~再び特訓開始~
~再び特訓開始~
5歳になった。この年齢より前にじいちゃんに話してもはぐらかされる。そう、子供すぎるのと、力が足りな過ぎるのだ。魔法は使えるが短剣を持つとしてもできることが限られる。
だから、俺は前の世界と同じように5歳になるまでおとなしく過ごした。
「なあ、じいちゃん。俺、倉庫行きたい。あそこいっぱいキラキラがある」
子供っぽくそう言った。だが、今だから思う。俺は多分じいちゃんっ子だったんだ。俺の話しを聞いてくれるのはいつだってじいちゃんだったし、じいちゃんの武勇伝を聞くのも好きだった。
「そうか、興味があるか。なんだったらじいちゃんの武勇伝を聞かせてやろうかのう」
「わーい。楽しみだ」
実際、じいちゃんの武勇伝はためになる。戦術や魔法の選び方なんかも特にだ。今回、俺はそれを痛烈に感じた。力押しだけではだめだ。敵が同じ魔法を使えるようになる。だからこそ絶対に勝てる時以外にエキストラスキルは使ってはいけない。
また、監視されていることも想定しないといけない。だが、ユグドラシルシードだけは別だ。あれはつかわないとどうしようもなくなる。では、敵が使った場合どうするのか。それを考えないといけない。
ユグドラシルシードを破ったのは魔王だけだ。魔王は喪失をさせた。草木だからナパームボムで燃やすこともできるかもしれない。試したことはないがその価値はある。
だが、一番警戒すべきはジグル老子の時空魔法だ。時間軸を戻すというあの魔法はまずい。
太古の魔法と言われる中に時空魔法があるが、そもそも概念自体が違う。だから魔法の天才と言われたイリーナですら使えなかったのだ。
時間を動かす魔人がいないわけではない。
魔人クロノスがそうだ。ただ、クロノスは生きることを諦めている魔人でもあった。勝ったのではない。勝たしてもらったような戦いだった。だから、あの戦いは参考にならない。
ジグル老子との戦いについてじいちゃんに相談したいと思った。
そう、考えていると倉庫についた。
「おかえりなさいませ。マイマスター」
そこには、藍色のおかっぱ、白い端正な顔立ち、黒を基調した白いフリルが付いたメイド服を着た女性が出てきた。
「シズ。久しぶりだね」
だが、シズにとって未だ俺は認識されていない敵みたいだ。
「マスター敵を確認しました。これより排除いたします」
そう言うと白い剣がものすごいスピードで迫ってくる。武器はないから「オーラソード」で対応する。闘気を剣の形状にして戦う最終手段だ。
「シズ、特訓の成果を知るがいい」
オーラソードでもソードスラッシュができるようになっている。これだと攻撃をあてられそうだ。
やっぱり、じいちゃんに「待たんか」と言われながら思いっきり頭を叩かれた。気配もなく間合いを詰めてきいる。未だにじいちゃんには勝てそうにない。
「マイマスターからの攻撃を確認。排除します」
シズがじいちゃんに向かって剣を向けたが、一瞬で倒される。
「本当にお前はポンコツだな。マスターに剣を向けるとは。まあ、弱いからいいがな。おい、CZ-LT98type2657。こっちは儂の孫じゃ。もし、倉庫に入るようだったら受け入れやってくれ」
じいちゃんはシズに回復魔法をかける。よく考えると一撃でシズをあそこまで追いつけられる。その攻撃がえげつない。
「マスターからの命令確認。これより生体確認を行います」
そう言って、シズにキスされた。これは必須なんだ。
「確認終わりました。血のつながりが確認できましたので、これよりリトルマスターと呼びます」
前はマスターアデルだったけれど、今回は名乗っていないからリトルマスターなのだろうか。
「よろしくな。俺はアデル。君は?」
と言っても名前は知っているけれど、覚えられないんだ。ってか、じいちゃんはあの長い名前を覚えているのか。おかしい。シズが言う。
「私はCZ-LT98type2657と言います」
「え~と、シズ・・・」
やっぱり覚えきれない。じいちゃんが言う。
「さっきCZ-LT98type2657のことをシズと呼んでおったな。なら、アデルはシズと呼ぶがいい。
それでいいだろう。CZ-LT98type2657もそう認識するように」
「わかりました。これよりリトルマスターがシズと言った場合私の事であると認識するように努力いたします」
なんだかすごく棘を感じる。まあ、気にしたら負けだ。
「シズ、お前は倉庫の前で警護だ。そして、その周囲に結界を張れ」
じいちゃんが真剣な顔をしている。
「かしこまりました。マイマスター」
すると周囲に結界が張られていくのがわかる。というかこのレベルの結界はどうすれば張れるのだろう。少し注意してみたが、一つ目しかわからなかった。
「これは多重結界だ。この結界はおそらく私のライバルでもあるジグルでも、魔王でも勘づくことはない。アデル。お前に問う。多分、これから何回かこの質問をするはずだ。お前にとってこの世界は何回目だ?」
そう言ったじいちゃんの目は孫に向けるものではなかった。ものすごい眼力だ。
「4回目です」
「そうか、まだ4回目か。そして、儂とこの話しをするのは」
「2回目です」
そう言うとじいちゃんは笑顔になった。
「そりゃ、済まなかったな。じゃあ、ちょっと落ち着いて話すため違う階層に行くか」
下の階層。そこは訓練場でもある。だが、そこに降り立ったらペリドットさんは緑の、のっぺらぼうではなく、かわいい女性の顔をしていた。
「お待ちしていましたわ。アデル」
今回の世界では初めて会うのにそう言われてびっくりした。
「アデルや。その呪いの指輪の効果を知るがい。何があったのかをペリドットから聞くのが大事なことだ」
俺はこの指輪はについて単にこう思っていた。
1.外すことができない呪いの指輪。
2.パーティー登録をするとHP、MPがメンバーで均一になる。
3.一度パーティー登録をすると解除できない。
4.パーティーメンバーが死んだら能力を吸収する。
だが、もう一つあったのだ。
所有者よりも生き残った場合、そのものも転生する。
つまり、今目の前にいるペリドットさんは前の世界の記憶があるのだ。
「ええ、本当にアデルの戦い方がひどいのを見ていましたわ。敵に魔法を教えるかのようにエキストラスキルを使いつづけますし。本当ひどいありまさでした。最後の方はどうなったのか存じませんが、自らつかったエキストラスキルでやられたのではなくって?」
「はい、その通りです。面目ございません」
返す言葉もない。その通りだ。永久牢獄に次元断と使われた。しかもあんなに簡単に使われると思っていなかった。
「それと、ジグル老子による時空魔法で倒したゴブリンが復活しました。おかげで、ティセもミーニャも俺の目の前でゴブリンに喰われました」
思い出して吐きそうになった。おかげでゴブリンへの敵対心がかなり強くなった。絶対に一体残らず刈り取ってやる。そう話していたらじいちゃんにこう言われた。
「ジグルは時空魔法を使えんぞ。というか、いまだに解析ができていない魔法だ。魔人クロノス以外に使えたものはいない。だからそれは違うのではないか?」
そう言われて不思議に思った。時空魔法じゃないのならあの復活は何だ。一体どうやったら一気にゴブリン軍団を出現させられるんだ。
「私たち1万もの軍勢を倒していませんからどこからか転移させたのでしょうね。それより、ジグル老を先に倒しもせず、エキストラスキルを使い続けた戦い方はひどいものでしたわ。これから特訓ですからね」
口調は怒っていたがペリドットさんは楽しそうだった。まあ、特訓は地獄だったが。
何年も同じような特訓をしていたら飽きるだろうと思うかもしれない。けれど、俺は目の前で3回もティセの死を見ている。だから気合いを入れて訓練をしてきたはずだ。だが、ペリドットさんにこう言われた。
「いまいち緊張感が足りませんね。ちょっとこれは環境を変えましょう」
これが訓練をはじめてすぐあたりだったら俺も納得できたんだ。けれど今12歳。訓練をはじめて7年目だ。
結構上達もしたし、今の練習相手はペリドットさんではなく、アメジストさんだ。しかも前はまったく歯が立たなかったけれど、今はちゃんと戦いになっている。
それなのになぜという思いがある。今年の収穫祭の後にはイーフリートとの戦いもある。まだ春の種まきが終わった後だ。だが、ペリドットさんがこう言う。
「ここから南にある山脈で一つ目の巨人キュロープスが確認されたそうですわ。私は前の世界の記憶があるのでわかりますが、キュロープスが出現したことはありませんでしたの。これは探索する必要があると思いませんこと?」
ペリドットさんは楽しそうに話す。キュロープス。
一つ目の巨人は過去遭遇したことがある。かなりの強敵だ。一つ目からの光線に力強い攻撃。そして、魔法耐性もある。確か弱点は火だったはず。そう、俺が得意とする魔法だ。
「なら、試しに行きますか?」
俺はそう言ったらペリドットさんは更にこう言ってきた。
「ティセさんを誘ってくださいね。私は上空からお二人の戦いを観察していますわ。本当に楽しみ。お二人で力を合わせて退治してくださいね」
おいおい、今のティセはレベル7くらいだぞ。いくらなんでもそれは無理だろう。
「大丈夫ですわ。南の山脈までの間にゴブリンの集落もあるみたいですし。ゴブリンロードが出現したらそのゴブリンたちも傘下に入るでしょうから適当に間引いてくださいな」
ゴブリンと言われて俺は気合いが入った。だが、流石にアイスロッドは貸し出してくれないだろう。そうなるとこの倉庫にあるロッドと言えば、水晶球のロッドがある。あれは水系棟の魔法を強化してくれる。
後はキュロープスの攻撃と言えば電撃がある。まあ、とりあえず防御力があるローブでいいか。白のローブで淵が金色のローブを手に取る。これは雷撃耐性があるローブだ。後はラバーソウル。この靴は素早さも上げてくれるが電撃耐性もある。
「じゃあ、明日ティセを誘いに行くよ」
そう言って今日の特訓を終わらせてもらった。緊張感。確かに誰かを守りながら戦うという緊張はなかった。ペリドットさんが言う。
「当たり前ですが、今回の戦いで使っていい魔法に制限をかけますわよ。もちろん、エキストラスキルの使用は不可です。大丈夫です。もし、死んだとしても大丈夫なように私とパーティー登録してくださいね。そうすれば、私も今回の記憶が引き継げますから」
さらりとえげつないことを言われた。だが、ペリドットさんとパーティー登録するということはティセのHPとMPは結構高くなるし、俺のそこまで下がらない。それにイーフリートを倒した後にゴブリンロード戦、タナトス戦、そしてジグル老子にウリクルと倒さないといけない。タナトスをペリドットさんに任せたとしてもジグル老子とウリクルとの戦いがある。前哨戦にはいいのかもしれない。相手の強さはわからないけれど。
まあ、ティセにとっては埋めがたいレベル差はあるけれど、戦い慣れておくことに意味はある。はずだ。多分。
「焼け石に水かもしれませんけれど、無意味じゃないと思いますわよ。では、明日の訓練はなしということで」
ペリドットさんに心の中を見透かされているようなことを言われた。まぁ、足掻くだけ足掻く。それが勇者ってものだろう。俺はそう思っていた。
翌日。
ティセを誘うのはいいが、おそらく一日ではかえって来られない。普通に街の外に出たいと言っても出してもらえない。季節は春。種まきも終えた。これからあるとしたら水汲みか薪集めくらいだ。
強硬手段で街の外に出るか。普通に門から外には出られない。
ぱしーん。
結構いい音を立てて頭を叩かれた。
「アデル、何しているの?変なこと考えていたでしょう」
目の前にくりんとした少し釣り目とぷにっとしたほっぺたがかわいい女の子が立っていた。ティセだ。
「うん、変なことだね。ねえ、ティセ。街の外に出て見たいと思わない?」
直球で聞いてみた。街は平和だけれど、刺激がない。何か新しいことをしたいと子供なら思っている。
「思うけれど、おばあちゃんが怒るから」
そうか。おばあちゃんにキュロープスの話しをすれば連れ出せるかもしれない。難しいかもしれないがそれが一番かも知れない。
「なら、これからティセの家に行っておばあちゃんに話しをしたいんだ。ティセと街の外に行きたいって」
そう言ったらティセが真っ赤な顔をした。これ、どこかで見た記憶がある。その後むちゃくちゃ怒られた記憶が。デジャブか。これはデジャブなのか。
「わかった。ちょっとだけ時間ちょうだい。準備があるから」
そう言ってティセは走って家に帰って行った。不安は残るけれど俺はできることをしておこう。
父親は朝から忙しいのは相変わらずだ。街を良くするために色んな所に顔を出しているし、王都にも何度も出かけている。今はめずらしく街の役所に居るが、いきなり役所に行っても相手にされない。なら、母親に話すか。俺も家に戻った。
母親も家で何かをしている人ではない。父親の手助けとしてこの街の特産品にすると言って工芸品を作っている。
実際木工細工はかなりの腕前で、王都でも人気がある。ただ、マネをされるため毎回かわったデザインを考えては作っている。
できれば、そこに魔石を添えて装飾品ではなく装備品にしてほしいのだけれど、なかなか魔石も見つからない。そういえば、木工細工はここから南の山脈を越えた国では人気だと言っていた。
「なあ、母さん」
家に入って作業をしている母親に向かって声をかける。
「アデル、ご飯なら勝手に食べておいて」
家の奥を作業所にしている。すでに何名かの人で作品を作っている。髪飾りや櫛などができている。木でつくられているのにツヤがあって、高級感がある。
「ご飯はまだいいよ。というか、自分で作るし」
そう、冒険をしていれば森にあるものを食べて過ごしていた。料理はマリーとイリーナが行っていたが二人に全てを任せるのは悪いと言う事で俺と戦士のリチャードの二人でも料理を良くしていた。
調理魔法というのもイリーナが開発していたのが懐かしい。だから結構色んなものを作れるし、両親も俺の料理を喜んでくれている。
「だったら何?」
作業をしながらだからそっけない。
「あのさ、聞いたんだけれど、南の山脈に強いモンスターが出るらしいだ。ちょっと見に行ってきていいかな?」
ガタンと音がした。椅子から立ち上がって母親がこちらに来る。
「ダメに決まっているじゃない。アデルはまだ子供よ」
「でも、モンスターが居たらそのお母さんの作品は南の国に運べない。ちょっと見てくるだけだよ。それに俺だって剣も魔法も使えるし、自分の身も守れる」
村では一応強さ自慢の大会がある。昨年あたりから徐々にちゃんと戦うようにして優勝をしている。魔法に関しては誰もが認めている。
「一人で行くのは反対よ」
「ティセと行こうと思う」
俺はまっすぐ母親の顔を見た。この母親はじいちゃんのことを知った上で俺の父親と結婚をした人だ。だから父親より冒険に理解はある。
「わかった。ならティセのとこのおばあさんが認めたら行っていいわよ」
それはこれから乗り越えなきゃいけないハードルだ。といってもあの家のガーディアンだったら今の俺なら倒せる。
「わかった。じゃあ、これからティセの家に行ってくる」
すべてがうまく行っていると思っていた。ティセの家に着くまでは。
デジャブである。俺は今ティセの前で正座させられている。
「ちょっと、アデルそこに座って」
「もう、座ってます。小さくまとまってます」
こう考えが甘いというのはペリドットさんにもアメジストさんにも毎日怒られている。一体何がティセの怒りに触れたのだ。わからない。
前と同じだ。ティセの家に行ったらいつも着ない服を来て、緋色の髪飾りなんかもつけていた。「似合っているね」と言ったら喜んでくれていたのだ。
そこまではよかったんだ。んで、ティセのおばあさんに南の山脈に一つ目の巨人キュロープスが出た話しをしたあたりから雲行きがおかしかったんだ。
別にイーフリートが暴れる前のように魔素の乱れがあるわけじゃない。ただ、今迄起きなかった出来事だから調査をしたいのだ。
「まあ、ちょっと南で不穏な動きがあるのは感じていたがな。それで二人で行くと言うのか?」
ティセのレベルは7だ。普通に考えたら危険な旅だ。
「はい、一応キュロープス対策として、ティセには水晶球のロッドとこのローブと靴を考えています」
そう言ったあたりで「キュロープスどうしたんですって?」と怒り出して、そこから何を言っても怒っていて今に至る。
「ちょっと、今日のアデルはおかしかったじゃない」
「はい」
普段と違う訓練で、しかも行ったことがない南の山脈に行くことで気分が昂っていました。反省しています。
「まあ、私もちょっとは勘違いしたのはわるいけれど、だけれど、まさか初デートがキュロープスの退治なんて思わないじゃない。そんな普段着ないかっこしてきてさ」
「いえ、ティセさんのかっこも普段と違って、その似合っています」
言葉を間違えたら殺される。
「まあ、ちょっと不安はあるから試させてもらおうかしらのう」
ティセのおばあさんにそう言われた。そして、地下にある倉庫に連れて行ってもらった。
階段を降りると少し開けた場所があり、黒いゴーレムが鎮座していた。その奥に扉がある。
「アデルが勝てるわけないじゃない」
ティセがそう言う。ティセはまだ俺が強いことを認めていないのだ。いや、ティセが俺を守ると子供の時に言ったその言葉を守っているのだ。ティセのおばあさんが言う。
「じゃあ、このアイアンゴーレムと戦ってもらおうかしら。ただし魔法は禁止させてもらうわよ」
これは多分ティセに見せるためのものだ。おばあさんにはすでに実力はばれていると思う。
「まあ、アデルが勝てたらさっきのこと許してあげなくもないわ」
そうティセが言った。
「わかった。勝つよ」
アイアンゴーレムに戦う意思を伝える。目に光が入り大きく振りかぶってくる。
アイアンゴーレムは物理防御が高く、魔法耐性もある。ゴーレムと言えば「emeth」(真理)という文字を書いた羊皮紙を人形に貼り付けることで完成すると言われていて「e」を削って「meth」(死んだ)にすれば良いとされる。
それは事実だ。だが、ゴーレム作成者だってバカじゃない。そのゴーレムの上から鎧を着せればいいのだ。
それがこのアイアンゴーレムだ。だからこの装甲をやぶらないといけない。それだけだ。俺はゴーレムの攻撃をよけながら剣に力を込める。闘気を込めるのだ。混める量と放出する量を調整する。以前みたいに勢いだけで放つことはない。ためて、瞬間を狙う。一瞬の抜刀。
「剣閃」
闘気を纏ったこの一閃はそれだけで破壊力がある。しかも闘気を研ぎ澄まし、一点に集中させる。それだけでアイアンゴーレムは真っ二つになった。ゆっくり近づき「e」を削る。
「勝ったよ」
振り返ってティセを見た。
「アデルも強くなったのね」
そっぽを向いていたがもう怒っていないのがわかった。そう口元がにやけているからだ。
「じゃあ、二人して行ってきな。道中気を付けるんだぞ」
そう言ってもらえた。ああ、道中にあるゴブリンの集落も潰してくる。俺の新たなトラウマだ。八つ当たりなのはわかるが倒させてもらう。もちろん、ティセのレベルアップの踏み台だ。
俺は気が付いていなかった。この問題はそもそも過去も発生していて、誰かが解決をしていたということを。そして、それを先に行うことの問題を知ったのはもっと後のことだった。