマジックポーションを渡す。
イーフリートが氷結牢獄に捕らわれている間に、俺は詠唱に入る。上空に事前に作っていた網を移動させていた。
ゆっくりと網がやってきて、炎の結界の前で更なる結界を張る。イーフリートが氷結牢獄を破ったがもう遅い。
「イーフリート。お前が外に出られないように封印する。お前は魔界に帰って居ろ。だが、使い魔はくらいは出せる場所は残してやる。安心しろ」
イーフリートは魔族でもあるが、精霊神でもある。すべてを封印してしまうと火の加護が得られなくなる。
「これが狙いだったか。まあいい。その結界とて永続的ではないだろう。我は人とは時間の流れが異なる。しばし眠りにつくとしよう」
「そうしておけ。次は魔界まで行って起こしてやるからな」
俺はそう言ってティセを連れてフライで地上に戻った。地上では更に準備をしていた盛り土をし、祠を立てた。
信仰がなくなれば精霊神は魔族となる。この場所にあったのが城だったからいけないのだ。きちんと祠があり社があればイーフリートも困ることはない。人を襲うのもお供え物がないからだ。きちんと祀ればいい。そうペリドットさんに言われた。
空を見るとまだ月が明るい。前は夜明け前だった。結構な時間短縮になったはずだ。俺は外に張り巡らしていた結界をほどいた。
「月がキレイだな」
「そのセリフって遠い国だと告白に使われるらしいわよ。アデルは私のこと好きなの?」
ティセにそう言われながらアイスロッドでほっぺたをぐりぐりされた。
「まあ、大事だよ。大切にする。俺は絶対にティセのことを大切にする」
好きかと言われたらマリーの顔が頭に浮かぶ。だが、ティセはまた違う好きなのだ。うまく表現できない。
「ふ~ん、まあ、アデルとしてはまあまあかな」
なんかよくわからない評価をされた。だが、ここから先が本番だ。次は間違えない。ゴブリンロードの奥にいるジグル老子を倒す。まだ、あの時の魔法のからくりはわからないが、こっちだって準備をしている。特訓の成果をみせてやる。




